第147話 (前編) 昆布出汁が聞いたホクホク栗ご飯!

今日は、白米の代わりに栗御飯を作ろうと思う。50合分の栗15キロを下拵えがあるから、娘全員を総動員した。


「大量の栗の下拵えをしないといけないから、2つ目以降はこのイガグリがついていない物を使うけど、これが原形なんだよ。刺さると痛いから気をつけてな。ラリサ、こっちには、こんな感じの木に実る果物あるの?」


もし、この世界にも栗みたいな果物があるなら食べてみたいと思う拓哉。


「集落にいた時は見たことありません。こんな痛そうなのがあったら武器にしてたと思います」


果物を武器にしたらだめだよと言いたいけど、知らなかったら狩りをする時に使うかもなと思う拓哉だった。


「ないのか。合ったら食べてみたかったよ。ってごめんごめん本題を忘れていた。この登山靴を履いてイガグリを剥いて中の実を取るやり方を教えるから、みんな靴を履いて」


「履いたの」「履きました」「履いたんだよ」一人一人が、靴を履いたことを知らせてくる。


「左右のつま先で、栗を挟んで上からグイっと力を入れたら...ほら、中から実が出てきた。これを、下準備と下拵えをして食べるからね」


みんなも実践して栗の実を出している。別に楽しくもないことだけど、子供達にちゃんとどういう物かと元々はこういう物だと教えたい拓哉だ。


「じゃあ、料理を始めようか。まずは、米を洗って30分水に浸しておく。これをすることで、ふっくらモチモチしたご飯になるんだよ。その間に、鍋に水を入れて沸騰させ、沸騰したお湯に栗を入れて弱火で5分。それから、火を止めて蓋をして15分間置く。ここまでやろうか」


「は〜い」「わかったの」「了解だよ」それぞれが、返事をする。

ラリサが、麻袋に入った大量の栗を持ち上げようとするが3袋あるので手伝いを求める。


「アニカ、袋持つの手伝って〜」


桜花と拓哉で大量の米を洗う。アニカが、米を研いだら粉砕しそうな気がしたからだ。


「うん。わかったの。これを運んで鍋で茹でるの。覚えたの」


15キロ分の栗を茹でるのと米も50合あるから全員が大変だ。ちなみに1合なら栗は300グラムくらいでOKだ。


「鍋が全然足らないから数回に分けないといけないね。アニカ、一旦止めて今ある分の下準備をしよ」


「わかったの」


コンロ6つが全て埋まってしまい、営業時間も作りながら、注文の料理も作る必要があるかもと思う拓哉。


「桜花、ボウルがなくなったから白米も一旦ここでおしまいだ。あとは、営業中に随時やっていく感じにしよう」


その後、白米と栗の準備が終わり、やっと栗を剥く作業に入るの。


「よし、茹でた栗をまな板に置いて、端の方の下側を薄めに切って、そのままツルンと鬼皮を剥いて、次に渋皮を剥く。この作業をみんなでやろう」


みんなで、1つ1つ作業をしていく。思いの外、時間がかかり3時間くらい剥き作業をしている。そろそろ炊き始めないと間に合わなくなるので、一旦やめてご飯を炊き始める。


「よし、やめてご飯を炊こう」


「ふぁ〜やっと終わりました。手が痛いです」


「アニカも疲れたの。眠たいの」


「僕も流石に、集中したから目が疲れたんだよ」


娘達みんなが、慣れない作業で疲れたようだ。流石に3時間皮剥きは、申し訳なかったと思う拓哉。


「あとは、炊くだけだから開店時間までみんな寝てていいよ。ごめんな。思いの外、時間がかかってしまったよ」


「ふわぁ〜お言葉に甘えて寝てきますね」


「アニカも、寝てくるの」


「僕も、久々に疲れたから昼寝してくるんだよ」


桜花も、珍しく疲れたようで、寝に行くようだ。


「みんなおやすみ。あとは、任せてね。今日の賄いで食べられるようにしておくから」


「おやすみなさいです」「おやすみなの」「おやすみだよ」


みんなが、おやすみと言うと2階に上がっていき、昼寝をしに行った。


その後、炊飯器に米ともち米と塩と酒と水と昆布と栗を入れて炊き始める。あとは、炊けるのを待つだけだ。その間に、残りの栗を剥いたり、残りの作業を終わらせる。


「これだけあれば足りそうだけど、あの竜と龍コンビがどこまで食べるのかがわからないからな。これ以上は、手が痛くて作る気になれないから別の料理を提供しよう」


栗を剥きすぎて指を痛める拓哉。だが、開店は待ってくれない。そろそろ開店時間となり、娘たちが起きてくる。


「パパ、おはようなの...ムニャムニャ」


「おはようございます〜フワァー」


「僕は、完全復活だよ。おはよなんだよ」


アニカとラリサは、まだ眠いようだ。桜花は、流石の回復力である。

アニカとラリサには、顔を洗うように言って目を覚ましてもらう。

そして、開店時間を迎えたのだ。


「いらっしゃいませ。今日は、ライスを更に美味しくしたライスを用意しています。よかったら栗ご飯と言って注文してください」


そう言うと、あちこちから栗ご飯の注文が入る。開店と同時に栗ご飯フィーバーが起こり、4人共がてんやわんやとなる。


「栗ご飯どんどん用意していくから、アニカ提供頼む。ラリサは、飲み物の提供をお願い」


拓哉が、指示を出しながら提供を進める。厨房でも拓哉と桜花が別の注文を作ったり栗ご飯を用意したりと大変な状況だ。


「栗ご飯お待たせなの」


やはり、ヴァレリーが1番である。ヴィクトリアは、牡蠣事件以来、王城で食事をしているらしい。ちょっとしたトラウマだろうか。


「これが、栗なるものか...ほぅ、甘みが有ってホクホクしてうまいな。それに、ライスにもしっかり旨味が染みていてうまい」


サリアとリーリヤも、今日はヴァレリーと食べていた。


「栗初めて食べたけど、噛んだらホロホロ崩れておいしいわ。それに、出汁の聞いたライスと一緒に食べると絶品だわ」


「本当においしいです。優しい味がします。ライスのかすかな塩辛さとホクホクした栗の甘さと相まっておいしいです。ライスもふっくらモチモチでもっと食べたくなりますね」


最近、サリアはリーリヤとよくお店に来ている。なんでも、2代目が成長して休みを少し取れるようになったかららしい。


そして、そのサリアは、拓哉に何か伝えることがあるらしい。いったいなんなのだろうか?

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