第146話 焼きそばの日!ご当地焼きそばを食いまくれ!

焼きそばの日というのを勝手に作った。もちろん頼めるのは焼きそばだけである。なんとわがままな店主だろうと思うかもしれないが、自由な村のお店ならではである。

開店時間を迎えてお客さんが入ってくる。


「今日は、焼きそばの日だから焼きそばしか作りません。お酒は自由ですからね」


拓哉が、横暴なことを言っても誰も文句は言わない。何故ならここ以上にうまい料理屋はないからだ。

こういう時に、1番最初に頼むのはヴァレリーだ。


「このヒタ?の焼きそばとビールを頼めるか?」


今日は、ご当地の焼きそばを用意しているのだ。


「はーい。ヒタとビール畏まりました」


ラリサとアニカには、地名で注文を取ってくれたらいいと伝えてある。


ヒタはモヤシが大量に入ったシャキシャキが売りである。


だが、その地域の人全員がそれを食べているわけではないということを先に伝えておこう。


バルトと小次郎はいつもと同じように、一緒に座ってビールを頼んでいる。多分、気が済んだら焼きそばの注文が入るのだろう。


アレン一家が、どれにしようか悩んでいる。


「僕は、フジノミヤの焼きそばにする」


「俺は、コウベの焼きそばにしようかな」


「私は、サクラエビの焼きそばにしようっと」


選び終わり、アレンが代表して注文する。


「アニカ、フジノミヤとコウベとサクラエビをください」


初めて頼む料理なので、自分の好きそうな物が入っている焼きそばを頼んでいるようだ。


「はーいなの。桜花お姉ちゃん、フジノミヤとコウベとサクラエビお願いなの」


そういうと奥から「わかったんだよ」と返事が返ってくる。

その後も、こんな感じで注文が入り、まずはヒタの焼きそばができたようだ。


「ヒタの焼きそばとビールお待たせなの」


ソースのいい香りが湯気と共に鼻孔まで届けて早く食べたいという欲求が押し寄せる。


「生卵が上に乗っているのか。まずは、麺とモヤシを食べよう。ん?麺がパリパリしていてモヤシのシャキシャキとよく合っておる。ちょっと濃いめのソースもうまいな。おぉぉ!卵と食べるとまろやかで、また別の物を食べているみたいだ。とにかくうまい。くぅ〜それと濃いめのソースがビールと合うな」


強火で炒めているので、カリカリした麺になり大量のシャキシャキモヤシと脂の乗ったオーク肉と生卵で絶品の焼きそばになっている。


ヴァレリーは、ビールを何杯もお代わりして焼きそばを楽しんでいるようだ。


次は、アレン一家の焼きそばが出来たみたいだ。桜花が、平然と3人前を作っている。


「フジノミヤとコウベとサクラエビお待たせ致しました」


「わぁ〜おいしそうです。凄くモチモチしていて麺にお肉の脂の甘さを感じます。柔らかいお肉もおいしいです。それと、上にかかっている香辛料かな?不思議な味がするけど麺に凄く合ってます」


お肉のラードを入れて炒めているので脂の味がするのだろう。そして、生麺だからこそモチモチのおいしい麺を味わえる。上には鰹節の代わりにいわし粉がかかっている。


「これは、濃そうだね。えっ?確かに濃いけど、甘辛く煮込まれたお肉と濃いソースが合う。それに、このクニクニした(こんにゃく)は不思議な食感だけど噛むと甘いタレの味がしておいしい。このお肉もトロトロで麺と食べたら絶品だよ」


牛すじとこんにゃくを甘辛く似たぼっかけというソースを麺に絡めた絶品な焼きそばだ。牛すじも柔らかく他の部位では味わえない味や甘さを感じることができる焼きそばである。


「うわぁ。思ったよりサクラエビが入っているわ。甘みのあるサクラエビがおいしい。それに、シャキシャキしたキャベツもおいしいし、見た目は薄味に見えるけどしっかりした味がついてて、でも重たくないからどんどん食べられそうだわ」


キャベツと桜えびだけのシンプルな焼きそばだが、いわし削り節の風味と出汁をかけたような味わいが特徴の焼きそばである。とにかくうまいのだ。


アレンもカイルもモニカも、それぞれの焼きそばを楽しみながら、半分食べた辺りで交換して色んな味を楽しんでいるようだ。


バルトと小次郎も注文した焼きそばが届いたみたいである。


「コマツの塩焼きそばとキタミの塩焼きそばお待たせしました」


全然見た目の違う塩焼きそばを頼んだバルトと小次郎。


「これは、豪勢じゃな。海老にホタテに玉ねぎか。うまいのぅ〜海老はプリプリホタテも一切パサツキもなく旨味と水分が溢れ出てうまいわい。塩味の麺がよく合うんじゃ。麺も噛めば噛むほど小麦の甘さが出るのぅ。それに、玉ねぎも甘いわい。ほほ〜酒も進むのぅ」


オホーツクで取れたホタテと玉ねぎをメインに、小麦もその県で取れた小麦を使っているので、小麦の味を楽しめる麺になっている。


バルトは、いつも通り酒を呑みながら海鮮塩焼きそばを楽しみながら小次郎にも勧めているようだ。


「俺のは、野菜が大量に入った塩焼きそばのようだな。この太麺のモチモチ感と野菜のシャキシャキした感じがいい。もっとあっさりかと思いきや腹にドンと来て満足度が凄い。とにかくうまいな。それに、最後まで味わって食べられるように塩味でこってりさがないのもいい」


中国のチャーメンからヒントを貰い作った焼きそばだ。地元の野菜を使って新鮮さを味わえるのが魅力の焼きそばであり、塩焼きそばならではの素材のうまさも味わえる焼きそばである。


小次郎もバルトと交換して、系統の違う塩焼きそばを楽しんでいる。

他の住人も同じように、色んな焼きそばを味わったり交換して楽しんだりしているみたいで、意外にも好評だと感じ、次に何かご当地ものをする時は、更に種類を増やして楽しんでもらおうと思う拓哉だった。

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