第145話 オルトロスが仲間になる!骨付きモモ肉の山賊焼き!
拓哉が、昼飯を作っていた。今日は、骨付きモモ肉の山賊焼きをワイバーンのモモ肉で作っている。大きなモモ肉を手で持ってかぶり付ける醍醐味を楽しめる料理だ。そして、オーブンから出てきたのは、照りがいい具合についたワイバーンモモ肉である。モモ肉を皿に移しているとラリサが開拓組の帰宅を知らせに来る。ちなみに、誰も開拓地にいない時は、ボーンとマリーが開発した8時間だけ結界を張れる簡易防御結界の魔道具を展開しているのだ。
「お父さん、みんな帰ってきたけど、アニカが頭2つある魔物に乗って帰ってきたんです。飼うのとか言ってるんですよ。大丈夫かな?」
拓哉は、えっ!?と思ったが、竜2匹にフェンがいるから大丈夫かなと安心はしている。それにしても、またアニカは奇想天外なことをするなと思う拓哉。
「フェンもいるし、大丈夫だと思うけど、モモ肉をアイテムボックスに入れたら行こうか」
拓哉は、アイテムボックスにモモ肉を入れてアニカの元へ向かう。
アニカのいる所に向かうと人集りができており、アカツキが大はしゃぎしていた。
「アニカお姉ちゃま凄いでしゅ。カッコイイ魔物でしゅね。魔物しゃん、魔物しゃん、触っていいでしゅか?」
アカツキが、オルトロスを触ろうとしたが、オルトロスはアカツキの手に咬み付く。
だが、アカツキは平然とした表情で言う。
「痛いでしゅ。噛んだらメでしょ。お仕置きでしゅ」
鋭い牙で噛まれたにも関わらず、痛いだけで済ませてグーパンチでオルトロスを殴り飛ばす。
「え?グヘッ」
また殴り飛ばされる偉そうな方のオルトロス。オルトロスは、地面を5回程バウンドしてぐったりする。
カイルが、アカツキの心配をする。
「アカツキくん、手は大丈夫?」
アカツキは、手をカイルに見せて大丈夫アピールをする。
「大丈夫でしゅ。痛かったくらいでしゅから、カイルお兄ちゃま心配しなくて平気でしゅよ」
「あはは...フェンリルって凄いんだね」
呆れたように笑うカイルだった。
「ねぇ!オルトロス、うちのかわいい息子を咬むとは覚悟できてるよね?」
ぐったりしているオルトロスの首を掴んで脅すフェン。オルトロスは、ワナワナワナしながらなんてことをしてしまったんだと後悔するがもう遅い。フェンに往復ビンタを食らわされて顔をパンパンに腫らすのであった。
しばらくぐったりしていたが、復活したオルトロスは顔を腫らしながら、アカツキの前に行き平伏する。
「フェンリル様の、ご子息様とは知らず失礼しましたぁぁぁ」
辺りに響き渡る大きさで謝る偉そうな方のオルトロス。
「僕は大丈夫でしゅが、いきなり咬んだり攻撃したらメでしゅ。次誰かにしたらもっと痛いお仕置きをしましゅからね。いいでしゅね?」
「アニキが、申し訳ございませんでした」
「はひ〜!誰も攻撃しませ〜ん」
小さなアカツキが、獰猛な魔物を平伏させてお説教をしている変な構図が生まれている。
アニカが、拓哉に気づいて駆け寄る。
「パパ〜オルトロスを飼いたいの」
抱っこをねだるアニカを抱きかかえてる拓哉。それを見ていたオルトロスが呟く。
「アニキ、アニカ様のお父様みたいだよ。絶対攻撃したらダメだからね」
「わかっている。俺様は、そこまでバカじゃない」
気弱そうなオルトロスは、十分馬鹿だよなと思うのだった。そこに、フェンがやってくる。
「アニカの父親は、僕とそこにいる竜よりも強いから喧嘩売ったら死ぬからね」
それを聞いたオルトロスは、恐怖で全身を震わせて、なんて所に来てしまったのだと後悔するのだった。そう思っていると、アニカを抱っこした拓哉が近づいてくる。
「君たちが、オルトロスだね。さっき、アカツキを咬んでいたけど、攻撃する意思があるならわかってるね?もし、大人しくするならエサも上げるし住む場所も用意するけどどうする?」
アニカが、飼いたいと初めておねだりした物を無下には出来ない拓哉は、どうしたいかオルトロスに聞く。
「はい!攻撃しません咬みません。言うことを聞きます」
「俺様も聞く。変なことはしない...ません」
そうかと言いながらオルトロスを撫でる拓哉だったが、オルトロスのあまりの汚さに顔を顰める。
「アニカ、こいつを綺麗に洗うぞ。ブラシ出すから一緒にブラシングして」
「わかったの」
オルトロスは、洗われるの?となるが、逆らう意志はない。拓哉は、犬用シャンプーとブラシを用意する。
その後、ブラシをされるオルトロスは、蕩けた顔をしてあまりの気持ちよさにあくびをする。汚い毛や毛玉がどんどんと溜まっていき、次は、シャンプーをするが、一度では泡が立たず3回目くらいでやって泡が立つ。
「アニキ〜もうここで暮らそうよ〜気持ちよくて寝ちゃいそう」
「俺様は俺様は...あはぁ〜んもうダメだ。こんなことをされたら離れらねぇよ」
シャンプーが終わってフェンの風魔法で乾かされて綺麗な漆黒の毛がふわふわになる。
「おっ!洗えばかっこよくなるもんだな。なぁ〜アニカ」
「パパ〜ふわふわのサラサラなの。オル、ロス、カッコイイの」
アニカは勝手に名前を付けたようだ。
オルトロスのトを抜いただけの単純な名前...拓哉の単純さとどこか似たような匂いがする。
「アニカ様、お父様、ありがとうございます。こんな綺麗になったの初めてです」
「やっと俺様らしくカッコよくなったな...アニカ様、お父様、感謝の極みっす」
なんかユニークな魔物だなと思う拓哉だった。そして、昼飯もまだだったので、食事をしようと提案する?
「オルとロスだったかな?アニカが付けた名前ならそれでいいよ。それより、みんな食事をしよう。ワイバーンの骨付きモモ肉の山賊焼きだぞ。ライスとパン自由に選んでくれ。オルとトスも食べていいからな」
アニカがすぐにモモ肉にかぶり付く。
「おいしいの〜凄く柔らかいの〜甘辛のタレがおいしいの。オルもロスも食べるの」
そう言われて、オルトロスはクンクン匂いを嗅いでからカブっと口に入れる。
「おいしいよ〜皮がパリパリでジューシーで生で食べるのと全然違う。ここは天国なのかなぁ?」
「うめぇうめぇ〜よ〜。アニカ様のお父様は料理がうまいんすね。こんなうまい肉食ったことないっす」
「パパは、なんでも世界一なの」
オルトロスは、次から次からどんどん食べる。よほどうまかったのだろう。アニカは、その横で拓哉の自慢をする。
「ぱぱ、おいしいでしゅ。でもグラおじちゃまみたいに骨は食べられないでしゅ」
「絶対、グラおじちゃまの真似はしたらいけないよ。行儀が悪いし、変な大人になっちゃうからね」
絶対あんな野蛮で変な子にはしたくないと是が非でも止めるフェン。
それを見ていた拓哉は、より一層賑やかになりそうだなと微笑むのであった。
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