第134話 キムチ作り! シャーリーと拓哉の共同作業
拓哉は、珍しく本を読んでいた。 自家製キムチ作りの本だ。 自分が知るキムチ以外にないかなと漁っている。 しかし、似たりよったりで、ヒントになるような物は一切ない。
「キムチキムチキムチキムチ...話しながらキムチばかり紙に書いているとゲシュタルト崩壊が起こるな」
そう言いながら俺は何をバカなことをやっているのだろうと思うのだった。
ちなみに、子供達はボーン教室に出かけていていない。
「茂三さん...茂三さん...?そういえば全て現地調達だったよな。 その前に、なんでヴァレリーさんとサリアさんの存在を忘れていたんだ。 あの二人なら知ってるはずなのに」
ヴァレリーとサリアは、茂三のところに通っていた常連である為、キムチを知っている可能性がある。 だが、拓哉は失念していたのか?そのことに全く気づかなかった。
「とりあえず、畑で採れた食材と足りないものはネットショッピングで購入して作ってみるか。 時間を操作してもらうのに、シャーリーを呼びにいかないと」
そういうことで、畑にやってきた拓哉。
「あ!使徒様、畑に来られるの珍しいですね。 どうしたのですか?」
拓哉に気づいたシャーリーが嬉しそうに話しかけてくる。 どうやらビーチェはおらずシャーリーだけのようだ。
「シャーリーに手伝ってほしいことがあって今からいけるかな? それより、珍しくビーチェと一緒じゃないんだね?」
「子供達の授業で水魔法を使うからと助手に来てほしいとボーンさんが昼食後に来ましてビーチェは授業中ですね。 私は、暇ですので構いませんよ。 お手伝いします」
そうか、ビーチェは水魔法得意だもんな。 この村の子供達って最高の環境で授業できてるよな。 どこに出しても恥ずかしくないだろう。
「じゃあ店に行こうか? キムチって食べ物の仕込みでシャーリーの時空魔法が必要なんだ」
そのまま話しながら店まで行く。
厨房で畑から貰ってきた白菜を洗って4等分に切る拓哉。 それを塩水に浸す。
「シャーリー、これを2時間半進めてほしい」
ここの住人には時計を与えて時間という概念を教えた拓哉。 みんな便利と言って使ってくれている。 あと、夏場の白菜の塩漬けは5時間くらいでいいのだが、満遍なく漬け込む為に、2時間半で裏返してまた2時間半待つのだ。
「はい。 いきますよ〜ってもう終わったんですけどね。テヘッ」
舌を出して可愛らしく首をコテンと傾けるシャーリー。 相変わらず凄まじい発動速度である。
拓哉は、白菜を裏返す。
「よし。 また2時間半進めてくれ」
「は〜い」と言ってまたすぐ発動する。
「いや〜本当にシャーリーの魔法は助かるな。 こんなことに魔法を使わせて申し訳ないんだけどね」
ザクザクと芯と葉を切り分けながら話す拓哉。 ちゃんと浸かっているか芯の部分を味見する。 シャーリーも欲しそうな顔をしていたので渡すと塩辛そうな顔をする。
「少し塩辛いですね。 貰わなきゃよかったです。 えっと、魔法は気にしないでください。 だって、1番においしい料理を味見できるんですから」
味見できるからと貴重な魔法を惜しげもなく使う現金なシャーリーであった。
「今回も先に試食させてあげるから大丈夫。 でも辛い食べ物だからシャーリーには合わないかもな。 あ!ごめん、これも3時間進めてくれ」
切った白菜をザルに移す。 水切り作業だ。
「は〜い。 終わりましたよ。 辛くても使徒様の料理ならおいしいはずです」
どこからくる根拠かわからないが、全ての料理がうまいと思われているようだ。
次に、適当なサイズに切った皮付きりんごと皮を剥いたにんにくとスライスした生姜をフードプロセッサーでペースト状にする。
青ねぎを薄く輪切りにしてからニラを2cmくらいに切ってからペースト状にしたのと混ぜて粉末状の唐辛子を加えてから手袋をして混ぜる。
「うぅ〜凄い鼻がヒリヒリします。 これは食べられる物なのですか?」
唐辛子の量に驚くシャーリー。 確かにこれだけ見たら罰ゲームだよなと思う拓哉。
「これにさっきの白菜を加えて馴染ませると辛いけどおいしいキムチって食べ物ができるんだ。 酒にも合うし米にも合うぞ。 それから、チヂミだったりいろんな料理にも使える」
まだ信用できないシャーリーは、「へぇ~」と言いながら本当かなと疑う。
古い何も入っていない冷蔵庫にキムチの入ったジップロックを入れる。
「シャーリー、3日間時間を進めてほしい」
作りたてを食べてもおいしいのだが、冷蔵保存を3日したキムチの方がおいしくなるのだ。
「はい。任せてください...終わりましたよ」
またあっという間に時間を進めるシャーリー。 もしこれが戦闘で人に向けられたら脅威でしかないなと思う拓哉。
「おぉ! うまそうだ。 シャーリー試食してみよう」
小皿に出来上がったばかりのキムチを乗せる。 先程までの刺激臭はなく、キムチ本来の匂いがしている。
シャーリーと拓哉は同時に口に入れる。
「うまい...自家製を初めて作ったけど、市販よりシャキシャキしていて野菜自体がうまいな。 しかも、しっかり漬け込まれているし予想よりうまくいったな。 シャーリーは、どうだ?」
「はい! おいしいです。 塩辛くてただ辛いだけと思っていましたが、使徒様の言う通り野菜のシャキシャキ感もあるのと野菜の甘みもあって辛いけどおいしいです。 何故でしょうか?手が止まりません。 もう少しもらえませんか?」
拓哉は、小皿に追加を出してアイテムボックスからご飯を出す。
「ライスと一緒に食べてみ」
そう言われたシャーリーは、キムチとライスを同時に食べる。
「えっ!? 辛さと白菜の甘みがライスとよく合っておいしいです。 あれ?全然辛くないですし、不思議な味?旨味?だけを感じるようになってきました。 私は、断然ライスとキムチ派ですね。 私だけが独占している優越感もいいですね。 まだ誰も食べていませんよね?」
あれ?シャーリーって優越感に浸る性格だったかな? まぁ日頃、畑を頑張っているご褒美だな。 ビーチェには、申し訳ないけどと思う拓哉だった。
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