第133話 給食とボーン先生と子供達!
ボーンが村に移住してきてから、最初はカイルだけを教えていたのだが、アレンから教室を開いたらどうかと言われて、今ではカイル ヤミン ヤナ 桜花 ラリサ アニカが習いに行っている。
ボーンは、どの教養にも長けており先生としては申し分ない方だ。
「今日は、わざわざ外に出たのは、みんなの得意な魔法か得意なスキルを見てアドバイスをしたいなと思ったからです」
堅苦しい教養を深めるのも大事なことだが、こうやって仲良く遊びながら学ぶことも大事だと考えているボーン。
「先生、僕から見てください」
最初に言ったのはカイルだった。 唯一の人間で負けるのはわかっているけど、だからといって臆するのは違うと考えるカイル。 これも、ボーンから教わったことで人間もちゃんとした人に学べば異種族をも超えられる可能性があると教わったからだ。
「ではカイルくん、的に目掛けて放ってください」
ボーンが、特別に作った人型の的で滅多なことでは潰れることはないし、なんと威力測定もできる優れものである。 ちなみに周りに影響がないようにボーンが防御結界を張っている。
「いきます。サンダートルネード」
カイルは、10歳にして雷と風の2属性を合わせたオリジナル魔法を放ったのだ。
人型の的に誘導されるように稲妻を帯びた竜巻が襲いかかる。 ガガガガバリバリズガガガっと凄い音を響かせながら人型の的を呑み込む。
暫くして竜巻が収まると、カイルは魔力を使い切ったのか息絶え絶えになっている。
「ハァハァハァハァハァハァ先生どうでしたか?」
「その前に、このポーションを飲んでください。それと周りを見てご覧なさい」
渡されたポーションをグビッと飲んでから周りを見渡すとみんなが「ワァ〜」と声援を上げて近づいてくる。 ヤナに至っては両脇を抱えてぐるぐると回す。
「カイル、よくやったな。 兄として誇らしいぞ。 いつの間にあんな凄い魔法が使えるようになったんだ?」
兄としてこれでもかと喜ぶヤナ。
「カイルくん凄いです。 私は、聖魔法しか使えませんから、こんな迫力と威力のある魔法が羨ましいです」
やっとヤナに降ろしてもらったと思ったら、次はラリサがカイルの手を取りブンブン振り回して褒める。
「カイルンすんごい魔法だったよぉぉ。 僕も、カイルンに負けないように頑張るからね」
ヤミンが腕に抱きついて褒める。 カイルからしたらヤミンは男だけど、見た目が美少女だから恥ずかしいと思って顔を赤くする。
「アニカも驚いたの。 ズババババって凄い音がして凄い威力だったの。 カイルお兄ちゃん、今度勝負しようなの?」
戦闘狂アニカに目をつけられたカイル。 もし戦ったら防御魔法のないカイルはあの世行きだろう。
「僕から見てもカイルは凄いと思うんだよ。 きっと将来凄い魔法使いになれるんだよ」
神獣の桜花から見ても将来楽しみな存在のようだ。
「みんな...ありがとうございます...人間の貴族なんかよりみんなと一緒に学べてよかったよ」
涙を流しながら話すカイル。殺伐とした貴族より優しいみんなと一緒でよかったと思うのだった。
「カイルくん、威力は申し分ないですね。 成人した人間でもあの威力を出せない人は多いですから。 でも、魔力量が少ないです。 これから、魔力量を増やす訓練をしましょう」
見ていたら誰でもわかりそうな指摘をするボーンだが、それ程に落ち度が少なかったのだ。
「はい!ボーン先生! これからもよろしくお願いします」
「お〜い!給食の時間だぞ〜。手を洗って議会所に戻っておいで」
拓哉がみんなを呼ぶ。 この教室が開催される時は、大人たちが配膳係をして子供達が並んで受け取る給食形式だ。 ちゃんとトレイと箸とデザートと米orパンと小おかずと大おかずがある。
みんなが「給食だぁぁ」と言って走っていく。
議会所では、マリーとシャーリーとビーチェがそれぞれの配膳位置について子供達に配っている。
「いっぱい食べてね〜」
「今日は、みんな大好きなカレーだよ〜」
「は〜い!」
子供達は、この給食の時が1番ワイワイしているように感じる。
「ラリサお姉ちゃん、カレーおいしいの」
「そうだね。 給食のカレーといつものカレー違うよね。 両方おいしいけどさ」
ラリサとアニカは、姉妹仲良く給食を楽しんでいる。
「カイル、口にライスがついているぞ。 取ってやるからじっとしてろよ」
「んっ。 ありがとうございます。お兄様」
こちらは、相変わらずの過保護っぷりである。
「桜花ちゃん、このおいしいカレーとババロア作れる? 作れるなら僕に作ってよ」
「う〜ん? 普通と何が違うか研究してからかな?ババロアならすぐ作れると思う。 その代わり僕に合う服を作ってくれるならいいんだよ」
ヤミンと桜花は、意外に仲がいいのだ。 ヤミンと畑でよく会話するからだろう。
「拓哉さん、おいしいですね。 先生というだけで一緒においしい給食が食べられて得した気分です」
「前世の学校では1クラス20人から30人くらいで先生が一人で教えて、昼もこんな感じで一緒に食べるんですよ」
前世の学校の話をすると同じ教える立場のボーンからするとかなり興味があったみたいで食いついてくる。
「実に興味深いですね。こちらの世界とはあまり大差はないですが、こうやって用意された物をみんなで食べることはないですからね」
「こっちには、貴族がいますから平民と同じ物や安い物なんか食えるかってなるんでしょうね。 前世には貴族制度がなかったですから」
「貴族制度がなく回る世界とは興味深いです。 また今度話を聞かせてくださいね。 それから、この給食で午後からの授業も全員頑張れると思いますよ」
この教室の影響で子供達がどのように成長していくのか大人全員が楽しみにしているのだ。 いつか、子供がいっぱい増えてより賑やかになるかもしれないなと思う拓哉だった。
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