第132話 冷やしみたらし団子と威風龍!

5日目

1日目から4日目まで、ずっと飛んでご飯を食べてドゥルシッラが水遊びしてを繰り返していた。

なにも変わることのない旅だった。 しかし今、目の前に大きく広がる大陸が見えてきたのだ。


「古龍様〜やっと見えてきました。 ずっと、海と島だけで一生辿り着かないかと思いました」


「おぉ〜凄いです。 ドゥルシッラの言う通り少しこの旅に飽きが来ていましたよ」


ドゥルシッラもテオフィロも、料理は満足していたのだが、ひたすら同じ景色に飽き飽きしていたのだ。 


「俺も同じだ。 もしかして、大陸が消えたのかと少し不安ではあったな。 おっ!あの1番高い建物が宮殿だ」


まだ離れてはいるが、龍の目は集中すると、かなりの距離まで見えるようになる。 見えたのは中国にある宮殿のようであった。


「あまり見ない作りの建物ですね。 あれを宮殿と呼ぶのですね」


「俺も初めてみますよ。 それより、威風龍様は、この距離を移動してわざわざ団子を食べに行かれるとは、相当おいしいのでしょうね」


竜達が住む大陸では見かけない様式の建物に驚くドゥルシッラとわざわざ5日の距離を移動してまで食べに行く団子が気になるテオフィロ。 

そんなことを話していると、向こうから10体の龍が飛んでくる。 竜クラスの大きさで30mくらいだろうか? その中の黒い1体の竜が話しかけてくる。


「高貴な方とお見受けする。 私は、警備隊長を務めているソフーデという。ここへは、何用で参ったか説明願えないだろうか?」


グラデュースの強大な力に威風龍に近いかそれより上の存在だと感じる黒い竜。


「俺は、古龍のグラデュース。 威風龍に用があってきた。 取り次いではもらえないか?」


古龍と聞きどよめきが起こる。 強さがヒシヒシと伝わってくるので嘘ではないと確信する竜達。


「古龍様で在られましたか...先程の失礼な物言い大変申し訳ございません。 暫しこのままお待ちくだされ。 すぐに、威風龍様にお伝えしてきますゆえ」


そう言うと警備隊長のソフーデが宮殿へと飛んで行く。 だが、ものの数分でソフーデが飛んで帰ってくる。


「威風龍様が、すぐにお会いするとのことでございます。 古龍様、ついてきてくだされ」


その指示に従って飛んでいく古龍達。 古龍のあまりの大きさに街にいる人々が見上げる。 そして、何故か歓声が上がる。 威風龍のおかげで、ここの人々は龍に抵抗がないのだろう。 


「こちらに降りてくだされ」


指定された着陸場は、広い荒野になっており古龍の大きさでも十分降りられる場所であった。 本当に、大陸が違えばここまで龍に対する考え方が違うのかと思う3人。 

それから、人化をして宮殿に向かう。


「これだけ大きな場所と人間に歓迎されるような場所ならお互いを尊重しながら住んでいけそうですね」


ここが特別なだけで、人間からすると普通は恐怖の対象になってしまい絶対相容れない間柄である。 だが、竜にも色々な性格がいるのになと思うテオフィロ。


「俺達の住む場所じゃあり得ない光景だな。 まぁ拓哉のとこが、ここに近い状態ではあるがな」


グラデュースは、龍だけではなく異種族が共に生活をするあの村を思い出しながら話すのだった。


そんな話をしていると宮殿に辿り着く。 宮殿の外にも中にも大勢の人達が整列し頭を下げて出迎えてくれている。


「ソフーデ、凄い出迎えだ。 いつも来客時はこうなのか?」


「いえいえ。 普段はこんなことはしません。他大陸からの龍...ましてや古龍様とその御一行様がきてくださったからです」


やはり古龍というのは、それだけ凄い存在なのだと改めて感じるドゥルシッラとテオフィロ。


「この地に何もしていないのに、この歓迎はムズムズするな」


それもあるが、本心は人付き合い苦手なのにこんないっぱいの人から見られたら恥ずかしいと思うグラデュース。


「あはは。申し訳ございません。 では、私はこれにて失礼致します。 この先に、威風龍様が居られますのでお入りくだされ」


そう言って去っていくソフーデ。 

グラデュースが先陣を切って扉を開ける。 その後ろからついていくドゥルシッラとテオフィロ。

中に入ると、唐の時代のような衣装を身に纏った男性とその両脇に美人の女性二人がいた。


「古龍殿、よくぞ参られた。 してこんな他大陸まで何用で来られたのか?」


古龍様を前にしても、ここの王である為に下手に出るようなことはしない威風龍。 グラデュースも、わかっているのでなんとも思わず言葉を交わす。


「単刀直入に言うぞ。 俺の友である人間が龍の血を欲していてな。 威風龍の血を貰いに来た。 ただ貰うだけではない、ちゃんと土産もある。お前の好きな団子だ」


団子と聞いて目を輝かせる威風龍。


「血を欲する理由を申せ。 それと、団子を食わせてはくれまいか?」


その後、拓哉が何故欲しがっているのか話して、みたらし団子を威風龍の前に出す。


「おもしろい場所に住んでおるのだな。 そういうことなら、その料理人が作った団子がうまければ血は分けてやろうぞ。 して、これが団子とな? 火乃国の団子とは全然違うではないか! だが、わざわざ作ってくれたのだ。食すとしよう」


グラデュースは、食べて驚くがいいと思っていた。 試食させてもらったが、あまりの衝撃と旨さにドゥルシッラなんかほっぺたが膨らむほど食べていたくらいだ。


1つ手に取り口に入れる威風龍。 黙ったまま咀嚼して飲み込む。 暫し沈黙があった後、周りに花畑でも咲いたような満面の笑みを浮かべる。


「うっま〜い! モチっとした団子を噛めば甘辛い冷たいタレがドバっと溢れ出てくるではないか。 冷やすなど一見愚弄に思えるが素晴らしいの一言である。 お前らも食べてみよ」


大絶賛する威風龍が、横にいる女性に食べてみろと勧める。 その女性達も「ん〜おいしい」と大絶賛する。


「素晴らしい団子感謝する。 今度からそちらに食しに行こうと思う。 それから、遅れたが私はハオ。 この二人は妻のシャオリンとミンユー」


「俺はグラデュース。 そして、水竜のドゥルシッラと雷竜のテオフィロだ。 俺もたまにここに遊びに来ていいか?」


紹介されたシャオリンとミンユーは頭を下げる。 ドゥルシッラとテオフィロも同じように下げて挨拶をする。


「構わん歓迎しようぞ。 にしても、本当にうまいな...みたらし団子というのは。 大きさもちょうどよいから止まらんぞ。 それから今日は、ここに泊まるがよい。歓迎の宴をしようぞ」


その夜、歓迎の宴が開かれてグラデュースとハオは同盟を結ぶこととなった。 それから、血もしっかりと分けてもらい、グラデュース達の長い長い旅も終わりを告げた。

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