第128話 雷竜とエクレア!甘い物好き女子のドゥルシッラ

ドゥルシッラは海の中を進み、グラデュースは空を飛んでいる。


「そろそろ人間たちもいる海域だ。 人化して俺に飛び乗れ」


水竜は飛ぶことができないのと、もし人間に見つかれば大騒ぎになる為、乗るように言うグラデュース。


「はい!わかりました。 では、申し訳ございませんが失礼します」


人化して飛び乗るドゥルシッラ。 グラデュースは、その直後、一気に上昇して雲の上まで行く。 誰にも見つからないようにするためである。


「一気に飛ばすから捕まっていろ」


「うわぁ〜綺麗ですね。 空は初めてなのですよ」


これは友達との初めての旅ではないかとニヤニヤするグラデュース。 グラデュースの悪い癖が出始めた。 幸い遊覧飛行を楽しむドゥルシッラには気付かれていない。


「そうだろうそうだろう。 こんなのはどうだ?」


調子に乗ったグラデュースは、宙返りや急降下からの急上昇をする。 


「キャァァァ!凄い楽しいですね。 古龍様の背中で楽しめるとは贅沢です」


それを聞いたグラデュースは、ニマニマが止まらない。 初めて誰かと遊んでいると感じているからだ。 ドゥルシッラだからこそ受け入れてもらえてるが、他の人に行ったらマッハ並で飛んでいるので、恐怖で死んでしまうだろう。


「そろそろ、浮き島に着くからな。 普通に飛んでいくぞ」


雷竜は、雲の上に浮き島を作り住んでいる。 自然発生する雷を、その身に受けてエネルギーに変えて成長していくのだ。


「は〜い!古龍様」


ドゥルシッラも慣れてきたのか、先程よりもフレンドリーに接している。


浮き島に近づいて行くと上空がピカッと光る。その直後、バリバリバリバリと凄い音を出しながら稲妻が降り注ぐ。

グラデュースは、防御魔法を張って平然と飛んでいる。


「キャァァァ...古龍様危ないっ」


ドゥルシッラは、無数に襲ってくる雷に怖がる。


「ドゥルシッラ、しっかり捕まれよ。 龍壊砲デストラクションキャノン


ホバーリングしながら、口からビームのような超高濃度エネルギー波...龍壊砲デストラクションキャノンを放つ。

そのまま一直線に浮き島に向かって行くが、脅しのつもりなので当たる直前に直角に曲げて当たらないようにする。


「聞け! 俺は古龍のグラデュースだ。 テオフィロよ、10秒以内に出てこなければ次は浮き島に当てるぞ! 10 9 8 7 6 5 4 3「はい〜お待たせしました〜」」


空中ヘッドスライディングをかましながらやってきたテオフィロ。


「グラデュース様、本日はお日柄もよく...私どもの住処にどのようなご用向でいらしゃったのですか?」


平伏したまま顔だけ上げて様子を伺うテオフィロ。


「友である人間が作った至高の菓子を持ってきた。 あとは、この瓶に血を分けてほしい」


テオフィロは、お菓子? 人間? 至高? 血? 内心何を言っているんだと思っている。


「と、とりあえず来客用の部屋にご案内致します。 ってドゥルシッラもいたのかよ?」


浮き島の来客用の部屋に向かう3人。


「テオフィロ、お久しぶりですね。 このまま古龍様の言う通りにしていれば大丈夫ですよ」


来客用の部屋といっても藁を敷き詰めただけの広い広場だ。


「ドゥルシッラよ、これが来客用らしいぞ。 チクチクして早く帰りたいんだが...」


藁のチクチクに文句を言うグラデュース。


「最大のおもてなしなのですから、シーですよ古龍様。確かにチクチクしますが...」


ある程度、フレンドリーにしても許されるとわかったドゥルシッラは、口に人差し指を当てる。


「うむ...さっさと済ませて帰ろう」


雷竜に全部聞こえており、文句を言うなら早く帰ってくれないかなと思うのだった。


「何もない場所で申し訳ございませんがお寛ぎください。 えっと、私の血をご所望でしたでしょうか?」


「血は、こいつに入れてくれ。 その前にエクレアという菓子を食べよう。 人化してくれ」


テオフィロは、え?となるがドゥルシッラは、目をキラキラさせる。


「シュークリームに続いて新たなお菓子ですかぁ。 やっぱり古龍様についてきて正解でした。 古龍様、はやくはやく」


すぐに食べたいドゥルシッラは、グラデュースを急かす。

グラデュースは、仕方ないなという表情で箱をあける。 ドゥルシッラは、1番にエクレアを取って口に入れる。


「ん〜甘いけど嫌味のない苦味があってしっとりまろやかでおいしいぃぃ。 古龍様、こんなとこにいないで早く行きましょう」


こんなとこって、1番酷いことを言うドゥルシッラ。


「まぁ待てドゥルシッラ。 テオフィロ一口食べてみてくれ。 嫌なら食わなくていい」


人化したテオフィロは、性別は雄で見た目は茶髪のヤンキーみたいな感じだ。

テオフィロは、古龍に言われてはと一口食べる。


「え? 甘い ほのかに苦味があってフワッとしてしっとりしてうまいです。 グラデュース様、止まりません。 なんてうまい菓子なんだぁぁ」


「それを作った人間が血を求めている。 エクレアのお礼に血を分けてくれないか?」


小瓶を差し出すグラデュース。 テオフィロも指を切りすぐに血を渡してくれた。


「おい!ドゥルシッラ、血を入れている間に俺のエクレアがないじゃないか!?」


しれっとエクレアを独り占めしていたドゥルシッラ。 テオフィロが怒る。


「グラデュース様〜エクレアは...?」


涙目になるテオフィロ。


「あれで最後だ。 ドゥルシッラ、これはテオフィロの菓子だ。 調子に乗るなよ」


流石に目に余ると思い怒るグラデュース。

凄い重圧でドゥルシッラは、すぐ平伏する。


「申し訳ございませんでした。 どうかお許しください」


「ドゥルシッラの財宝を代金に俺とテオフィロに思う存分食わせろいいな?」


ドゥルシッラは、財宝を失いたくないが古龍様を怒らせるわけにもいかないのと、どうしても料理が食べたくて財宝より料理に気持ちが傾く。 あと、調子に乗りすぎたなと反省もする。


「はい。 わかりました。 財宝を全て譲りますので、お許しと料理をお願いします」


「わかった。 しっかり拓哉と話はするから任せておけ。 テオフィロ、今すぐ次期長を選出して俺の住むところに行くぞ。 エクレア食いたいよな?」


カッチカッチカッチカッチチーン! テオフィロは、長より料理を選んだ。


「はい! 今すぐに行きましょう。 ドゥルシッラ、食べられた分覚悟していろよ」


爆食いする気満々のテオフィロ。 ドゥルシッラは、財宝で足りるかなと不安になるのであった。


テオフィロも、すぐ長を決めて飛び立つ。 雷竜達から「お待ちくださ〜い」と言われるが無視をして去っていく。


また拓哉の知らないところで村の戦力が世界最大になるのであった。

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