第127話 水竜とシュークリーム!

拓哉の願いを叶える為にグラデュースは、 下級竜の水竜と雷竜の根城に向かっていた。 まずは、水竜を探しに向かう。そこは誰も近付かないのような海の最果ての渦潮が無数にある場所だ。


バリボリバリボリ

「このボルテックスクラブうまいな。 味噌の濃厚さと甲羅の硬さがなんとも...おぉ身もプリプリだ。 これを帰りにお土産で貰って帰ろう」


さっき渦潮から顔を出したボルテックスクラブを爪の一撃で倒し、飛びながらバリボリ食べているのだ。 ボルテックスクラブは、渦潮の中でも生きていけるように、オリハルコン並の甲殻を持ち、体長も15mを超える。 人間の国にまず出回ることのない魔物であり出回った場合、数億円の価値が付くだろう。それと、荒海と渦潮で揉まれた身は引き締まりプリプリしている。


グラデュースは、ボルテックスクラブを食べながら拓哉ならどう料理してくれるのか、想像を膨らましてニヤニヤしている。 そんなことを考えていると前方に無数の水竜が海から全身を出してグラデュースを見ている。 強大なグラデュースの力を警戒して出てきたのだ。


「俺は、古龍のグラデュースだ。 ドゥルシッラに会いに来た。 案内を頼む」


「古龍様、姫様に何用で参られたかだけでもお聞かせ願えないでしょうか?」


代表して話す水竜以外は、みんな頭を垂れる。 ちなみに、水竜はシーサーペントをイメージしてほしい。


「小瓶に血を貰いにきただけだ。 人間の友との約束だからな。 もし、通さない気なら全滅させても構わないがいいのか?」


いつもに増して威厳を出すグラデュース。 ちなみに、下位は竜と表し上位は龍と表す決まりがこの世界には存在する。


「か、畏まりました。 す、すぐに、報告してまいります」


威圧を当てられた水竜は逃げるように去っていく。他の水竜もぷるぷる震えたり失神して倒れる者もいた。 暫くして、バシャバシャと凄い勢いでやってくる水竜がいた。


「古龍様、このような辺鄙な場所にわざわざ...申し訳ございませんが、こちらにお越しくださいませ」


案内されたのは洞窟であった。


「ドゥルシッラ達は、普段海中にいるのだろう? ここはなんなのだ?」


水竜は、海中に住処を作るのが特徴で、洞窟に住むとは聞いたことがないのだ。


「ここは、もしもの来客用に作りまして、まぁ誰も来たことがなく古龍様が初めてです。 そこに、シープの毛で作った敷物がありますので腰掛けてください」


少し高台になったところに、羊毛で拵えたふわふわの敷物があった。 そこに座るグラデュース。


「おぉ!いい座り心地だぞ」


「もし良ければ持って帰ってください。 来客もいませんので」


上位の中でも最高位に位置する古龍に機嫌を良くしてもらおうとするドゥルシッラ。


「う〜む...最近は人化して暮らしているからいらないな。 人間が住む場所で暮らしているんだよ」


それを聞いたドゥルシッラは思わず叫ぶ。人間と古龍が一緒に生活なとありえないからだ。


「えぇぇぇぇぇ〜〜」


「うるさいな。 人間と暮らしてはいけないのか?」


うるさいと言われて、すかさず土下座をするドゥルシッラ。


「申し訳ございません。 いや...古龍様と人族が一緒に暮らすなど想像も出来ず驚いてしまいまして...」


「飯がうまいんだよ。 もう適当に飯が食えない体になってしまって世話になっている」


さっき適当にボルテックスクラブを食べていたことは忘れているグラデュース。

ドゥルシッラは、古龍を病みつきにさせる料理とは何か凄く気になっていた。


「あ!その世話なってる拓哉から、わざわざ行くならお土産くらい持っていけと渡されたんだ。 ドゥルシッラは人化できるよな?」


人化はできるが、何故と思うドゥルシッラ。 お土産というのは白い箱の中に入っているようだ。


「はい。 少しお待ち下さい」


そう言うと水竜の姿から人の女性の姿になった。 水色のロングヘアーで、身なりは人魚が着るような露出度の高いドレスを着ている。


「早速食べるか。 そのままかぶり付いて食べろと言っていた。 ドゥルシッラも食べてみろ」


箱の中には、茶色いゴツゴツした上に白い粉が乗った丸い物体があった。 ドゥルシッラは、こんな物が食べ物なのかとグラデュースを見るとうまそうに食べている。


「このシュークリームというのうまいぞ! 外はサクッと中はトロッとした甘い物がなんとも言えないうまさだ。 早くドゥルシッラも食べろ」


古龍が言うから仕方なく食べるドゥルシッラ。 しかし口に入れた直後、甘さとうまさの波が襲いかかる。


「な、なんですか!?この食べ物は、外はサクサクしたおもしろい食感に、中は乳の甘さが押し寄せるトロッしたこのソース?ふわぁ〜おいしい...2個目も頂きましょう」


その後、二人で全て食べたのだが全然足りない。


「あの〜古龍様についていけば、このような物が食べられるのですか?」


どうしても、もう一度シュークリームが食べたいのと、古龍が恋してやまない食べる物を食べたいと思ったのだ。


「拓哉に聞いてみないとわからないが、一度雷竜のところに行くがついてくるか? それから、もし拓哉の飯が食いたいならドゥルシッラの血をこの小瓶に入れろ」


ドゥルシッラは、小瓶を受け取りすぐに指を切って血を溜めてグラデュースに渡す。


「料理の件、お願いしますね。 じゃあ、新しい長を任命しますので、雷竜のところに向かいましょう」


その後の、ドゥルシッラの行動は早かった。  長をあっさり決めてポカーンとする面々を後目に、さっさと泳ぎ出して雷竜の元に向かう。 最後にドゥルシッラは、古龍様ってもっと絡み辛い面倒臭い方だったよなと思うのであった。 ちょっとずつだが、グラデュースも村で人付き合いに慣れ始めたのだろう。

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