第118話  (後編) 長く村の住人と一緒にいたい!

茂三が鍋を持ってたのだが、拓哉は考えていた。 


以前創造神から仲間を増やせ・面倒くさいことが起きるようなことを言われたよな...もしかして、帝国と共和国の件なのか? もし何かあれば、アルノルドとカミッロに任せよう。 俺は争うとか面倒くさいからな。 "創造神様、俺は絶対に戦いには参加しません以上"よし!これで大丈夫だろう。


拓哉が、戦わない宣言をしていたらアルバーノが声をかけてくる。


「何ぼぉ〜としてんだよ。 すき焼きうまいぞ。 一緒に食おうぜ」


「ワシのよせ鍋もわけてやるわい」


「僕のもつ鍋もどうぞ」


ぼぉ〜としているのを心配してくれたようだ。


「ごめんなさい。 じゃあ遠慮なくもらいますね。 ってうまい...茂三さん割り下は秘伝ですか? 角がなくまろやかな感じがします。 もつ鍋もまろやかで、いくらでも食べられそうですね...隠し味はなんだろう? ほぉ〜まろやかからの、このよせ鍋の鼻に抜ける豊かな風味と舌を刺激する美味さは黒七味かな? うますぎる! シェアして食べても飽きさせず、ずっと食べていたいと思わせるこの感じ...病みつきになりますね」


次から次から箸が勝手に伸びてしまう美味さを秘めた3つの鍋の虜になる拓哉。


「すき焼きともつ鍋は、牛乳を隠し味にしておるわい。 入れなくてもいいんじゃが、定食屋でも上品なもんを出せるんじゃぞというワシの変なプライドが昔あってのぅ。 そのままずっと入れとる。 黒七味は、わかったようじゃな。 よせ鍋のええとこは、調味料が多種多様に選べるとこじゃ。 秘伝でもないから向こうに帰ったら入れてみるとええぞい」


定食屋をしていた時に何か客から言われたのだろうな。 それにしても、牛乳嫌いな俺はあまり牛乳を使うことをしなかったが、今後隠し味で使ってみるか。


ここで深刻そうな顔をするアルバーノ。


「アルノルドとカミッロよ、拓哉の食の回答に嫉妬しそうなのだが...俺ら食い散らかしてうまいしか言ってないよな。 それに、茂三は死んでも毎日働いてカッコいいのに、俺たちは働かずチェスと飯食うだけ...周りから見たらかっこ悪いやつらじゃないか?」


ちょっと、急にどうしたの?客なんだから、うまいだけでいいしそもそも死んで働いてる茂三が異常なだけだと思う拓哉。


「そうじゃな...明日から茂三に頼んで料理でも習おうかのぅ」


「僕も料理したいです。茂三さん教えてください」


「ワシの弟子になるには、相当な修行が必要じゃ。 お前さん達に耐えられるかのぅ」


ちょっちょっ!急に訳のわからない展開なってるから。 天界だけに。って俺までおかしくなってきたわ。 


「あの〜? 死んだらゆっくりしていいと思うんですが...皆さん働くのですか?」


「当たり前じゃ、ドワーフが家を建てんと更地じゃ。 狩る者がおらんかったら料理も食えん。 畑をする者がおらんと野菜すらないんじゃ。 死んだら終わりじゃないんじゃよ。 自給自足じゃ。 働いとらんのは、こいつらだけじゃ。 今までツケで食っとったわ。 じゃが、前世で世話になったしのぅ。それでええんじゃ。 正直、死んで1番辛いのは、まだ生きとるやつらに会えんことじゃわい。 拓哉も今の時間を大切にするんじゃぞ」


働かないといけないことよりも、最後の言葉が辛くなった...人間の俺がまず死んで、娘達が取り残される。 正直、娘や村の住人が亡くなるまでずっと一緒に暮らして生きていたい。 

急に寂しくなり、早く帰ってみんなと触れ合いたくなった。 


「俺、急に村と住人達が恋しくなったのでそろそろ帰りますね...創造神様、もう天界から帰りたいです」


そう言っているとニート3人組から言われる。


「人生何事も甘くないですよ」

「そうだのぅ。 人生働く時間が大半で友との時間は短いからのぅ」

「拓哉は、楽しい人生を過ごせよ。 死んだら遊んでやるからな」


人生の先輩の助言で、より一層村の住人達が亡くなるまで、ずっと一緒に過ごしたくなり、不老不死の霊薬がほしくなった拓哉。


「拓哉帰るなら、いつか火乃国のワシの店に行ってくれんか? レインボースライムが元気か見てきてくれんかのぅ。 生きておったら拓哉に譲るんじゃ」


レインボースライム...要りませんとは言えない拓哉は「機会があれば」と答えて倉庫に食材を置く。 そうすると、任務が完了したかのように体が薄くなって消えていく。


「死ぬまで仲間を大切にのぅ」


「死んだらチェスでもやろうな」


「お主が死ぬ前に、ワシは料理王になっとるでのぅ。 ワシの弟子にしてやるわい」


「僕は拓哉さんなら思い描いている夢が叶うと思いますよ」


カミッロが1番いい発言をしてくれた。 先輩達の優しさが伝わってくる。


「絶対に死なないから一生待っててください。 リッチやノーライフキングになってでもみんなと一緒に生き続けますから」


茂三と感動の出会いを果たしたはずなのに、1番の収穫は"今の時間を大事にする"ということだった。


「あるじ、あるじ、目を覚ますんだよ。 死んだら嫌だよ...」


よく聞いた声が聞こえて目を覚ます。


「んん? 桜花?」


桜花は抱きついてきて離れない。


「あるじ~よがっだよ〜目を覚ましだよ。夕方なのに、声をがげでも揺らしでも寝だままで...よがっだよぁぁぁ」


え?もう夕方?


「桜花ちゃん、拓哉さんが目覚めてよかったですね。 私の薬も効かないから焦りましたよ」


マリーも拓哉の無事に安堵する。

拓哉は桜花を抱きかかえたまま言う。


「マリーさん、今すぐに不老不死の霊薬を作ってください。 毎食料理を無料にしていいし、全財産を渡しますからお願いします」


拓哉の必死さに焦るマリー。 桜花も泣き止んでポカーンとする。


「えっえっ!?急にどうしたのですか?ちゃんと説明してください」


拓哉は、1から天界であったことを説明して、マリーには言っていなかった転生したこと使徒と呼ばれていること桜花が神獣であることを話した。


「話してよかったのですか?それと拓哉さんは、その考えに行き着いたのですね。 不老不死の件は、理由を聞いて納得できました。人間は、短命で異種族は長命ですもんね。 霊薬の件は、素材があれば作れますが...グラデュースさんに協力してもらう必要があります。 全ドラゴンの生き血が必要なんです」


拓哉は、グラデュースの交渉材料を模索するのであった。 


「マリーさんは、信用できますから大丈夫です。と言いますか、ここの住人は全員仲間ですから。わがままですが、議会所に全員集めて協力を仰ぎたいと思います。 それと遅くなったけど桜花とマリーさん、迷惑をかけてごめん。 ありがとうな」


桜花の頭を撫でながら言うと桜花は本当に寂しかったのだろう。 何も言わずにまた抱きついてきた。

拓哉は、長命種の村の住人と娘たちと長く過ごす為に、不老不死の霊薬を手に入れようと動く決断をするのであった。

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