第112話 (後編) ネバネバスタミナ料理と狙われるバルトと小次郎!!

ザバァァァ〜

ジュリアーナがお湯に浸かる。


ジュリアーナが言う。

「あらぁぁん。 お肌がスベスベになりそうなお湯だわぁぁん。 拓哉さんも一緒に入ればよかったのにぃぃん」


その頃、拓哉は食材の準備をしていた。

背中に不吉な何かが迫っているような感覚で、体が身震いする。


「うわぁ! なんだ??風邪かなぁぁ?」


そして、バルトと小次郎にも危機が迫っていた。


「今日は、暗いうちから森に出たお陰で、魔物がまだ寝ておったから楽じゃったのぅ。 んっ?誰か先客がいるようじゃな」


「そうだな! 物足りなかったが、偶にはのんびり散歩もよかろう。 本当だな。 俺たちより早くとは珍しい」


脱衣場の籠にタオルやらが置かれており、気づく二人。


カラカラカラ(引き戸を開ける音)


「朝からの露天風呂、贅沢の極みじゃわい!のぅ小次郎」


タオルを肩にかけて問いかけるバルト。


「うむ! 昔は布で拭くくらいだったからな。 風呂もそうだが、この柔らかいタオルというのも贅沢だ」


そう二人が語っていると、かすかな湯けむりの向こうから声がした。


「あらぁぁん! いいオ・ト・コが二人もいるじゃなぁぁい。 うふん。 すんごい体じゃないのぉぉん。 お姉さん興奮しちゃうわぁぁん」


湯から上がってくるゴリマッチョ。

声の体と顔との不一致さと、聞いてはいけないような言葉に、バルトと小次郎は顔を見合わせてゴリマッチョを凝視する。


「なんじゃ(なんだ)あいつはぁぁ!」


ただならぬ強者の匂いと関わってはいけない危険信号が脳裏に鳴り響く。 思わず戦闘モードになり、構える二人。 だが、目の前から、そのゴリマッチョは消えて、耳元で声がする。


「あはぁぁぁん! やっぱりいい筋肉だわぁぁん。 やだぁぁん触っちゃったぁぁ」


二人の二の腕を触るジュリアーナ。目がとろ~んとしている。


バルトと小次郎が叫ぶ。

「ギャァァァァァァ〜!!」


このあと二人がどうなったかは言うまでもない。 次に訪れた住人によって、二人の屍が発見されるのであった。


スベスベツヤツヤになったジュリアーナが、ヤミンの案内の元、憩い亭に向かう。 

拓哉がジュリアーナに用意したのは、夏用のもこもこパジャマである。 短パンもこもこから出るゴツい足。 もこもこパーカーから出る太い二の腕。 もう凄いの一言だ。


「わぁぁ拓哉さんの選んだ服かわいいねぇぇ」


目を輝かせながら言うヤミン。 嘘は一切ついていない!


「そうよねぇぇ。 私も着たことのないかわいい服で驚きよぉおん。 流石エルマーナを作った人だわぁぁん。 惚れちゃいそう...」


バルトと小次郎を我が物にした次は、拓哉がターゲットになっている。 クネクネしながら店につく。


「ここがお店だよぉぉ。僕はエネルギー補給があるから、またあとでねぇぇ」


畑に植わって魔力吸収と光合成をしないといけないヤミンは、そう言って去っていく。


「あらそぅ??寂しいぃわね。 それよりありがとねぇえん」


手を振りながら言うジュリアーナ。


カランカラン 


「あ!ジュリアーナさん、お待ちしてました。 露天風呂と服はどうですか??」


内心凄いドギツい物を見てしまったと思うが、表情には出さず平常心を装う。


「もぉぉ最高だったわぁぁん! お肌がスベスベツルツルになるし、極上の筋肉を触れたものぉぉん」


ん?露天風呂でツルツルにはなるけど、何故あんなツヤツヤになっているのかと思う拓哉。 しかも、極上の筋肉とか言う不穏な単語まで出た。 これ以上ツッコんだらダメだと警告音が鳴る。


「ははは...満足してもらえてよかったです。 早速食事用意しますね。 暑いのでスタミナがつくネバネバ料理にしました」


こいつは、異世界人にはちょっと受け入れがたいかも知れないが、偶にネバネバしたものを全て入れて食べたくなるんだよなと思う拓哉。

用意するのは、山芋 納豆 オクラ なめたけ モロヘイヤ 甘辛く焼いた鶏肉 ダシ 醤油 梅肉 米である。 山芋をとろろにして、オクラは中の種をしっかり取って口に残らないようにする。

あとは、丼ぶりに米を入れてとろろをかけて、他のネバネバ食材と鶏肉とダシと醤油をかけて小皿に梅肉を置いたら完成だ。


厨房からホールに持っていく拓哉。


「和風ネバネバスタミナ丼です。 そのまま食べてもいいですし、グチャグチャに混ぜてもいいですよ。 味を変える際は、小皿の梅肉と食べてみてください」


ジュリアーナは、見たこともない料理に、どんなものか好奇心しかなかった。

拓哉は、果たして納豆を食べてもらえるのか?不安であった。


「ふぉぉぉ凄いわぁぁ! あっさりしたネバネバ食材の中に、甘辛く焼かれた細かいお肉とのバランス。 この一見匂いのキツイネバネバが口に入ると、豆の味と独特の風味がクセになるわぁぁん。 ライスに染みた優しいスープ?タレ?がネバネバ食材と相まって、なんとも言えないおいしさだわぁぁん。 これ私好きよぉぉん。 それに、この赤いのを加えたら酸っぱいけど、この料理に合うし、食欲が更にますのよん。 それから、何故か、力が湧いてきた気がするわぁぁん。 まだまだ食べるわよん!おかわり頂けるかしら??」


異世界の人に受け入れ...ジュリアーナだからこそ食べられたような気がすると思う拓哉。

そこに二人の人物がくる。


カランカラン

バルトと小次郎だ。 バルトと小次郎は、幽霊を見たような青ざめた顔になる。


「女装したバケモノぉぉぉ(じゃぁぁぁ)」


キランと光った目が、バルトと小次郎を捉える。 ボキボキと指を鳴らすジュリアーナ。


「拓哉さぁぁん! ちょっとお・は・な・ししてくるから、おかわり用意しといてぇぇん!」


立ち上がったジュリアーナは、あの強者のバルトと小次郎を簡単に抱えて「お前ら覚悟できとるんやろうなぁぁ!」と言いながら出ていった。拓哉は、手を合わせて南無阿弥陀仏と唱えるのだった。

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