第111話 (前編) あのオネエがやってきた!!

フリフリエプロンを着たゴツいおっさんが、お菓子作りをしている。 


「新しいエルマーナ(マドレーヌ)が焼けたわよ〜ん。 早く待ってるお客様にご提供してちょうだ〜い!」


店の給仕から「は〜い!」と返事が届く。 

こんな感じに毎日大繁盛で、魔国ではエルマーナとシェルフィール(フィナンシェ)が大流行りしている。 

店が大繁盛するのは嬉しいけど、ジュリアーナは、どうしてもエルマーナを開発した拓哉の料理を食べてみたいという願いがあった。


「もう〜我慢ならないわぁぁ。 皆さ〜ん明日はお休みにするわよ〜ん。 ちゃんと明日のお給金は出すからいいわねぇぇ」


従業員からは、「やっと休み...嬉しい」とか「どこに遊びに行こう」とか聞こえる。 ジュリアーナの声が大きい為、お客さんにも聞こえてしまい悲痛な叫びを上げる。 その中にいた一人の高校生くらいの女の子がギャーギャー騒いでいる。


「明日は、友達とくる予定なのですわ!勝手に休みにしないでくださらない!? 私は、侯爵家の娘よ!もし明日休みにするなら、お父様に言いつけますわよ」


最初は、給仕の女の子達が止めていたが、侯爵家のご令嬢と聞き、どうしようとあたふたしていた。 そこに、ジュリアーナがやってくる。


「貴女、うるさいわねぇぇ。 キーキー虫が鳴いているのかと思ったわぁぁん。 明日開けなかったらどうなるのかしら?」


女の子も、奥からゴリマッチョのフリフリエプロンおっさんが出てくると思っておらず少したじろぐ。


「あ、あなたこそなんですの? 気持ち悪い格好で近づかないでくれるかしら! 明日開けなかったらお父様に言いつけると言いましたのよ」


気持ち悪い発言を受けたジュリアーナは、こめかみに血管が浮き出る。

誰もいないテーブルを殴り、粉々に破壊する。 それを見た女の子は逃げようとするが、ジュリアーナは、女の子を担いで外へと投げ飛ばす。 天高らかに飛んでいった女の子が落ちてきて地面に突き刺さる。


「おんどりゃー! いつでも相手になっちゃるとお前の親父に伝えんかー! ってあらやだぁぁぁ怖かったわぁぁん」


一斉にみんなコケる。 あの暴力を目の当たりにしたら、お前が怖いわ!とは誰もツッコめないのであった!

ちなみに、魔族は生命力も強いので女の子は死んではいない。  しかも、ジュリアーナが元将軍と知っていた侯爵は、自ら謝罪をしにきた。 女の子も泣いて謝り、ジュリアーナは許すのだった。


その日の夜


「それじゃぁぁぁ行くわよぉぉ。 楽しみだわぁぁん」


店の前でクラウチングスタート体勢をして、ドドドドドとあり得ない速度で駆け抜けていく。 従業員の女の子達は、走って目的地まで行くの?と思うのだった。

ジュリアーナは、止まるどころか加速し続けて、魔物を轢き殺していく。 途中でビッグコングというジュリアーナみたいなゴリラと力比べをして投げ飛ばす。 そんなこんな色んな魔物を轢き殺して、無事に村に到着する。


「憩い亭コチラって書いてるわね。 思ったより早く着いちゃったわぁぁ。 起きてるかしら。」


普通、馬車でくると2日かかる距離を10時間で着いてしまったジュリアーナ。 現在朝7時である。ただの化け物だ。


「あらぁぁ綺麗な道に綺麗な家だわぁぁ。 あら!? あそこにいる人に尋ねるのが良さそうね。 ちょっとぉぉ...そこの人いいかしらぁぁ」


歩いていたのは、朝のエネルギー補給に行こうとしていたヤミンだった。 畑近くの土に植わってエネルギーを貯めるのが日課である。


「は〜い! ってわぁぁかわいい服だぁぁ! すんごく似合ってるよ。 それでどうしたのぉぉ??」


男の娘のヤミンからすると感性が違うのか、素直に褒める。 ジュリアーナは、あらまという顔になる。


「嬉しいぃぃわぁぁん。 貴方も男の子なのに、そのかわいい服凄く似合ってるわよ。 今日来たのは、拓哉さんの料理を食べに来たの。拓哉さんは居るかしら??」


流石、ジュリアーナ! 一発でヤミンを男の子と見破る。 一体どこで見破っているのか...。


「嬉しいなぁぁ。 じゃあ呼んでくるから待っててねぇぇ」


走って呼びに行くヤミン。


「フフフッ。かわいいわねぇぇ。 ラリサちゃん達とは、また別の可愛さがあるわぁぁん」


しばらく待っていると、ヤミンと一緒に拓哉が走ってくる。


「ジュリアーナさんじゃないですか!? お久しぶりです。 こんな朝早くからどうしたのですか??」


まさかの人物の登場に驚く拓哉。 相変わらずゴリマッチョでフリフリな服着てるなと思うのだった。


「拓哉さんの料理を一度食べてみたくて、昨日の夜から走ってきたのよぉぉん。 お腹ペコペコなの。 何か食べさせてぇぇ!」


体をクネクネさせながらお願いしてくるジュリアーナ。

夜から走ってここまで来たことに戦慄を覚える拓哉。 走れメ○スの生まれ変わりか?と思うのだった。


「わ、わかりました。 とりあえずは、汗搔いたでしょうから露天風呂に入ってきてください。 その間に、服とか食事を用意しておきますから。 ヤミンくんごめんだけど、露天風呂に案内してあげて??」


服は、やはりかわいい物を選ばないと殺されるかなと思い、ネットショッピングで検索し始める。 ヤミンは、「わかったよ!」と言ってくれた。


「もぉぉ拓哉さんたらぁぁ。 気が利くわね。 好きよぉぉん、 じゃあヤミンちゃん、案内よろしくねぇぇ」


ヤミンに連れられて露天風呂に行くジュリアーナ。  拓哉は、さっきの「好きよぉぉん!」を聞いてブルブルと震えるのだった。

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