第110話 月一の真夜中にくるお客様!

カレンダーに、丸を付けた日を確認して今日かと思う。 閉店を迎えるが、ラリサとアニカと桜花も、月一のお客様を待っている。


「バクールおじいちゃん元気にしてるかなぁぁ??」


そう月一のお客様は、先代魔王のバクールさんである。 今は辺境の地で、妻と二人で暮らしているとのことだ。 一人でのんびり晩酌をしたいからと、夜中に来たいとお願いされてOKを出したのだ。 まぁ、一人で飲みたいと言いながら孫にした(自称)ラリサとアニカと桜花には、絶対会いたいらしい。


「あの爺さんが、簡単に死ぬわけないしな。 3人に会いたくて死神すら消滅させるんじゃないか」


そんな冗談を口にしているとドアが開いてバクールが来店する。


カランカラン


「いらっしゃいませ!」


入ってきた瞬間から、ラリサとアニカと桜花を見て、目尻が下がり好々爺になる。

バクールは、一人一人抱きしめて頭を撫でる。 アニカの得意な爺さん殺しが炸裂する。


「バクールおじいちゃん抱っこなのぉぉ」


バクールは、歓喜である。 それが、ジジイのスピードかというくらい早く抱き上げて抱っこする。


「ラリサもアニカも桜花も、じいじの宝もんじゃ。 何かほしいもんがあったら、すぐじいじに言いなさい。 なんでも買ってあげるぞい」


ダメダメ爺さんだと思う拓哉。 まぁ、ラリサも桜花もバクールさんを好きそうだしいいんだけどさ。


「あまりうちの子を甘やかさないでくださいよぉぉ。 バクールさんなら国がほしいとか言っても用意しそうで怖いんですよ」


本気で怖いと思っている。 「帝国潰してきたから、アニカにあげんじゃぁぁ」とか普通に言いそうなんだもん。


「なんじゃぁぁ!なんじゃぁぁ! ワシの月一の楽しみを奪いおってからに。 そりゃ孫に言われたら、全勢力を使って潰して贈り物にするぞい。 孫の為ならじいじは、なんでもするんじゃ」


はぁ〜もうダメな領域に入っていると思う拓哉。 せっかくの月一だしこれ以上は、言わないでおこうと思うのだった。


「はいはい! 悪かったですよ。 で、今日は、何を食べに来たんですか?」


あしらうように言う拓哉。 

普通なら、こんな対応をされたら怒るバクールだが、ヴァレリーと同じで拓哉には怒ることはない。


「ぶっははは、今日のぅ。 こんなに金を持ってきたんじゃ。 最高級の酒と珍味をつまみに呑みたいのぅ。 拓哉も晩酌に付き合え。 ラリサとアニカと桜花も好きに飲んで食べてええぞい」


毎回こんな感じでバクールは、みんなに奢る。 拓哉も、話していて楽しいので晩酌を付き合うのだ。 


「珍味はいつも通り用意していますので、酒と一緒にお持ちします。 少々お待ち下さい」


まさかこの酒を買うことになるとは....20万の日本酒を見ながら言う拓哉。


「お待たせしました。 金貨20枚の日本酒とへしこ アンコウの肝 このわた からすみです。  早速味わってください」


ヴィンテージによって、10万から50万まで幅広い日本酒だ。 今回は、20万の物しかなかったので、それを出した。


ちなみに、娘達にはジュースとポテトチップスなどお菓子を出している。


まずは、日本酒からキュッと呑むバクール。


「お、おぉぉぉぉ!! なんじゃこりゃぁぁぁ! 甘味、旨味、渋味、酸味すべてが均等に保たれとる....なんと表現すればよいかわからんのじゃが、一言言うなら"上品"じゃな。 こんなうまい酒を呑んでしまったんは間違いじゃった...明日から家で呑めんようになるわい....」


バクールの言う通り、流石選び抜かれた日本酒なだけあって素晴らしいの一言だと感じる拓哉。


「本当に、うまいですねぇぇ。 ドワーフに出したらいくら分くらい飲まれてしまうのやら...アハハハ! って早く珍味も食べてくださ!」


ドワーフに呑ませたらあっという間に、破産しそうだと思う拓哉。 それを聞いたバクールも同意して笑う。


「やはりこのわたの塩辛さと、かすかな甘みそして独特の食感が堪らん! おっ!やはりこの酒とも合うのぅ。 次は、アンコウの肝か、ほほぅ〜相変わらず濃厚でなめらかな舌触りに、とろけるうまさが堪らんわい。 本当に毎日来たいくらいじゃが営業時間じゃと、こうのんびりできんからのぅ。 無理を聞いてもらってすまんのぅ」


月一にしているのも、拓哉達に負担をかけたくないとの配慮らしい。 拓哉は、週一でもいいと言ったのだが、断固として月一でいいと言われた。


「無理とか言わないでくださいよぉ。 俺も娘達も月一の深夜営業楽しみにしているんですから。 まだまだ時間はありますから、朝まで付き合いますよ」


お互いに酒を注ぎ合い、キュッと呑む。

娘達が寝た後も、父と息子のように酒を酌み交わすのであった。

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