第96話 マルクス王国の国王が料理を楽しむ!! 王からアレンへの謝罪!

昨晩ボーンから言われた話をしよう。


「マルクス王国の国王が、今回の件でどうしてもアレンさんに直接謝りたいそうです。 そこで、憩い亭に招きたいのですが、いかがでしょうか?」


基本誰でも拒否はしない考えなのだが、バカな貴族などに知れ渡るのは避けたいと考えている拓哉。


「国王を招くのは構わないのですが、後々バカは招きたくないですよ。 その辺りの対策はどうするのですか?? それから、国王だからと特別扱いする気はないですから、そのことで激怒するような方なら.....」


ボーンもそれについては、嫌という程、理解していた。 マルクス王国で腐った人間を幾人も殺めたのだから...


「私も腐った人間は見たくないですからねぇぇ。対策は考えていますよ。 まずは、国王に誓約の魔法をかけて、ここの存在を公言した場合、死を代償とさせます。 次に、国王だけを転移で連れてきます。 その際、一切の面会を謝絶してもらい王子すらも入室不可にします。 これなら大丈夫だと思いますよ」


拓哉は顎に手を当てて考える。  ボーンにも考えがあるだろうし、もし面倒な事態になったとしても対抗手段は無数にあるなと思う拓哉。


「わかりました。 ボーンさんを信じます。 アレンさんも会いたいだろうし協力しますかね」


(時は戻り現在)

そんなことがあり、今日王がやってくる。

20時頃にやってくると言っていたし、そろそろだなと思う拓哉。


カランカラン

拓哉と桜花が言う。

「「いらっしゃいませ!!」」


ボーンとフェンが入ってきた後、ザ・王様というような衣装を身に纏った王が入ってきた。 王は、他種族で賑わう店内を見渡しても平然とした顔をして眺めていた。


(平然を装う王様の心の中)

ナンダァァァアコリャ〜。 ハァハァハァ...ふぅ〜ボーン殿から聞いておったが、この目で見ても信じられん! 初代様が残してくれた書物に記された光景ではないか! 落ち着くんだ。落ち着け〜ワシよ。


初代様が残した書物に記された内容は、茂三の料理屋で出会った他種族のことやそこでの出来事や好きな料理のことだ。 


内心呆気に取られている王の肩を軽く叩きボーンが話し出す。


「それでは、アレンさんが待つ席に行きましょうか?? 拓哉さん、まずはキンキンに冷えたビールと凍らせたスライストマトと唐揚げをください。 驚く顔を見たいでしょう??ほっほっほっ」


料理で王を驚かせようという作戦らしい。

拓哉もそれに乗るように、「畏まりました」と言って厨房に行く拓哉。 


アレンがいるテーブルに向かう王様。

王を見つけるなり、アレン一家は椅子から立ち上がり待っていた。 王が着くと膝を付き家臣の礼をとる。


「アレンよ、ワシにそのような挨拶は不要だ!! モニカもカイル座ってくれ。 まずは、お前達すまなかった!色々迷惑をかけたな...こんな王を許せとは言わん...ただ直接謝りたかったのだ!」


王が頭を下げる。 それを見たアレン一家は驚き、アレンはすぐさま頭を上げるように言う。


「王よ、頭を上げてください。 私のような者に頭を下げるなど...それに、話はボーンさんから全て聞いております。 許す許さないの前に、今回の事件は仕方なかったのです。 それから私達家族は、ここで楽しい毎日を過ごしています。 結果的に、これでよかったのだと感じています。 ですので、私どものことなど気に病まず、王国を正しくあるべき姿に導いてください。 それが、私が望む全てです」


全てを伝えたアレンは、晴れやかな表情をしていた。 貴族に戻る気はなかったのだが、長年仕えた王のことが少なからず気がかりだったのだろう。


「そうかぁ...うむ...表情を見てわかった。 幸せな日々を送っておるのだな。 ありがとうアレンよ。 必ずアレンの願いを叶えよう。 それから、ワシのことはウォーレンと呼んでくれ」


王は、アレンに名前で呼ぶように伝える。


アレンが言う。

「え、お、恐れ多いです。 王を名前でお呼びするなど...」


慌てふためくアレンに助け舟を出すボーン。


ボーンが言う。

「料理が来たみたいですよ。夜は長いのです。 呑みながら打ち解けましょう」


ウォーレンは、意図に気付いたのか席に座る。 続いてそれを見たアレン一家も慌てて座る。


「ビールと唐揚げとスライストマトでございます。 ごゆっくりお寛ぎ下さい」


そう言って足早に去っていく拓哉。 王が何かを言いかけるが、すぐに他の注文を受けている拓哉を見て言うのをやめる。


「では、頂きましょう! ウォーレンさん、ビールをぐぐっと一気に呑んでみて下さい」


逆らうことができない王は、ボーンの言う通りにぐぐっと呑む。


ウォーレンが言う。

「ぷはぁ〜うまい! ワシが今まで呑んだどの酒より呑んだ直後 喉を通る瞬間 後味全てにおいて勝っておる」


余韻を楽しむウォーレンに間髪入れずボーンが勧める。


「ウォーレンさん、次はこの唐揚げを食べてからビールを呑んでみてください。ほっほっほっ」


先程までの緊張や不安など一切なくなっているウォーレン。 さっきまで、感じなかった店内に漂ういい香りや、目の前にある見たこともない揚げ物から漂う...なんとも言えないうまそうな匂いが鼻腔をくすぐり脳から食べろ早く食べろと促す。 気付いたらフォークを刺して口の中に入れているウォーレン。 一噛みした瞬間、思わず声を上げる。


「ふぉぉぉお。なんという肉汁...それから、口の中が蹂躙されるような旨味。 カラッと揚がっていることからも、上質な油を使っておるのだろう。 あ、そうであった。 ボーン殿がビールと言っていたなぁ。 うふぉ〜なんと暴力的な組み合わせだ。 この組み合わせを考えた奴は天才だ」


既に唐揚げを3個も食べているウォーレン。 普段見せない王の姿にアレンは驚く。 モニカとカイルは顔を見合わせて笑っている。

またボーンが言う。


「次は、このスライストマトを食べてください」


ウォーレンは、ボーンの言葉を疑うことなどもう頭にはなかった。 だが、たかがトマトだろうと思い食べる。 シャリシャリと噛むごとに音が鳴り暫く黙り込むウォーレン。


「.......ボーン殿、これは本当にトマトですかな?? な、な、なんですか!?このトマトはぁぁぁぁあ! 甘さが尋常じゃありませんよ。 それに、凍らしてあるからか! シャリシャリした食感も楽しめて、口の中をさっぱりさせて、また唐揚げを食べたくなってしまう。 食事とは、こんなに素晴らしいものだったのですね....」


普段、毒見などで冷えた料理を口にしているウォーレンは、腹を満たす為だけに食事をしていた。 だが、今は未知と遭遇をした時の様子に、心が踊り感動をしながら食事をするウォーレン。


「ほっほっほっ。 これで、お互い緊張が解れて本音で話ができるでしょう。 私のことは気にせず食べながらお話してください。 桜花さんすいませんが、唐揚げとビールのおかわりを私とウォーレンさんにお願いします」


ウォーレンとアレンは思う。 ボーンに対してありがとうございますと。 気を使ってくれていなければ、今から本音を話すことができなかっただろうと。


今宵は、元家臣と王が友達のように語り明かした夜となった。

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