第57話 アドルフが婚約!?綺麗な奥さんと来店!
魔王城の寝室
「アドルフ様、おはようございます」
赤いロングの髪に、ツノと先がハートマークの尻尾を生やした美人なサキュバスが声をかける。
「おはよう。ヘルカってもうそんな時間か?」
起こしにきてくれたヘルカに挨拶するアドルフ。
「はい!もう夕暮れですね。早く準備してくださいね。 お店に行く時間ですよ」
今日も朝からヴァレリーの修行という名の地獄を味わったアドルフは力尽きて寝てしまっていたのである。 しかし、修行のおかげで今や人類トップクラスと言ってもいいくらいに成長し、魔境を上 中 下で区分した場合、中の区域にいる変異種以外のモンスターなら負けることはなくなった。
「着替えたら中庭に行くから先に行っててくれ」
「はい!お待ちしております。アドルフ様」
満面の笑みを浮かべて出て行くヘルカ。
アドルフはため息をつく。
はぁ...改めて思うけど、なんであんな美人が俺なんかを好いてくれたのやら...ヴァレリー殿も、とんとん拍子で婚約を進めてしまうし。 ヘルカの親へ挨拶しに行った時なんか地獄だったなぁ。ってこんなこと思い出してる場合じゃあないな。早く準備しないと。
慌てて着替えを済ませて中庭に向かう。
そこには既にヴァレリーとヘルカが待っていた。
「すいません。お待たせしました」
焦りながら言うアドルフ。
「気にするでない。 では、行くとしようか」
ヴァレリーが言うと2人を転移させる。
憩い亭の店前
「また帰る時は迎えにくる。 2人とも楽しんでこい。 それと、アドルフしっかりヘルカをエスコートし、拓哉に招待状を渡すんだぞ」
「はい! わかりました。ヴァレリー殿ありがとうございます」
「魔王様、ヴィクトリア様に凄くおいしいと聞いてますので2人で楽しんできます」
それを聞いたヴァレリーは転移で帰って行った。
「アドルフ様...手を握ってもらえませんか?」
恥ずかしそうに言うヘルカ。
「お、おう! じゃあ行こうか」
顔を少し赤くしながら手を握るアドルフ。
アドルフがヘルカの手を引き店へと向かう。
カランカラン
「「いらっしゃいませ」」
拓哉と桜花が出迎える。
「あ!お久しぶりですねアドルフさん。 あと、そちらの女性はもしかして?」
手を握っている2人を見て以前焼肉の時に話していた人かなと思う拓哉。
「あぁ〜婚約をしたヘルカだな。 仲良くしてやってくれ」
照れ臭そうに言うアドルフ。
「初めまして! アドルフ様が、いつもお世話になっております。 ヘルカと申します」
礼儀正しく挨拶するヘルカ。
「ご丁寧にありがとうございます。拓哉と言います。よろしくお願いします。こっちにいるのが桜花です。 それと、ご婚約されたということでおめでとうございます」
「ありがとうございます。 えっと、拓哉さん、是非結婚式に参加してもらいたく招待状をお持ちしました」
「拓哉、頼む!きてくれないか?」
「構わないですけど、桜花も一緒にいいですか?」
「招待状に桜花さんの名前も書いてあるから問題ない。 あと、ラリサとアニカも当日は拓哉と一緒に参列したらいいとヴァレリー殿が言ってたしな」
当日は、みんなで参加できるみたいだな。
あ!やばいぞ...前世で結婚式なんか行ったことない。 どうしよう? 結婚式の参加マナーみたいな本でも買うか!?
「それならよかった。 そろそろラリサとアニカが居なくて寂しかったしなぁぁ。 でも、結婚式なんか行ったことないけどマナーとか知らないぞ。大丈夫かな?」
「ははは、適当にしてくれたらいい。 それと今日来たのは、招待状を渡すのと俺とヘルカのデートも兼ねてきているから何かうまいもん食わせてくれ」
おいおい!俺の店はオシャレなイタリアンレストランじゃないぞ。 コース料理なんか作れないわ! 婚約してお盛んだろうし、ニンニクたっぷりのあいつを出すか。
「わかりました。 座って待っててください。 先にビールを持ってきますから」
いつものように桜花がビールを運ぶ。
ゴクッゴクッ
「ぷはぁ〜やっぱりここの酒は最高だな。 ヘルカどうだ?うまいだろ?」
「はい!苦味がありますが、冷えていてスッと入っていきますし、後味もおいしいです」
お酒に弱いのか少し赤めた顔で話すヘルカ。
「料理も最高なんだぞ! 驚くくらいな」
「フフッ」
微笑むヘルカ
「急に笑ってどうしたんだ?」
「改めてアドルフ様が旦那様でよかったなと思いまして」
ヘルカが恥ずかしげも無く言う。
「バカヤロウ! 急になにを言って...」
赤らめながらそっぽを向くアドルフ。
そんな様子にもお構いなく話しかける拓哉。
「お熱いですね。 こんだけ熱いなら冷えた物をお出しするべきでしたでしょうか?」
微笑みながら言う拓哉。
アドルフとヘルカが顔を真っ赤にさせている。周りにいる人も微笑ましく2人を見る。 普段なら話しかけるであろう常連も気を使って揶揄(からか)うようなことはしない。
「ごめんなさい。冗談ですよ。 今日の料理はアヒージョです。 こちらのバケットに具材を乗せてアヒージョのソース(オリーブオイル)をつけて食べてください。 あと白ワインが合いますから一緒に味わってください。 では私はこれで」
2人の時間を邪魔しないように、料理の説明をしてすぐに去る拓哉。
「はは、恥ずかしいところを見られてしまったな。 熱いうちに食べよう」
2人は、バケットにエビを乗せてオリーブオイルをつけて食べる。
「うめぇ〜サクサクしたパンにしっとりしたちょっとピリ辛なソースが合うな。 それに食べたことないキノコの風味ともよく合う。 くぅ〜この辛口の白ワインともよく合うな。キノコの風味がより際立つ」
「ふわぁ〜おいしいです。 このプリプリしたエビに、ミラガー(唐辛子)とニンニクの風味のソースが合いますね。 これは貝(牡蠣)でしょうか? ん〜これもプリプリで中から、濃厚な貝の味がジュワーっと出ておいしいです。 サクサクのパンにも合いますね。 それに、こんなおいしいワインは飲んだことありませんよ。 赤だけだと思っていましたが、白ワインというのもあるんですね」
ヘルカが呆けた顔で言う。
「俺もワインは赤い物だけと思っていた。 さっき呑んだビールもだが、ここには普通では呑めない酒がゴロゴロあるからな。 それにしてもパンとこのソースだけでもうまいからいくらでも食べれそうだ」
「そうですね。 食欲がこんなに湧いたのは初めてです。私も頑張って料理を覚えて、アドルフ様にいっぱい食べてもらわないとです」
意気込みながら言うヘルカ。
「それは嬉しいな。 俺には、もう親がいないから料理を作って待っていてくれる人がいるのは嬉しいことだ」
笑いながら言うアドルフ。
「そうでしたね。 いつかご両親のお墓参りを一緒に行きたいです」
「だな! 人間と他種族がもっと理解し合えたらいいんだけどな。 言って俺もヴァレリー殿やここに通う他種族。それに1番はヘルカとの出会いで考えが変わったんだけどな」
思い出しながら話すアドルフ。
「フフッ私もですよ。 アドルフ様に出会って人間も魔族も一緒なんだと知りました。 いつか手を取り合う日が来ればいいですね」
「そうだな」
2人は料理を食べながら、理想の未来の話をする。
店にいるみんなが、そうだなと思うのと小さな声で2人に「おめでとう」と呟くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます