第56話 家族団欒はほっこりするね!

とある山の山頂にある家のリビング


「僕の大事な家族である君達を最高の場所に連れて行こうと思うんだ」


フェンがテーブルに座りながら家族に話す。


「どこに連れて行ってくれるのかしら楽しみだわ。 でも、この子まだ3歳だけど大丈夫かしら?」


妻が答える。


「頭もいいし、3歳にして人化も覚える天才だし、明日はボーンが迎えに来てくれるみたいだから大丈夫だよ」


「ぱぱ、ぼくもいきたいでしゅ」


「よし、行こう! この前の人間の国と違っておいしい物いっぱい食べれるからね」


息子の頭を撫でるフェン。


「ふふ、貴方が、何度か話してくれたところね。行ってみたかったから楽しみよ」


「今日は、ゆっくり寝て、明日はおいしい物いっぱい食べよう」


明日の為に、フェン一家は眠りにつくのであった。


19時頃、フェンの家の前


トントン!


「フェン、迎えにきましたよ」


ボーンが転移で迎えにくる。


「ちょっと待っててね。 今、息子に服を着させてるから」


フェンは、わざわざ妻と息子の為に、人間の国に行き少し高価な服を買ってきていた。

ちなみに、なぜ人間の国に出入りできるかというと冒険者登録をしているからだ。

種族表記も、ボーンの魔道具で人族に変換されるようになっており、登録時にバレないようにしていた。


暫くして、フェン一家が入り口を開ける。


「お待たせ、行こうか」


「ボーンおじちゃま〜」


フェンの息子がボーンに抱きつく。


「ほっほっほ、いつ見ても子供はかわいいですね。 お二人も捕まってください。 転移しますよ」


ボーンが、そう言いながらフェンの息子を抱っこする。


フェン一家は、ボーンに捕まりその場から消える。


憩い亭の入り口


「ここが、そうなのね。 それにしても...このお店の中から凄い力がいくつも感じるわ。 入っても大丈夫かしら?」


妻が少し躊躇する。


「大丈夫さ、みんないい人ばかりだよ。しかも、この店で暴れたら2度と拓哉の料理が食べられなくなるから変なことする人はいないよ」


フェンが、そう言いながらドアを開ける。


カランカラン


「「いらっしゃいませ」」


中に入ると、いつも通り拓哉と桜花の挨拶が聞こえる。


フェンが見渡すと、常連に加えて吸血鬼やら計り知れない力を持った浅黒い青年(古龍)などがいて本当におもしろい店だと思うフェン。


そう思っていると、拓哉が声をかけてきた。


「お久しぶりです。 今日は初めての方もいるみたいですね。 まさかと思いますが、ボーンさんの家族ですか?」


ボーンが、フェンの息子を抱っこしていたのでワザと尋ねる拓哉。


「そうなんですよ。 こんなかわいい子がってそんな訳ないでしょ! 私に息子がいたら骨ですよ骨! 女性もノーライフキングかスケルトンくらいしか相手してくれませんから! 骨になったら性別の見分けなんかつきませんがね」


カタカタ鳴らしなら笑うボーン。


拓哉は思わずスケルトン同士で結婚することがあるのかと疑問に思う。


「そうですよね。 いても骨一家ですよね。ははは。実際スケルトン同士で暮らすとかあるんですか? あと、こちらはフェンさんの家族なんですよね。 かわいい奥様と息子さんですね」


疑問に思って聞く拓哉。


フェンは、金髪の貴公子みたいな感じで、奥さんは、銀髪でタレ目の可愛らしい感じである。 息子さんも銀髪で可愛らしい子供である。


「ありますよ。 滅多にいませんが上位種のスケルトンだと話せますから、元は人間なので集落を作っていたりしてますね。 ただ弱いので見つかると殺されますし、人里離れたところにいますね。 残念ながら魔境にはいません」


マジか?スケルトンが集落...凄いな。 でもバカにしたらダメだよな。 知能があって集落を作っているなら俺らと同じだもんなと思う拓哉。


「死んだ時を考えると人間だとスケルトンのこと気になるよね。 昔、集落に行ったけど気のいいやつばっかだったよ。 あと、そうそう!僕の家族だよ。 今日来たのも、2人においしいご飯を食べさせたくてね。 息子はまだ3歳だけど食べられる物あるかな?」


気のいい骸骨?ボーンさんみたいなのがいっぱい...疲れそうだなと思う拓哉。


「ありますよ。 息子さんに合わせた料理をお2人にも出しますね。 ボーンさんはどうしますか?」


「私も同じで構いませんよ。 先にワインをお願いします」


「わかりました。 そういえば、奥様と息子さんへ挨拶がまだでしたね。 拓哉と言います。よろしくお願いします」


「よろしくお願いします。 拓哉さん」


「よろしくおねがいしましゅ」


2人が挨拶をする。


「ちゃんと挨拶できて息子さん賢いですね。 では、作ってきますのでお待ちください。 あ!桜花もついてきて」


2人で厨房に向かう。


「桜花、この赤ワインとオレンジジュースとグラス4つ持って行って」


「うん!わかったよ」


フェン一家とボーンに、ワインを持っていく桜花。


「お待たせ。 先に赤ワインとオレンジジュース持ってきたよ」


「ありがとうございます。 すっかり桜花さんも慣れましたね」


ボーンが言うと、桜花はえへん!と胸を張って「当たり前だよ」と答える。


「子供の成長は早いものですね〜。 では、飲みましょうか?」


ボーンが、2人のグラスにワインを注ぐ。


「おいちぃ〜みんかのあじがしゅる」


「ふふ、よかったわね。おかわりもしていいからね。 それにしても、このワイン濃くて変な渋みもなくて飲みやすくておいしいわね」


「そうだね。 ここでお酒を呑むと人間の国では呑めなくなっちゃうくらいだからね」


フェンが、人間の国で呑んだ酒を思い出し渋い顔をする。


「私も、人間だった時よりお酒や食に興味がありますからね。 あの時は、腹が膨れたらいいと思っていましたので」


ボーンも、昔を思い出して表情は変わらないが、テンションが下がったような話し方になる。


そんな話をしていると、拓哉がカートに料理を乗せて運んでくる。


「お待たせ致しました。 息子さんには、お子様ランチを3人にはオムライスをお持ちしました」


エビフライや小さいオムライスや小さいハンバーグ、それにプリンも乗ったお子様ランチに、目を輝かせながら見つめるフェンの息子。


早速、食べ始めるフェンの息子。


「おいちぃ〜いつもたべるよりおいちぃの」


拓哉は、3歳の子が1人で食べられると思っていなかったので驚く。


「本当に凄い息子さんですね。 1人で食べられるなんて」


「そうなんだよ。 自慢の息子だからね。 それにしても、トロトロな卵にトマトのソースを絡めたライスに鳥の肉かな? 凄く合うし相変わらずおいしいな」


「拓哉さん、初めてこんなおいしいお料理食べましたわ。 卵をふわふわトロトロにするなんて考えもしませんでしたし、トマトのソースがライスにこんなに合うなんて! それから口の中いっぱいに、濃厚な卵の味と甘酸っぱいライスの味が広がって手が止まりませんわ」


フェンの妻が頬に手を当てて幸せそうな表情をする。


「そう言ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます」


「まま〜これしゅごくおいしいの!たべてみて」


ママにプリンを食べさせるフェンの息子。


「まぁ! 甘いのとかすかな苦味が合わさって凄くおいしいわね。 こんななめらかで、すぐ溶けておいしくて甘い食べ物初めてだわ。 分けてくれてありがとうね。 ママもこれ大好きよ」


息子の頭を撫でながら言う。


フェンが食べながら急に真剣な顔で話し出す。


「拓哉、急にこんなこと言って悪いんだけど、妻と息子に名前をつけてほしいんだ」


待て待て! 責任重大なじゃないか。俺でいいのか?


「フェン、俺でいいのか? 赤の他人だぞ?」


「拓哉だからいいんだよ。 信頼できる人間だってわかってる。それに、拓哉はアレだから加護が付きそうかなって」


アレとは使徒様を差している。 家族がいる前で言うと騒ぎになるので気を遣っているフェン。

拓哉も気づいたのと真剣なお願いだったので名前を考え始める。


「う〜ん!? 俺が生まれた地域の名前でいいかな? この世界の名前にしては違和感あるけど」


桜花と同じで日本ぽい名前を付けようと考える拓哉。


「うん! 拓哉に任せるよ。 2人ともいいよね?」


妻と息子に問いかけるフェン。


「私は構わないわ。 貴方とボーンさんが名前で呼び合ってるの羨ましかったもん」


「なまえ? ボーンおじちゃまとおなじ?」


「そうだね。 ボーンおじちゃまと同じになるよ」


「やった〜ボーンおじちゃまと一緒」


手を高く上げて喜ぶ。それを見ていたボーンはなんだか嬉しそうだ。表情はそのままだが。


「じゃあ、奥様が咲(さき)で息子さんは暁(あかつき)! まず、咲は華やかとか女性的とかかわいいって意味かな。 暁は太陽のように明るく希望に満ちたみたいな意味かな。 どうかな?」


拓哉が尋ねる。


「僕は凄い良いと思うよ。 サキにアカツキかわいいしカッコいいよ」


「私もサキ気に入りました。 意味がいいですわ。かわいいだなんて」


顔を赤くしながら言う。


「ぼくは、アカツキでしゅ。 たくやしゃんなまえありあと」


暁が拓哉にお礼を言う。


あまりの可愛さに、周りに居たみんながデレデレの顔になる。


「喜んでくれてよかったですよ。 じゃあアカツキくん、名前が決まったことだし、おいしいジュースもっと飲む?」


「わ〜いのむ〜」


他のお客さんも思わず顔がニヤけるほどかわいい暁に全員が癒されるのであった。

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