第38話 神様からのかわいい贈り物!

昨日師匠はぶっ倒れるし、バルトは床で寝るしで、てんやわんやしていた。


朝いつものようにトレーニングをする為、外に出ようとしたら家の前に師匠がいて、昨日はすまなかったと謝られた。 気にしてませんよと返すと、まだ本調子ではないから修行は休みと言われる。 頭抑えてるし2日酔いかと思う拓哉だった。

休みになり1人で素振りと教えてもらった型の練習をする拓哉。 そこにバルトが帰ってきた。


「拓哉は毎朝こんなことをしとるんか? 精が出るのぅ」


「バルトおはよう。毎日師匠と稽古してるよ。師匠は2日酔いらしく今日は1人だけど。 バルトはこんな朝早くから森に行ってたのか?」


「ここに家を建てると言ったじゃろ? 木を切ってきたんじゃ。 オークの群れが邪魔でちと時間がかかったがのぅ」


平然とオークの群れと言っているが、魔境の魔物は普通とは違う。 バルトも相当な力があるのだろう。


「おつかれさん。 店の邪魔にならない所に建ててくれな」


「ワシを誰だと思っとる。 鍛治に建築に鉱石の加工全てをマスタークラスまでできるのはドワーフでもワシだけじゃ。 家を建てたら次は道の舗装をしてやるわい」


なんと! 道の舗装までもしてくれると。ん?ちょっと待てよ!鍛治って言ったか?ならあれを頼んでみるか。


「バルトお願いがあるんだが、オリハルコンの解体用ナイフを作ってくれないか?」


「オリハルコンの解体用ナイフなど何に使うんじゃ?作るにしてもオリハルコンと鍛治場はあるのか?」


「師匠が地竜を狩ってきたはいいけど解体できなくてな。あぁ〜オリハルコンも鍛治場もない。 ごめん」


素直に話す拓哉。


「こりゃ〜忙しくなるわい。 ちと時間を貰うが全て作ってやるんじゃ。 そん代わり酒と飯は期待しとるぞ」


「本当にいいのか?助かるよ。 夜は金貰うけど、朝と昼飯は無料で出すよ。あと風呂は俺の家のを使ってくれ。 使い方はあとで教える」


等価交換として拓哉は食事と風呂を提案する。


「風呂は助かるのぅ。それで引き受けてやろう。 あとはスピリタスを毎朝1瓶頼む」


ちゃっかり酒も要求するバルト。


「わかったよ。それなら安いもんだ。じゃあ俺からは要らない魔物があればくれないか?」


こちらもちゃっかり要求する。


「魔物か...ここじゃ金も手に入らんしええじゃろ。 渡してうまいもんに変わる方がええわい。 契約成立じゃ。早速やっていくわい」


そう言うバルトに対して拓哉は、よろしくと言ってトレーニングを再開しようとした。 だがその時、頭に声が響き渡る。


『聞こえとるか?』


えっ?えっ?と声を出して首を振る拓哉。


『ワシじゃ!神様じゃよ。 お主の頭の中に直接話しておる。 お主も心の中で言葉を念じてみぃ』


神様? それに心の中で念じる?こうかな!?


『これで届いてますか?』


『そうじゃそうじゃ。 早速ですまんが、お主に贈り物があってな。 目の前に今から送る所以受け取ってくれ』


神様急に贈り物って!?なんですか?


そう拓哉が思っていると、目の前に九本の尻尾がある狐のような動物が現れた。


へっ!?まさか有名な九尾!?


『お主の考え通り九尾で合っとる。 昨日、日本の神に会ってきての。拓哉の生い立ちやここで頑張ってることを伝えたら応援したいと言われてな。 こいつを連れて行けと言われたのじゃ』


いきなり連れて行けか...見た目はかわいいけどデカイな。 しかも日本の伝承では、九尾って悪い妖怪だったような...

とりあえず鑑定するか!


鑑定!!


種族 神妖狐(幼体)


魔法 火魔法 風魔法


スキル 幻術 完全支配 威圧 人化 状態異常無効 error(成体時解放)


概要 伝承とは異なり神獣である。 完全支配下に置かれた者は抗うことができない。


"神からの伝言"  私からの贈り物です。いかなる時も貴方を守ってくれるでしょう。九狐を大切に育ててくれることを願っています。 いつか遊びに行かせて貰います。 貴方の第二の人生に幸あらんことを!


あちゃ〜神獣なのね。 しかも能力強すぎませんか? 俺が支配される心配はないのか? しかも日本の神がいつかくるのかよ。神様自由過ぎない!? とりあえずお礼だな。


『神様! 日本の神様にありがとうございますとお伝えください。 来る時はできれば一報を入れてくれるようにお願いしますとも』


『ほほほ。わかったのじゃ。 しっかり伝えとくでの。 ではまた近いうちに遊びに行くからの』


お〜い、また来るのかよ! 本当に自由な神様だ。  それよりもキョトンと見ている九尾様に話を聞かないと。


「えっと、初めまして。 ここで暮らしてる拓哉だけど、日本の神様から君がきた理由とかは聞いてるかな?」


一応話しかけたけどそもそも喋れるのか?


「あるじ。初めまして。名前がないからあるじにつけてもらいたいんだよ? 理由は守るように言われたのとしっかり言う事を聞きなさいって」


話せるのか。マジか!神獣凄いな。

ふむ、鑑定通り守護的な感じか。 あとはしっかり言う事を聞くか...まぁ逸脱した事をしないってことなら助かるな。 あとは名前ねぇ〜


「名前だけど九子は?」


激しく首を横に振る九尾。


「じゃあコン子」


更に激しく首を横に振る九尾。


そのあともこの猛攻が何回も繰り返され。


「ハァハァハァなら桜花(おうか)だ。桜の花のように綺麗で全員を魅了できるような人になれって意味だ。どうだ!?」


おうか?おうか!?桜花! 何度も呟き気に入ったみたいで首を縦に振る。


「まぁ合格かな。にしてもあるじネーミングセンスなさすぎだよ。 僕じゃなかったら怒ってるからね」


そりゃどうもすいませんでしたね。 こちとら誰にも名前つける機会すらなかった万年独り身のおじさんですよ〜だ。不貞腐れる拓哉だが、あることに気づいた。 今こいつ僕って言ったよな? 男の子なのか?


「桜花って男の子か?」


バチーン!!尻尾で頬を殴られる拓哉。


「僕は僕は女の子だ〜」


そう言って人型に変化した桜花。


そこには巫女衣装をきたオレンジ色のモフモフ尻尾にかわいい狐の耳。髪はオレンジショートで頬を膨らませたかわいい女の子?がいた。


「イタタタ! 驚いた。本当に女の子だったのか。ごめん。許してくれ!?」


まさかの僕っ子かよ!初めて見たわ。 かわいいからアリだな。


「流石に僕も怒るよ。プンプンだよ。 でも僕は大人だから今回だけは許してあげるよ」


ヤバい!かわい過ぎないか? 


拓哉は新たな扉を開こうとしていた。


「かわいい桜花に許してもらえて嬉しいよ。今後は気をつけるから」


「僕かわいいかな?えへへ」


グゥ〜


お腹が鳴る桜花。


「ん?お腹空いたのか? なにか用意しようか?」


バチーン!!またもや殴られる拓哉。


「あるじのバカ〜!!」


桜花の声が響き渡るのだった。 デリカシーのない拓哉である。

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