第39話 狐はやっぱり油揚げがお好き!

平手打ちを食らった拓哉は地面に伏せている。

大声を聞きつけてバルトと小次郎がやってくる。


「なんじゃ今の叫び声は?」


「拓哉、何故伏せている? それにこの娘は誰だ?」


バルトと小次郎は現状を把握出来ずにいる。


「イテテテ。 桜花悪かった。ってバルトに師匠!どうしてここに?」


やっとバルトと小次郎がいることに気づく拓哉。


「大声が聞こえてきたんじゃ」


小次郎もうんうんと頷く。


「そりゃ悪かったな。 どう説明すればいいかな? まぁとりあえずは新しく住むことになった桜花だ。何者かは夜に話すよ」


「ワシはドワーフのバルトじゃ。ここに家を建てて住むことになっとる。よろしく頼むのぅ」


「俺は小次郎だ。俺もあの小屋に住んでるからよろしく頼む」


「僕は桜花よろしく。 男の子じゃなくて女の子だよ」


みんなが挨拶をする。 桜花はやっぱり男の子を根に持っているようだ。 どうにか許しを得ないとと思う拓哉だった。


「がっははは。そういうことじゃったか。拓哉は女心をわかっておらんのぅ。どっからどう見てもかわいい女子(おなご)じゃ」


「本当にな。師匠として情けない。女心も勉強する必要があるな」


「そうだよ。2人はわかってるね。 拓哉はもっと相手の気持ちをわからないとだよ」


みんなに責められる拓哉。


「あぁ〜悪かったよ。どうせ恋愛経験の少ない俺なんかわかりっこないですよ〜だ」


開き直り不貞腐れる拓哉。


「がははは。不貞腐れよったわい。 でものぅ拓哉は悪いやつではないからの...桜花今は許してやってくれんか?」


「師匠の俺からもお願いする。こんなやつだが真面目なやつだ。 許してやってくれ」


「うぅ〜これじゃ僕が悪いみたいじゃないか。 ほんと〜に今回だけだよ。 許すけど拓哉はもっと女心を勉強だよ!?」


2人に言われて許す桜花。


「いや、俺こそ悪かった。ごめん! これから気をつけるようにする」


不貞腐れていたが、確かに性別問わず同じ対応をしていたなと思う拓哉は反省するのだった。少しバツが悪くなり話題を変えようと拓哉は話し出す。


「とりあえず昼も近いし、飯にしようか?桜花は好物はあったりするか?お詫びって程ではないけど出来るものなら作るから」


「ん〜油揚げが好きだよ」


「よし!それならきつねうどんだな。3人とも手を洗って席に座って待っててくれ」


そう言うと拓哉は厨房へ向かう。3人は手を洗いに行く。


流石に、今から油揚げ仕込めないしな。 せこいけどネットショッピングで京都の油揚げと九条ネギを買ってうどんは讃岐を購入。 何故京都の油揚げかと言うと、出汁と調和する油揚げだからだ。


まずは、油揚げをコトコト15分くらい煮て味を付ける。うどんの出汁は関西風に仕上げて、讃岐うどんと油揚げと九条ネギを入れたら完成。(めちゃくちゃ端折りましたがお許しを)


厨房からホールに行く拓哉。


「みんなお待たせしてごめん。 関西風きつねうどんお待たせしました。では頂きましょう」


「う〜ん!?これはどう食べればいいんじゃ!?パスタと同じかのぅ?」


「確かにパスタより太いし、食べ方が分からんな」


ズルズルズル


「こんな感じで啜って食べてみてください。 うん、コシがあってもっちりしててうまい」


見よう見まねで食べ始める2人。


「がははは、ちょっと啜るのが難しいが、こりゃいけるのぅ。 もちもちした麺に程より弾力。 初めての食感でうまいのじゃ」


バルトはうどんの食感がお気に召したようだ。


「麺もいいがスープもいい。 優しいのに何故かしっかりとした風味や味わいを感じる。 何故か懐かしい感じがするな」


火乃国出身ということもあり、出汁に関しては思入れがあるのだろう。口に合ってよかった。


問題は桜花だ。 さっきから一心不乱に揚げだけを食べている。


「そんなに油揚げうまいか?」


「この油揚げおいしいんだよ。 出汁が染み込んでしっとりして素晴らしいよ。京都風に言えばこれこそ【おあげさん】だよ」


すっかり油揚げを気に入ってくれたみたいだ。


「それだけ油揚げが好きならご当地の油揚げで作った料理を今夜にでも作ってやるよ。 そろそろ油揚げ以外の麺も食べてみろよ」


油揚げは全国各地にあり、その地域によって味も大きさも食感も違うのだ。 せっかく好きならいろんな油揚げを食べさせてあげたい。


「あるじそれは名案だよ。 ふふん、桜花は幸せだね。全国の油揚げを制覇できるんだから。 あるじ、讃岐うどんはやっぱりおいしいのだよ。もちもちシコシコ他のうどんにはないね」


「ははは、気に入ってくれてよかったよ」


すっかり機嫌が治った桜花は笑顔で食べているのだった。


「気になったのじゃが、桜花はワシらが知らんことをよく知っとるのぅ。 きょうとふうにおかげさんじゃったか?拓哉との共通点も多そうだわい。 それに相当強いのぅ」


まぁ真横で話していたし聞こえるのは仕方ないけど、バルトはこういうのには目ざといな。


「あぁ〜出身が同じだからな。 その辺も今夜話すよ。 俺1人だと信用してもらえないだろうし、師匠ともう1人ヴァレリーさんが居れば話もスムーズに行くしな。 あと無いとは思うけど絶対喧嘩はするなよ。一生日の目を拝めなくなるからな」


本当はまだ数回しか会っていないバルトには話したくないが、神様がこのタイミングで送ってくるということはバルトは大丈夫だということだろう。 信用が置けるなら仲間は多い方がいいしな。


「まさか...あのお方が関わっているのか?」


小次郎か聞く。


「そうですね。 だからこそ知っている方が多い時に話したいのです」


「わかったわい。気になるが、大層なことのようじゃし夜まで待つわい」


バルトはこれ以上聞いても今は何も出ないと感じ諦める。


「そうしてもらえると助かる。 バルトそのかわりではないけど、昼からの建築に精が出るようにスピリタス1瓶渡しておく」


まさかこのタイミングで渡されるとは思っていなかったバルトは。


「がははは、拓哉わかっておるのぅ。 やる気がでたわ。 鍛治工房もすぐ作ってるから期待しておくのじゃぞ」


すっかり桜花のことはどうでもよくなり、スピリタスを呑みながら出て行くバルト。


「俺も食後の運動がてら魔物狩りをしてくる」


小次郎も出て行ってしまった。


「みんな出て行ってしまったな。 桜花はこの後、何か用事があったりするのか?」


「別にないよ。 ん〜あるじを守るくらい」


「じゃあ風呂の使い方と桜花の新しい服を選ぶのと夜の油揚げの仕込みとか一緒にやろう」


服は変化時に好きなように生成できるのになと思う桜花だったが、拓哉が楽しそうに話すからいいかと思うのだった。 それよりも油揚げの仕込みのことで頭がいっぱいになる。


「油揚げ!? あるじ早く油揚げの仕込みをするの。早く行くんだよ〜」


「わかったわかった。油揚げは逃げないし先に風呂と服な」


それを聞いて頬を膨らます桜花。


「ぶぅ〜先に油揚げがよかったよ。 絶対油揚げ忘れちゃダメなんだよ」


「わかったわかった。ははは」


その後、洗い物を済ませて2人で家に向かうのだった。

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