第32話 王国のバカ貴族と精神崩壊したS級冒険者!
魔王一家が帰宅した2日後の朝のこと。
「師匠!お疲れ様です。初日に比べたら剣が馴染んできた気がします」
師匠とは火の国からきた小次郎である。 数日前から店の近くに平屋を建てて住んでいる。
「俺の剣は、刀を主体にした物だから基本しか教えられないがな。 出来れば刀があればよいのだが...ない物は仕方がない」
「アニカも家の周り50周終わったの」
アニカも最近では軽々50周を終わらせる体力をつけていた。
「偉いな。 そろそろ別のトレーニングも考えないとな」
そう話していたらラリサから「お風呂沸いてますからそろそろ入ってください」と言われた。
交代で入浴して、外の風に当たろうと家の前に出ると店の入り口に人影が見えた。
拓哉は近づき声をかける。
「すいませ〜ん。お客様でしょうか?」
急に声をかけたからか。護衛らしき人が剣を向けてくる。
「誰だ!お前は?」
目つきが悪いやつが、いきなり凄い口調で言ってくる。
「俺はここの店主だ!急に声をかけたのは悪いが、いきなり剣を向けてくるとか危ないじゃないか?」
そう言うと1番前にいた。性格の悪そうな顔をした貴族らしい男が口を開く。
「貴様が急に声をかけてきたのが悪い!わざわざ私が出向いてやったのだ。ここの権利を私に譲り立ち去るがいい」
いきなりきて何を言っているんだと思う拓哉。
「あのなぁ。急にきて権利を譲れだ。何様だよお前。 それに後ろにいるのはアドルフだよな。アドルフが何故お前のようなやつを案内したのか謎なんだが!?」
以前きたアドルフという冒険者に間違いないのだが、目が虚でおかしいと察する拓哉。
「貴様〜この私に向かって何様だと!私はマルクス王国の男爵だぞ! 偉そうな口を聞きやがって! ロイス!こいつに言うことを聞かせろ」
「はい!カスト様」
カスト男爵が命令すると、ロイスが魔道具を出して拓哉に向ける。
「ゲハハハハ。初めから言うことを聞いていればいいものを、私に逆らうからこうなるのだ。 これで私も子爵を通り越し伯爵になれる」
下賤な笑いをするカスト。
「あの〜なんかしたか?そろそろ正当防衛で反撃していいか?」
精神操作の魔道具を拓哉に使ったのだが、スキル冷静沈着が働いているので全く意味はない。(私久々の登場ですね!by冷静沈着)
「キ・サ・マ〜!何故効かんのだ〜!精神破壊する程の魔道具なのだぞ〜。おのれおのれおのれ! お前達アイツを殺せ〜」
冷静さを失ったカストが30人の護衛に命令し、拓哉を殺そうとする。
「悪く思うなよ。お前がカスト様の言うことを聞いていれば生かしておいたものを」
「ぐへへへ。痛ぶって殺してやるよ」
盗賊みたいなことを口走るなと思う拓哉。
「ありがとうございます。カスト様。これで心置きなく正当防衛と言えますよ」
貴族に正当防衛は通じないだろうが、大義名分を得た拓哉は徹底的に潰すと誓う。
「その減らず口をすぐ叩けなくしてやるわ。お前達殺せ〜」
それを合図に一斉に斬りかかってくる護衛。
ボコッ グチャ ベチャ グチョ グチュ グチャ
拓哉は30人全てを殴り爆散させる。
「なななな...なんなのだ〜貴様は...」
あり得ない光景を目にしたカストは、尻もちをつき後退りする。
拓哉は目を光らせ言う。
「俺はこの店の店主ですよ。カスト様。ではでは、カスト様もそろそろ準備はいいですね」
にじり寄る拓哉。
「貴様!私は男爵だぞ!こんなことしてタダで済むと...ギャー」
言い終わる前に両足を踏み潰す拓哉。
「うるさいですよ。カスト様。人を殺そうとしたりアドルフの精神を崩壊させたり、やられる覚悟があるからしたことでしょ?今更なにを言ってるのやら」
容赦ない拓哉。
「ふぅひふぅひ...やめでぐれぇ〜金ならやるがら〜だのむ〜」
必死に命乞いをするカスト。
「いや〜無理ですね。 どうせ国王に有る事無い事言ってまたくるんでしょ。それなら今殺して魔境の魔物にやられたことにした方が楽ですから。ではさようなら男爵」
グチャッ
なんの躊躇いもなく爆散させる拓哉。
後ろから声がかかる。
「拓哉終わったのか? 加勢できなくて悪かった。拓哉なら大丈夫だろうと思い、子供達を守ろうと家にいた」
子供達が飛び出して人質になっても邪魔だろうと思い、小次郎が子供達に言い聞かせていた。
「お父さん大丈夫ですか?」「パパ大丈夫?」
拓哉を心配する娘達。惨状を見ても狼狽えないのは魔境でのキマイラ事件があったからだ。
「師匠助かりました。ラリサ アニカ。俺がこんなやつらに負けるわけないだろう。世界最強の父親兼料理人だからな」
小次郎は人を爆散させる親父兼料理人はお前だけだろうと思うのだった。
ラリサとアニカは強さを知ってるからか抱きついて甘える。拓哉は抱きついた2人の頭を撫でる。
「それにしても拓哉。派手にやったな」
「問題の種を放置するより潰さないと娘やお客様に被害が出ますからね。 幸い魔境なので、魔物に殺されたとなるでしょう。死体はアイテムボックスに入れておいてあとで魔物の餌にしましょう。 それにしてもいい防具と剣と金が手に入りそうです」
そう言いながら拓哉は、戦利品を漁り死体をアイテムボックスに入れて行く。
それを見ながら小次郎は、絶対敵に回したらいけないと思うのであった。
「それにしても魔道具を回収したは良いけど、アドルフの精神破壊を解除する方法がわからないな」
一瞬魔道具を破壊しようか考えたが、何に作用するかわからず止めた。
「ここまで精神が破壊されれば、高位の神官かそれに相当する者以外には治せないだろう」
「う〜ん!?とりあえずヴァレリーさんに相談してみるか。それまで寝かせておこう」
汚れたからもう一度シャワーを浴びて、朝ご飯を作ろうと考える拓哉だった。
今回のことの始まりは。
アドルフに薬草を依頼して帰ってくる所を待ち伏せして殺す算段であったカスト男爵だが、酔っ払ったアドルフをヴァレリーが王国まで送ったことにより暗殺者はヴァレリーに始末され失敗に終わる。 子飼いにしていた暗殺者が殺されたことにカスト男爵は激怒し、アドルフへ報奨金を渡すという口実で屋敷に呼び精神魔法をかけて全てを聞き出す。 拓哉の家には結界があり魔物が近づかないことを知ったカスト男爵はそこを拠点にして資源を採取して、国王に利益をもたらし爵位を上げようと考える。
更に腹の虫が治らないカスト男爵は精神破壊の魔道具を使いアドルフの精神を崩壊させて、全てが終わり次第魔境で殺す計画を立てていた。
ことごとく計画を潰された哀れな男爵である。
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