第31話 後編! 魔王は浮気を疑われた!家族で餃子作り!
「皆さんまずは、ニラとキャベツをみじん切りにしましょう。最初に私が切るので見ててください」
お手本としてみんなの目の前でみじん切りをする。それを見てから、各々みじん切りを始める。
「うむ。これはなかなか難しいな。細かくするだけと思っていたが大変だ」
「お母様上手ですね。私なんかキャベット(キャベツ)を切る時、ツルンと滑っちゃいます」
「昔お婆様に習った事があるだけよ。 ベアもすぐうまくなるわ。 ちゃんと抑える手を猫の手にしなさい」
魔王一家がなんだかんだで、わちゃわちゃ楽しんでいる。
「アニカは、危ないからお父さんと一緒にやろうな」
まだアニカは小さい為、拓哉はアニカの後ろに回りフォローするように、拓哉が包丁を握りながら切っていく。
「パパ切れたの! ザクザクして楽しい」
初めての調理を楽しむアニカ。
「うまいぞアニカ。でも危ないから左手を注意しながら切るんだぞ」
「お!ラリサうまいじゃないか。 スムーズだし、危なげもない。初めてなのに凄いな」
「えへへ。毎日お父さんの料理姿見てるもん。 これからはお父さんを手伝うんだからね」
最近は褒めたりして気が緩むと、ラリサも敬語ではなく普通に話すようになってきた。
手伝いをしてくれる娘...嬉しいじゃないか。グスン
そんなこんなしていると、上手い下手はあるがみじん切りが出来上がる。
「次はみじん切りにした野菜をボールに入れて、塩を振りかけてしなしなになったら、全員絞ってください。水分が残るとべちゃっとしたマズイ餃子になりますから」
ボールに野菜を入れて塩をかけて数刻待つ。
「しなしなになりましたね。では水分が出なくなるまで絞ってこちらの乾いたボールに入れていきましょう」
ギューギューギューと各々絞り始める。
俺の個人的な意見だが、餃子が美味いか不味いかは焼きも大事だが、この絞り作業で決まると思っている。
具がネッチョリな餃子は食いたくない。
「お父様...まだ湿ってますがこれ以上絞れません。どうしましょう?」
「ははは。お父さんに任せなさい。ウリャウリャウリャ! ほらパサパサになったぞ。これからも困ったらすぐ言いなさい」
久々に頼られたのであろうヴァレリーは、ウキウキしながら変な奇声を上げ絞っていた。
「お父様凄い!ありがとうございます。 でもその奇声はやめてください。気持ち悪いです」
「グフォッ」
娘の気持ち悪い発言にまたしてもダメージを食うヴァレリー。 横ではヴィクトリアが苦笑いしている。
「パパいっぱい出るの〜」
「アニカ絞り過ぎ!身体強化使っただろ? このくらいでいいからな」
驚いたよ。パサパサ通り越して圧縮されていた。 6歳児の身体強化恐るべしだな。
「アニカは凄いね。私...力無いから全然絞れないよ」
ラリサは苦戦してるみたいだな。 年齢を考えたらそれが普通だから。
「ラリサ気にしなくていい。人それぞれ得意分野と苦手分野はある。 ラリサは切るのが得意でアニカは力仕事が得意。分担すればいいだけだよ。 最初から全てできる人はいないから」
落ち込むラリサを慰める。 すぐに「はい」と答えるラリサ。 本当にうちの娘は素直でいい子だな。
「皆さんある程度、絞れたみたいですね。このお肉に調味料を加えて混ぜていきましょう」
「拓哉様、ねちゃねちゃして気持ち悪いです。手も凄く匂います」
ベアトリスが、凄い不快な顔をする。
「はは、確かに最初は気持ち悪く感じますよね。 でも毎日ベアトリスさんが食べている食事はこうやって作られているんです。 意外に大変でしょ?作る人は、食べてもらう人においしく食べてもらいたい一心で作ります。そう思うと気持ち悪いとかなりませんよ」
「そうだぞベア!お腹が満たせているのは、そういう者たちがいるからこそだ。感謝すれど気持ち悪いなど言ってはいけない」
父として珍しく威厳を見せるヴァレリー。
「そうですね。申し訳ございません。 帰宅しましたら、しっかりと使用人に感謝の言葉を伝えます」
当たり前過ぎて今まで考えたこともなかったベアトリスが、改めて使用人のおかげで生活できていると認識して感謝をする。
「そうね。帰宅しましたら私たちが料理を作り日頃の感謝を込めて振る舞いましょう。いい考えだわ」
いやいや!魔王一家が作るとか言い出したら使用人も部下も気が気ではなくなるぞと思う拓哉。
「そろそろ絞った野菜も加えて、しっかり混ぜましょう」
「パパ楽しい。みんなで料理作り幸せなの」
アニカが楽しそうに言う。
「そうですね。お父さんこないだ言ってたお菓子作りしたいです」
今回の料理で少しずつ興味を示し始めた二人。
「そうだな。2人が興味を示してくれた事は嬉しいしやろうか」
拓哉が返事をすると2人は「わ〜い」と言う。
「拓哉様お菓子作り私も参加してもいいでしょうか?」
上目遣いで尋ねるベアトリス。
「う〜ん!?ヴァレリーさんとヴィクトリアさんの許可があれば構いませんが」
そう返事をすると、2人に承諾を求めに行くベアトリス。
「俺は構わないぞ。拓哉は信用できる人物だしな。ヴィクトリアもよいな?」
「えぇ。かまいませんよ。そのままベアを貰っていただいても構いませんわよ拓哉さん」
ヴィクトリアが爆弾を投下する。
「いかんいかんぞ。娘はまだ14歳だ。拓哉わかっておるな。手を出せば...あ痛タタタ」
「お父様もお母様も何を言っているのですか!?お菓子を作りに行くだけです。 拓哉様も困っております」
顔を真っ赤にしたベアトリスはヴァレリーの頭を叩いて言う。
その光景を笑いながら見る拓哉。
「やっと終わりに近づきましたよ。 この丸い生地の真ん中に、具を乗せてこんな感じで包みます。やってみましょう」
ヴィクトリアとラリサは上手いこと作っていく。
「うぉ〜はみ出してしまったぞ」
「お父様〜私もむにゅっと出ちゃいました」
「折っていくの難しいの」
ヴァレリーとベアトリスとアニカは苦戦しているようだ。
形はまちまちで不恰好な物もあるが出来上がった。 家庭料理なんだしこれで十分だと思う拓哉。
「よ〜し!あとは焼いて完成だぞ。 2回目からは焼いて貰うけど、最初は焼くのを見といてくれ」
説明しながら焼いていく拓哉。
「そろそろいいか? 酒と何かくれないか?」
タイミングを見つけた小次郎が言う。
「小次郎さんすいません。 放ったらかしでしたね。 餃子焼き終えたら一緒に食べましょう」
「おっ!いいのか?焼き始めてから、凄くいい匂いがして食べたかったんだ」
「小次郎とやらすまんな。是非食ってくれ。 それにしてもいい匂いだ」
「本当にいい匂いがしますわね。楽しみだわ」
「もう少しだな。酒を呑む人、手をあげてくれ」
ヴァレリーと小次郎とヴィクトリアが手を挙げる。
「よし!みんなは手を洗ってきてくれ。ラリサとアニカ悪いけど、ビールを入れるの手伝ってくれ」
それぞれが「は〜い」と言いながら奥へ行く。
戻ってくるといい感じに焼けていたので、皿に移す。
羽根付きの茶色の綺麗な焦げ目が付いてパリッと焼けていた。
「うわぁ〜おいしそうなの」
「綺麗ですし凄くいい匂いがしますね」
「早く食べたいぞ!拓哉」
みんなが食べたいと欲する。
大人達にはビール 子供達にはジュースを配る。
「では皆さん飲み物は行き渡りましたね。このタレにつけて食べてくださいね。ではカンパーイ」
みんなも乾杯と言い飲み物を飲んでから、餃子を食べ始める。
「おぉ〜拓哉うまいぞ!外はパリと中からは肉汁が溢れてくる。ビールにも合う」
「本当においしいわ。ガァリック(ニンニク)がいいアクセントになっていいわ。 野菜の甘さもあっていいわね。このビールも冷えてておいしいわ」
「おいしいです。普段食べてる食事よりおいしい。 拓哉様が用意して頂いたこのタレも凄く合います。 少しピリと辛くて食べた事がない味がします。 でも美味しすぎて手が止まりません」
魔王一家がそれぞれ感想を言いながら食べる。
「凄くお肉の濃い味がして、ガァリックとしょうがと野菜がより旨味を引き出してます。後味もしっかり口に残るのに、嫌みが全くありません。ライスに合いそうですね」
相変わらずの上手い食レポをするラリサ。
「パリジュワ〜でおいしいの。キャベットが甘くて、肉汁も凄くてずっと食べていられるの」
アニカは相変わらず食いしん坊だなぁ。
久しぶりに誰かと一緒に作ったりしたけど、楽しいしおいしいものだな。
「あ!それと餃子はダイエット...痩せる食事にはもってこいと言われてるからね」
それを聞いた女性陣は貪るように食べるのであった。
でも食べ過ぎたら太るからと言おうとしたが、獰猛な野獣の目をした女性陣を見た瞬間一言も発することができなくなった。
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