第30話 前編! 魔王は浮気を疑われた!家族で餃子作り!
昨日から住み着いた小次郎は、朝早くに起きて剣を振っていた。 拓哉は前々から剣の師匠がほしいと思っていたので、小次郎にお願いしたところ、すんなりOKをもらった。 毎朝稽古をつけてくれるそうだ。
小屋!?どこがと言いたい、木造の平家をアイテムボックスから出す小次郎。 トイレはなんとスライムに排泄物処理をさせるらしい。異世界だなと感じた。
あとは色んな種族のお客様がくるから、喧嘩を売るようなことはしないでくれと伝えた。 でも火乃国の人は差別はしないし大丈夫だろう。
なんだかんだ時間が過ぎて開店の時間となった。 小次郎は店の隅で、刺身と日本酒で晩酌をしている。
18時
ラリサとアニカが看板を出しに行く。
「お父さん、ヴァレリーさんがきてます。あと綺麗な女性2人も」
「本当かぁ!?久々だな。にしても女性?だれだろう?」
そう考えているとヴァレリーと噂の女性2人が入ってくる。
「久しぶりだのぅ。元気そうでなにより。それより紹介したい人がおる。 妻のヴィクトリアと娘のベアトリスだ」
「お初にお目にかかります。いつも旦那がお世話になっております。 妻のヴィクトリアと申します。以後お見知り置きを」
「お初にお目にかかります。 お父様がいつもお世話になっております。 娘のベアトリスでございます」
優雅な所作で改まった挨拶をされるが、こういうことになれていない拓哉はドギマギする。 ヴィクトリアはワインレッドの髪に、透き通った白い肌、目を大きく王妃にふさわしい美しさだ。 ベアトリスはヴァレリーと同じ赤い目に金髪で母親譲りの透き通った白い肌に大きな目、美人というよりは幼さがまだ残る可愛らしい見た目だ。
「え〜っと、憩い亭で店主をしております拓哉と申します。 この子達は娘のラリサとアニカです。よろしくお願いします」
これで合っているかわからないが、とりあえず挨拶をする。
「ラリサです。よろしくお願いします」 「アニカです。よろしくお願いしますなの」
「かわいい! ラリサちゃんとアニカちゃんていうのですね。お姉ちゃんのことはベアって呼んでくださいね」
ベアトリスが2人を抱きしめながら言う。
「それくらいにしてあげなさい。お2人が困っているじゃないの」
ヴィクトリアが諌める。
「お母様申し訳ございません。あまりにも可愛かったもので」
「そうね。確かに可愛いけど、急に抱きつかれたら誰でも驚くでしょ。ちゃんと謝ってから2人に話しかけなさい」
ベアトリスは2人に謝り、仲良くお話ししたいことを伝える。 ラリサとアニカが拓哉を見て、仲良くしていいのか目で訴えかけてきたので承諾する。
許可を得た2人はベアトリスと仲良く話し始めた。
「ヴァレリーさん、最近ずっと来られてなくて心配していましたよ。 ラリサも魔法を見てほしいって言ってましたし、今日姿を見れて病気とかではなく安心しました」
それとなく話を振る拓哉。
「すまんな。毎日でも拓哉の飯を食いに行きたかったのだが...何日も家族と食を共にしておらんくてのぅ。 浮気を疑われる始末、心配をかけたみたいで申し訳ない」
ヴァレリーは回想する。
思い返せばひどかったな...決め手は父上と呑みにきた日! あのあと父上の家に泊まったはいいが、起きたのは夕方で帰宅するのも億劫になり、夜は憩い亭でご飯を済ませて帰宅。 魔王城に着いてみると半壊した魔王城とズタボロな部下達。 まさに父上の二の舞であった。 それから誤解を解くのと魔王城の修繕に部下の治療などに数日を要し今に至る。
ヴァレリーは2度と妻に内緒事はしないと誓った。
「アナタがいけないのですよ。 コソコソと毎晩お出になる夫を疑わない妻が居ると思って? それに以前から言おうと思ってましたが、「のぅ」と言う語尾全然似合いません。やめてくださらないかしら」
「お父様、私も前々から似合わないと思っておりました。 まだ見た目の貫禄もないのにおやめ下さい。恥ずかしいです」
「グハッ」
妻と娘からの攻撃に胸を抑えながら倒れ込むヴァレリー。
店の片隅では、小次郎が伏せながら笑いを堪えていた。
「えっと、私も違和感があると思っていましたし、一層口調を普通にしては如何ですか? 口調を変えずともお強いですしカッコイイですよ」
拓哉が追い討ちをかける言葉を言い、ヴァレリーのHPは0になる。 だが拓哉はヴァレリーに小声で「奥様と娘さんの理想になれば、また尊敬される父に成れますよ。まずは口調からです」そう言うとヴァレリーは、徐ろに立ち上がり「拓哉、そうだな。感謝する」と言い元気を取り戻した。
なんて単純なんだと思う拓哉。
「早速だが、うまい料理を作ってくれないか? 妻と娘にも拓哉の料理を味わってもらいたい」
ヴァレリーが言う。 だが拓哉はそれに対して提案する。
「ヴァレリーさんとヴィクトリアさんベアトリスさんご提案があります。 高貴な方に言うのは忍びないのですが、もしよければ家族で料理を作ってみませんか? 意外に面白いですし、自分で作った料理はおいしいですよ」
何故か突拍子もないことを提案する拓哉。
理由は昔拓哉が幼少期の頃、親は共働きでなかなか一緒に過ごすことができず、唯一休日に家族で一緒に料理を作る時が幸せであった。料理の際は、家族が笑い合えるひと時であり家族なのだと再認識させてくれるものだったのだ。 それを思い出して提案をした。
「おいおい!私は料理などしたことないぞ」
「アナタいいではないですか。 こんな機会滅多にありませんよ。 お言葉に甘えてみんなで料理しましょうよ!?ベアもいいわよね?」
「でも私も料理なんかしたことありません」
3人が話し合う。
「今回作るのは餃子という簡単な料理です。具材を捏ねて、皮で包んで焼く!それだけです。 私もラリサもアニカもやりますからみんなでやりましょう」
「うむ、拓哉がそこまで言うならやってみるか。ご指導を頼む」
すっかり本来の口調にしたヴァレリーが言う。
「私からもご指導よろしくお願いしますね。拓哉さん」 「できるかわかりませんが、頑張ります。拓哉様お願いします」
ヴィクトリアとベアトリスも言う。
「よし!材料を用意してくるからラリサとアニカは3人を洗面台に案内して手を洗ってきてくれ。 お客さんもいないしここで作業をしよう」
は〜い!と言って3人を奥に案内するラリサとアニカ。
拓哉は材料をネットショッピングで購入して、小次郎のお代わりの酒と食べ物を作りホールに戻る。
始める前に3人には汚れるといけないので、エプロンを渡して付けてもらった。
ヴィクトリアさんは出来る美人奥様。 ベアトリスはかわいい看板娘。 ヴァレリーは、顔はカッコいいのだが、ツノ有りの魔王様のエプロン姿はシュール過ぎる。
「では皆さんお料理を始めましょう」
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