第15話 チョロいん→ヤンデレ予備軍?
最近1人になる時間では、僕は必ずと言っていいほど図書室に通いつめている。その度に葉隠さんと打ち解けてきたのか、前よりあまりオドオドとした口調が減ってきた。
葉隠さんはライトノベル以外にも、様々な本を読んでおり、図書室に置いてある本も全て制覇したそうだ。
図書室は基本僕と葉隠さんの2人しかおらず、よく雑談などしたり、おすすめの本を聞いたりしている。どうやら彼女の一推しはミステリー短編小説らしい。
話もスムーズで、トリックも多数扱われ飽きないそうだ。
「そういえば今更だけど葉隠さんって何クラスなの?同級生だよね?」
「あ、はい。えーっと私はDクラスですね」
Dクラスということは琴美さんと同じクラスか。琴美さんの口からは一度も出てこなかったな。
「そうなんだ。僕は一応Cクラスだけど、普段は教室の隅っこにいるかパシリ扱いなんだよねぇ。葉隠さんもクラスではどんな感じなの?」
「……………」
ああーやらかしたかもしれません。葉隠さんの雰囲気が急に暗くなった。何か下向いてボソボソ呟いてるし。
昔からこうなんだよなー。よく千尋先輩とかに『奴隷君ってホント、デリカシーのかけらもなければ、人として9割終わってるよね』なんて言われるくらいだし、僕ってもしかしなくても俗に言う『KY』何だろうか。
「……私、この学校で話せる友達なんて1人もいなくてクラスでいつもぼっちなんですよね。あまり人前でも上手く話せるタイプじゃないですし、何だったらみんな私の存在に気づいてないっていうか。最後に誰かと会話したのなんて、先週のペアワークくらいですかね。あはは……」
非っっっ常に不味ーーい!!葉隠さん全然顔が笑ってない。ネガティブな思考が加速している。考えろ!考えるんだ隷園日鐘!!
今彼女をフォローできるのは僕しかいない!
「葉隠さんだってすぐにクラスで友達の1人や2人できるって。例えば今クラスで流行ってる話題について話すとか」
「私そう言ったコミュニティなくて、皆が何を話してるかよくわからないんですよね」
「遊びに誘ってみたり」
「私、運動とかゲームがあまり得意ではなくて」
「…お昼の弁当のおかず交換してみたり」
「そんなことができるなら、今頃親友がたくさんいてもおかしくなかったんですかね」
はーい、失敗しましたー。慰め下手くそかよ僕。こうなったら僕が誰か友達になってくれそうな人を紹介するしか……
ゴトッ
「っ!!…危ない!」
「…っ!!?」
どシャン!
「怪我はないですか!どこか痛いところとかは?」
「//あ……大丈夫、です」
「本当ですか?少し顔が赤いようでうすけど」
「き、気のせいでしゅ!」
あ、今の噛み方可愛い。じゃなくて!
いやーびっくりした。急に本棚の上から本が詰まれた段ボールが落ちてきたんだから。何はともあれ葉隠さんが無事でよかったよかった。
「あ、そうだ。さっきの話の続きなんだけど葉隠さん」
「な、何でしょうか?」
「いっそのこと、僕と友達にならない?」
「へ?」
「というか、もうすでに僕の方では勝手に葉隠さんのこと友達だと思ってたんだけど…」
ぽろっ
「え?」
「へ?あれ?何で私涙が……?」
「………ぐずっ」
「!?」
「ぐすっ、何も僕と友達になるのが嫌だからって、まさか泣かれてしまうとは」
「!!?ち、違いますよ。これはそういう涙じゃなくて、私そんなこと言われたの生まれて初めてで、だから、何だか嬉しくなって、それで……私、今生まれて初めて嬉し涙を流してしまいました」
「そ、そうなの?僕が嫌だからとかじゃなくて?」
「そんなこと、ありません。」
涙ぐむ彼女は、どこか儚く、そして怯えているようだった。
僕は今の葉隠さんのような目をした人を見たことがる。きっとこの人は、誰かに裏切られた恐怖を知ってしまっているのだ。
「大丈夫ですよ」
「……っ!?」
「僕はあなたを決して裏切ったりしません。葉隠さんが信じられなくても、僕がずっと信じ続けます。だって僕は奴隷であると同時に友達だから」
「…ひくっ、ぐすっ、…う、うわぁぁぁん!!」
ひたすら僕の胸で泣きじゃくる葉隠さん。それをとにかく安心させるよう、僕は優しく彼女の髪を撫でた。
◇
葉隠side
私も小学生の頃は今のような性格ではなかった。友達もたくさんいたしよく外で遊んだりもしていた。
中学に上がってからも最初は楽しい日々が続いた。けど、そんなある日変な噂が流れ始めた。
『葉隠羽美は、援交をしている』
私はそれを必死に否定した。けれど私のことをよく思っていない生徒も同調したらしく、噂はどんどん広まった。
そうして始まったイジメ。それもだんだんエスカレートしていき歯止めが効かなくなっていた。
時間が経つにつれ、私の周りの人も気づけば向こう側にいた。
そんな私を唯一支えてくれた女子がいた。その子は親友であり幼稚園からの幼馴染みだった。
けれど私はある日、いじめっ子どもと親友が楽しそうに話しているのを見かけてしまった。
唯一信頼していた親友は陰で私のことを嘲笑っていたのだ。
しかも噂を流した黒幕も親友であった。
後になって聞いた話だと、どうやらその親友の好きな人が私に惚れていたらしい。
たまたまその男子に告白され、振っていたのを親友に見られていたらしい。要するに嫉妬が原因である。
私は人間不信になりかかり、中学後半からは人を避けるようになった。空気に徹しよう。そうすれば傷つくことはない。
そう自分に言い聞かせ、誰かと目心を合わせないよう前髪もその当時に伸ばし始めた。
けど、やはり一人ぼっちというのは寂しい。だが、人を信じるのも怖い。結局現状維持を保ち私は今日もそしてこれからも空気として生きていくのだろうそんなことを考えていた。
彼に会うまでは……
◇
ある日の昼休み、1人の男子が図書室を訪れ、3冊のラノベを持ってこちらに向かってきた。そこで男子はカウンターでピタッと止まりキョロキョロし始めた。
係の仕事を放棄するわけにもいかず、私は何とか自分の存在に気づかせた。
その時男子が驚きの声をあげたので、私もつい小さい悲鳴をあげた。
そこでふと男子の持つラノベに目をむけ、ポロッと言葉を漏らしてしまった。
そしたらいつの間にか、語り合うことになってしまった。
5分くらい話したろうか。私は何だかテンションが上がってしまい、長話をしてしまった。
その男子とは何故か話しやすかった。ちゃんと私の目を見て会話してくれている。たったそれだけだというのに安心感がある。
言われてやっと気づいたが、鎖をつけた男子生徒というのはかなり有名でまさに目の前にいるこの人のことかと思った。
隷園日鐘。不思議だけど、どこか安心する変人。それが第一印象だった。
それから、隷園君は図書室を訪れるようになり、話す機会も増えていった。何より驚いたのは、自分がこんなにも生き生きとしていることだった。
しかし、彼が私について触れた途端急に気分が落ちてしまった。できればそんな話はしたくない。後ろ向きな、弱い自分が表に出てくるから。
すると、いきなり隷園君に強く引き寄せられた。
(え!?な、何!?わ、私今彼の胸元に……男性の体ってこんなにゴツゴツしてるんだ……じゃなくて!!何興奮してるのよ私!)
どうやら隷園君が私を守ってくれたようだ。真剣な眼差しで心配してくる彼。そんな凛々しい姿がギャップとなり余計に心拍が上がってしまう。顔が暑くてしょうがない。
私の安全を確認すると、彼はまた別の意味で私驚かせた。
そのことに嬉しいと思う反面、どうしても一歩が踏み切れなくなってしまう。そんな自分に自己嫌悪していると、彼が私の頭を優しく撫でてくれた。
そして彼の言葉が私の不安を一気に消しとばしてくれた。まだあって数日の関係。だというのに、『この人なら裏切らない。』私の中の何かがそう確信していた。
◇
彼と友達となってからというもの、どうも最近の私はおかしくなっている。いつも彼のことばかり考えて、それがたまらなく幸せであったり、ちらちらとむけてくるHな視線に喜んでしまったりと、まるで変態のようだ。
でも、悪い気はしない。
「……あ」
偶然廊下で彼を見かけた。後ろからバッと驚かせてやろうと思い近づいたが、先に別の女が彼の腕に抱きついた。
……は?なんだあの雌は?
何気安く私の王子様に触れているのだろう。
汚らわしい、汚らわしい、汚らわしい!!!!!!
早く駆除しなければ。ああ、待っててください。王子様。
私があの卑しい雌豚からあなたを解放して見せます。その時はたくさん、愛し合いましょうね❤️
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます