第13話 寒気

五十嵐家の玄関に立っている女性。そいつは正真正銘、僕にこのループという名の呪いをかけたあの女だ。

この女の力ははっきり言って異常すぎる。存在そのものが神や悪魔なんて言葉では言い表せられないほどで、彼女にできないことなんて無いに等しい。

実際にもこうして事実を改変し、今では五十嵐家の家族の一員である。

一体今度は何を企んでいやがる。


「……///❤️そんなに熱い視線で見つめられると何だか照れてしまうわ」

「は?」


どうやら僕がこの女・・・真白を睨みつけているのを彼女は勝手に見つめていると解釈した。

すると僕の隣から禍々しい負のオーラを撒き散らしている琴美さんがハイライトの無くした瞳で睨みつけてきた。


「まさかすぐ隣にである私がいるというのに、その彼女の姉に一目見ただけで欲情するだなんて。今すぐ日鐘を殺して、私も死ぬわ。来世でまた会いましょう」

「いやいやいやいや!!誤解だから!とにかくそのどこから出したのかもわからない包丁をしまって!」


 ◇


何とか誤解を解くことができ、今僕は五十嵐家のリビングの食卓に座らせてもらっていた。五十嵐夫婦から、せっかくだし夕飯を一緒に食べようと誘ってもらい、お言葉に甘えることにした。


今日の五十嵐家の夕飯は豪華な料理がたくさんで、まるでバイキングのようだ。

座席は、僕の両隣に琴美さんと真白が向かい側に五十嵐夫婦が座っている。


「久しぶりねぇ、真白。それに日鐘君の元気な顔も見れて嬉しいわ」

「また背が伸びたんじゃないか?育ち盛りなんだし遠慮せずにジャンジャン食べなさい」

「ありがとうございます!それじゃあ、

「「「「「いただきます」」」」」


どの料理も美味しそうで何から食べるか迷っていたら、隣の琴美さんがメンチカツが差し出してきた。


「はい、あーん」

「パクリ。もぐもぐ、ごっくん。これ美味しいですね」

「ふふっ。お口にあってよかったわぁ」

「ほら彼氏君。こっちの春巻きも美味しいよ、あーんして」

「はい?」

「むっ」

「「おやおや〜」」


今度は真白の方から、春巻きを差し出してきた。流石の予想外の行動に、ただただ困惑した。


「ちょっと姉さん。日鐘は私の彼氏なのよ。何ちょっかいをかけているのかしら?」

「これくらい良いじゃない。それにって見ていると何だか母性をくすぐられちゃうのよ」

「確かにその気持ちは激しく同意するけれどそれとこれとは話が別よ。あと、さりげに今名前呼びしたわね。まだ、私は姉さんに許可した覚えはないのだけれど」


何だか、2人して僕を挟んでお互いに口論が始まった。この場を収めることのできる唯一、頼みの綱である五十嵐夫婦に助けてもらおうと救いの眼差しを向けたのだが、何だかニヤニヤしてこちらを見ているような。


「あらあら、あの男の影が微塵も感じられなかった真白が珍しく御執心の様ね。今日はお赤飯かしらぁ」

「もういい加減社会人だというのに、彼氏の一つも報告がないから心配だったがその心配ももう必要ないな。わっははは!!」

「でも、日鐘君ってもう既に琴美の彼氏だしねぇ」

「ああーそうだった。だったらいっそ真白も日鐘君に貰ってもらうか。何処の馬の骨ともわからんやつより100万倍マシだ」

「良いんじゃないかしらぁ。真白も随分気に入ったようだしねぇ」


何好き勝手言ってくれちゃってんのぉ〜〜〜!!!!!

つーか、あんたら親だろ。もっと自分の娘大切にしろよ!!


だ〜もう、滅茶苦茶だ〜〜〜〜!!!!!!!!



楽しい楽しい?食事も終わり日鐘がお暇したその後、琴美の部屋で久々の再会の姉妹での楽しい会話などではなく、主に琴美が尋問している感じだった。


「姉さん。本気で日鐘を狙っているの?」

「嫌だわ琴美。そんなわけないじゃない。可愛い妹の彼氏を取ったりなんてしないわよ。安心なさい」

「………」


表情を微動だにせず、真白は淡々と答え自分の部屋に戻っていく。だがいくらポーカーフェイスがうまかろうと心を読む琴美には通用しない。(例外はあったが)


(我が姉ながらとんでもない嘘つきね。けどいくら姉さんが小細工しようとも無駄よ。私と日鐘の間に介入する余地なんてないわ)

(なんてことを考えているのだろうこの娘は。けどこの女がいくらそう思おうとも、彼の心は別の意味でぐらつき始めている。彼が私のものになるのも時間の問題だわ。ふふっ、今からでも楽しみだわ。……ああっ❤️駄目。彼とのセッ○○を考えただけで体ができあがちゃう❤️日鐘の子種が欲しくなっちゃう❤️ああ〜早く日鐘に堕とされたい❤️身も心もぐずぐずになるくらい日鐘に溶かされて、一生私だけを見てほしい❤️んっ///)


自室で絶頂に達した真白。日鐘と接触したからいつも彼女はこうである。

無機質で無感情だったはずの彼女は、日鐘との妄想だけで既に快楽に支配されていた。





一方その頃、日鐘はというと


「ぶるっ。何だか凄い寒気がする。風邪かな?早く寝よっと」



____________________


あとがき


多分セーフですよね(汗💦












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