第10話 変化し始める日常

あれから1週間が経過し、ようやく謹慎から解放された。久々の学校で緊張というよりも不安という方の気持ちが強かった。僕が自分の教室に入った途端、一瞬クラスの皆が僕を見たがすぐに目を逸らした。


「ねえ、きちゃったよ。あの奴隷」

「暴力沙汰を起こしたってのに何で呑気に学校に来れるんだよ」

「最初からヤバいやつだとは思ってたけど、洒落になられねえ」


ヒソヒソと聞こえる僕へのヘイト。まぁこんな風にはなるんだなあと予想していたけれども


そんな中、周りの目など気にせずに僕にズカズカと近づいてくる男子がいた。


「よぉ久しぶりだな奴隷やろう。またこき使ってやるぜ」


この男は「葛杉亜駆斗(くずすぎあくと)」。髪は金髪に染め、前の大学生達とタメを張れる位の筋骨隆々の体格を持った同じクラスのザ・定番のような不良だ。

授業はサボるし、他人の彼女にちょっかいをかけたりと良い噂を聞かない嫌われ者。僕もつい最近までは彼の奴隷もといパシリにされていた。(酷い時はストレス発散に殴られたりもしたが…)

それにしても今日は一体何のようだろうか


「聞いたぜ奴隷。お前、あの五十嵐琴美を助けたんだって。調子に乗んなよ」


ドゴっ


近づいてきた葛杉に僕は頬を殴られた


「ったく、何でその時俺を呼ばなかった。んん?俺が琴美を助けていれば今頃恩を売れてたってのによぉ。お前はだろ?だったらお前は大人しくご主人様に役得を譲れよ。そんでお前はそんな俺を指を咥えて見てりゃ良いんだよ。ははっ!」

「ふーん、この私に恩を売ろうだなんて良い度胸ね」


ザワッ


どこからともなく聞こえた凛と透き通るような声。長い銀髪を靡かせ僕のクラスの前に現れたのは件の彼女。五十嵐琴美だった。


「それとね野蛮人、私はあなたに下の名前で呼ぶ許可を与えた覚えはないわ。それとあなたの言葉には間違いがるわ。彼はあなたではなく私の、よ。2度とそんな不愉快な言葉を吐かないで」


五十嵐さんは見上げる形で葛杉を睨みつける。しかし葛杉はまるで物怖じせずに気安く話しかけた


「そんな怒るなよ琴美。第一こいつがお前の奴隷だって?やめとけやめとけ、こんな弱っちい奴より俺の方がお前を守ってやれるぜ」

「守る?冗談でしょ。その彼より弱いあなたが私を守るだなんて笑い話もいいところだわ」

「何?俺がこいつより弱いだと?」


ピキッと葛杉の額に血管が浮かび上がる


「てめえ、ちょっと顔がいいからって調子に乗んなよ。所詮女なんて黙ってこの俺に従ってればいいんだよ‼︎‼︎」


葛杉が五十嵐さん目掛けて拳を振り下ろそうとする。が、今の僕の主人は五十嵐さんだ。彼女を傷つけるなら、容赦してやる理由がなくなった。


僕はすかさず間に入り込み葛杉の拳を正面ではなく、側面に力をあて軌道を逸らした。そのまま体制が崩れた葛杉にすかさず膝蹴りを入れ、葛杉は倒れた。


「かはっ……⁉︎」


おそらく今の葛杉は呼吸ができず苦しいのだろう。僕はそんな彼にしゃがんで近づき、耳元でそっと一言だけ呟いた


「次は殺す」


葛杉は顔面蒼白になり、泡を吹いて気絶した。先生が来る前に証拠隠滅しなければ。


「ふふっ、よくやったわ。それでこそ私の奴隷よ」


その後で五十嵐さんが褒美だと言わんばかりに僕の頭を撫でてきた。何だかこそばゆい気分だ


「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉx‼︎」」」

「「……っ⁉︎」」


その光景を目にしたクラスの皆は突然大声を上げた。男子達は何故か悲しみだし、女子はキャーキャー騒ぎ始めた。


この日がきっかけとなり、僕は五十嵐さんの専属の奴隷だとういことは学校中にあっという間に広がった。


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