第9話  誓

その後五十嵐さんを解放した後、そのまま警察へ連絡した。僕たち2人は事情聴取され、手を出してしまった僕は謹慎1週間を食らった。


それから翌日、五十嵐さんが僕の家にやってきた。


「どうして僕の家の場所がわかったんですか?」

「先生にプリントを届けると言ったら、あっさり教えてくれたわ。そんなことより今日はあなたにいくつか聞きたいことがあるからここへわざわざ来たのよ」

「まあ、そんなことだろうと思いましたよ」


ちなみに僕の家は家賃が安いからという理由で選んだボロい団地の一室だ。部屋には生活の上で必要最低限なものしか置いておらず狭い。そんな空間に美少女と2人きりと言うのは、何かこう変な気分になってしまう。


「生憎あなたの期待するようなことは万が一にも起こらないわよ、このサイコ奴隷」

「さらっと人の思考読みますよね。で、何を聞きたいんですか?」


僕はさっさと問題に入ることにした。


「そうね、まず聞きたいのは何であなたが私のいる場所がわかったのか、と言うことよ。一応私の予想では、あなたがストーキンg」

「してませんから。第一それなら攫われる前に助けてますって。五十嵐さんの場所がわかったのは千尋先輩のおかげです」

「千尋さんの?」

「はい。ぶっちゃけると先輩も五十嵐さんと同じ能力者です。それが『この世で起きた全てを知る』みたいな力で、それで五十嵐さんの場所がわかったんです。あ、それと五十嵐さんが飛び出した後先輩すごく落ち込んで「また悪い癖が出てしまった。何でいつも余計なことを…」ってすごく落ち込んで謝罪したいと言っていたので、後で話してあげてくれませんか。先輩のLIME渡すので」

「構わないわ。あの時は私の方も自分勝手で謝りたかったの」

「それを聞けて安心しました。それで他に聞きたいことは?」

「そうね。他に聞きたいことと言えば、あなたはなのかしら?あなたのその再生力は尋常じゃないわ。あの時にはすでに傷跡すら消えていたのもの」


こちら側…か。ここで嘘をつくのは簡単だがそう言うわけにもいかない。ていうか意味ないし


「……半分そうですけど、半分は違いますね。何でと聞かれても今は答えられません」

「……そう。わかったわ。だったら次の質問よ。どうして私を助けたの?」

「……はい?え?どうしてって言われても………」

(私をどうして助けたのか。自分でも何を聞いて、なんて返して欲しいのか知らないけど、私はどうしても彼に聞きたかった)


数刻の沈黙の後、ようやく彼は口を開いた


「そうですね、強いて言うなら五十嵐さんがとても良い人だからですかね」

「どう言う意味?」

「前に初めて五十嵐さんと会話した日。あの時五十嵐さんは僕のことを一方的に知ってるって言ってましたけど実は違うんです。僕も前から五十嵐さんのことを知ってたんです。例えば、読書しているとき感情が顔に出やすかったり、誰もやりたがらない花壇の世話を毎日1人でやっていたりとか、みんなは冷たい人なんて言ってるけど五十嵐さんって本当は噂とは違って、もっと接しやすい人なのかな……ってすみません。急にそんなカミングアウトされても気持ち悪いですよね」

「……だったらあなたは私が前みたいにまた危険な目に遭ったのなら、助けてくれるのかしら?」

「はい。僕の命を賭けてでも」


この気持ちに嘘偽りはない。むしろ彼女みたいな人に尽くせるのならいくらでもこの身を差し出したいと僕からお願いしたいくらいだ。


「……それならなる?私の奴隷に」


…またこの人はサラリと思考読んでくるよ。ま、答えなんて決まってるけど


「はい。今日からこの身をあなたに捧げます」


そしてこの日。僕は彼女の奴隷となった



「今日のところはこれでお暇するわ。また来週ね。

「……えっ⁉︎」


そう言って五十嵐さんは僕の家をあとにした。ていうか今初めて僕の名前を呼んで… 僕は様とかつけたほうがいいんだろうか



五十嵐side


帰り道今私は最高の気分だ‼︎

あの時の彼の言葉に嘘はなかった。それは心を読んだからこそ絶対と言えよう。

彼は本当の私を見てくれる‼︎‼︎しかも彼は私が主人だったら良いのにとさえ思っていた。


つまり私と彼は両思い!


ここまででもう察しはついたと思うが私はついさっき彼のことが好きになった。そして私はもう彼以外に好きになる人などいないだろう。今までずっと1人だった私にようやく信頼できる人ができた。しかも相手は奴隷。私を裏切るこなく、私だけに尽くしてくれる。

これを運命と言わずに何と呼ぶか!!!!!!


本当はあの時千尋さんの言う通り、私は内心怯えていたのかもしれない。けど、彼がいてくれるのなら。支えてくれるのなら。

もう他に何もいらない。


「ずっと一緒だからね。日鐘❤️」


その日の彼女の瞳は以前より優しくなったがその分、狂気を含んでいるようにさえ見えた


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき

早速ヤンデきましたね。次で第一章は終了です





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る