第7話 冷たい瞳

五十嵐side


「…う、うう………」

「お、やっと目ぇ覚めたか。待ってたぜ〜、お嬢ちゃん♪」


目が覚めた私は気がつくとさっき私にナンパしてきた大学生の男達に囲まれていた。おそらくどこかの倉庫だろう場所に連れ込まれたのだろう。口にはタオルのようなものを咥えさられ、これでは助けを呼ぶことはできないだろう。

そんな状況だと言うのに私は自分がびっくりするほど冷静だった。


「さあてと♪賢そうなお嬢ちゃんならこのあとどうなるか。察しはついてるんだろ?」


男達の中で最も体格がデカく、片目に傷を負った男が陽気な声音そう聞いてきた。おそらくこの男がこのグループのリーダーなのだろうと一目でわかった。一見チャラそうに見えるが、この中で喧嘩も一番強いであろう。戯けているように見せていながらもこの男の思考は、他のヤることしか考えていない猿どもとは違っていた。


「まっ、別に嬢ちゃんの意思とか関係ねえけどな♫よーしお前ら、もう我慢しなくていいぞ〜。ただし見た目に残る傷はつけるなよ」

「「「うおっしゃああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」」」


ぞろぞろと男達が近づいてきた。その視線はまるで体の隅々を舐め回すようで、かつての中学時代のころを少し思い出してしまった。


「んじゃ、さっきの順番決めジャンケンで勝った俺から。へへへ。まだ高校生だってのにけしからん胸だな〜」


グループでも小柄で気持ち悪い顔をした男が鼻息を荒くして私の胸に触れてきた。


「うひょおお。服の上からだってのにすげえ弾力」


胸を鷲掴み、弄り回した後でベタベタと体を触られた。


「おいチビ。控えが多いんだからさっさと番回せや!」

「そうだそうだ。さっさと終わらせて引っ込めや!」

「う、うるさいなぁ。わかったよ。へへへ、それじゃあ早いけどいただくとしようかな〜」


…ヤるならさっさとしてもらえないだろうか。何だかめんどくさくなってきた。どのみち私に拒否権など最初からない。助けを呼ぶのも逃げることも不可能。こんな状況じゃ心を読んでも無意味。

あーあ、私の人生って結局何だったのかな。信頼できる友人も恋人も作れず、見ず知らずの奴らに犯されるだなんて。

何で私がこんな目に遭わなければいけないの。それすら、もうどうだっていい。

私はそっと瞳を閉じて、残酷な現実を受け入れた


「へへへ。そんじゃま、いっただきま〜s」


グシャ


「「「え?」」」


さっきまで騒がしかった声が、急に静かになった。私は今度は何だと思い、目を開けてみた。


「……………… え?」


私の視界には頭から血が垂れ倒れている小柄な男が映った。しかし私が驚いたのはそこではない。


そこにはいるはずのない、男が。奥の倉庫の扉からゆっくりとジャラジャラと金属音を鳴らして、目を黒く濁らせてこちらに近づいてきたからだ。まるで奴隷のように。


「てめぇ。何もんだ?」


グループのリーダーである男はいち早く日鐘を警戒した。先程までのおちゃらけた姿とはまるで違い、低く威圧的な声音だ。彼の野生的本能がこの男は危険だと察知したからだ。


「僕はただの奴隷ですよ。そこで椅子に縛られている人のね。

先に言っておきます。お前らは1人たりとも逃しませんから」


私はそう言い放った日鐘のその冷たい瞳に何よりも驚きを隠せなかった。













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