第6話 五十嵐美琴の過去

昔の私は今のように冷たい性格ではなかった


私は小学生の頃軽いいじめを受けていた。日本では珍しい銀髪をクラスの皆は妖怪だ、怪物だと罵っていた。


中学になると顔つきも体格もみな一回り大きく成長した。私は特に体の発育が他の人たちより著しく成長し、男子は私に変な絡みをしなくなったり、また女子達は私のことをよく遊びに誘ってくれるようになった。この頃にはもういじめのことなど忘れて楽しく学校生活を送っていた。少なくともこの時の私はそう思っていた。



それから1年経って私は中学2年になった。その時期は女子達と恋バナなど盛り上がっていた頃だ。その時の私は、サッカー部のエースで学年一のイケメンと呼ばれる先輩に告白されお付き合いしていた。その男子は優しくとても頼りで、他の男子達より落ち着いた大人っぽさもあって自慢の彼氏だった。私もその先輩に可愛いと思われたくて、お化粧してみたり、ある日には弁当を作ってみたりといろいろ努力してみた。常に頭の中では先輩のことばかり考え、「先輩は私のことどう思ってるのかな?」と気になってしょうがなかった。


そんなある日のことだ。私の日常が狂い始めたのは…



その日は先輩と一緒にショッピングモールにデートをしに行ったときだ。私は先輩と手を繋ぎ、服を見たりしていた。この時だった。


(ああ〜早くこの女とHしてぇ)

「え?」

「ん?どうかした琴美ちゃん?」

「あ、いえ。何でも」

(チッ。めんどくせえな。何で俺がいちいちこいつの下手なんかに。だが、もう少しの辛抱だ。もう少しでこの極上の体が俺のもんに。グヘヘ)


ゾワッ


「…っ!すみません先輩。私急用を思い出したので先帰ります。この埋め合わせ必ずしますから」

「え、ちょっと。琴美ちゃん!」


私は先輩を放り出してそのまま帰宅してしまった



家に着いた私は急いで洗面所に向かった


「ウ、ウォエエエエエッ。ゲホッ…」


気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち値悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……


あの時聞こえたきみの悪い言葉。帰りの道中でさえ似たような言葉が私の頭の中を蝕んでいく。


私はとにかくその出来事を忘れたくて夕飯もまともに食べることができず、そのままベッドに横になった。明日になればきっとなくなっているだろう、ただの空耳だと言い聞かせ私は眠りについた。



翌日、私は普段通り学校に向かった。しかし、例の幻聴は治らずむしろ悪化しているのではないかとさえ思えた。


(今日も五十嵐さんエロいな〜)

(もう先輩とヤったのかな)

(チッ。お高くとまってんじゃないわよ)

(少し顔がいいからって調子に乗って)


ざわざわ ざわざわ


(何なの昨日から。頭の中が不快な言葉で埋め尽くされる。もう嫌‼︎)


私は気分が優れないと担任に伝え早退した



しばらく私は学校を休んだ。先輩とはメールのやりとりをしていて私のことを心配してくれた。一度親に頭痛がすると相談して病院に向かったのだが正常と診察され、特に異常はなかった。その日の夜のことだ。私はをこの時知ってしまった。


お風呂を出て2階にあがろうとした時、ふと声が聞こえた。


(今日は琴ちゃんの好きなシチューでも用意しましょうか。ふふっ。きっと喜ぶでしょうね)


おそらくママが独り言をこぼしてしまったのだろう。ほんの少しの悪戯心を含め、私は逆に驚かしてやろうと思った。

そして夕飯の時間。ママが私を呼びに部屋にきた。


「琴ちゃん。今日の夕飯は何だと思う〜?ヒントは琴ちゃんのす」

「シチューでしょ」

「きなもn…え?どうしてわかったの?」

「実はさっきママの独り言が聞こえてね。それでわかったの」

「え?独り言?私別に独り言なんて喋ってないわよ」

「え?」


どう言うことだ。確かにあの時ママの声が聞こえた。そういえば今思い返せば、最初に聞こえたあの幻聴、先輩の声だったような。


私の中で一つのあり得ない仮説が生まれた。それを確かめるべく、私はママにジャンケンの10本勝負を挑んだ。


結果、私の全勝だった。そして疑念は確信に変わった。


私は人の心が読めるのだと……



そこからの学校生活は酷く空虚に見えた。男子達の下卑た思想。仲のいいと思っていた女子達の醜い本性。そして何よりガッカリしたのは先輩もとい、ゴミ野郎。


あの後私たちの関係は破局した。納得いかないと最初はしつこかったが徐々に本性を表し襲おうとしてきた。私は自分の身を最低限守るため護身術を少し嗜んでいた。先輩はクソ弱く、すぐに半べそをかいた。こんなのが一時期とはいえ惚れた相手かと思うと、私の人生最大の汚点だ。


それから私は1人でいる様になった。もう上っ面の関係になど懲り懲りだ。そう、思っていたはずなのに。

高校に入学したばかりの頃、私は1人の男子とすれ違った。首と手首に鎖をつけた奇妙な格好をしていて、その瞳は何も映していなかった。


試しに何を考えているのか心を読もうとしたが、ノイズが走ったように聞き取れなかった。久々に人に少し興味を持った。


彼の心は読める時と聞き取りにくい時、何も聞こえない時があった。


私はもうすることのないと思っていた期待を1%くらいした。もしかすると彼なら私のになってくれるのではないかと…


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あとがき

マズイ、やらかした。

タグに基本ギャグとか言っといて、いきなりシリアス要素を出してしまった…

(あんまりひどいようなら変えないと…)

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