第4話 病

今のこの光景はかなり珍妙としか言いようがない。真紅の赤い髪を後ろで一つに束ねた美少女に対して鎖を身につけた不気味な少年が全力の土下座をかましているのだから。何事かと他の客たちも興味津々にこちらを注目しているが、真紅の髪の美少女が周囲を睨みつけ客たちはさっと顔を逸らした。


「ズビばませんでした。もう影口だだかないのでゆるじてください」

「うんいいよ。私はとても寛大だからね。けど、次やったらどうなるか、言わなくてもわかるよね?」


コクコク


「そうか。君のそういう素直で物分かりのいいところ、私好きだよ」


なんて言って僕の頭を撫でているが白々しい。何が寛容だ。さっきまで店を一旦出て路地裏で僕のことボコボコにしていたくせに。このクソ海女ッ‼︎なんて死んでも口に出せないけれど。

そんな僕の思考を読んだのか五十嵐さんは「こいつ屑ね」という目で僕を見るが今回はスルーさせてもらうとしよう。


「さて、役者も揃ったわけだし簡単な自己紹介をしようか。私は明石千尋(あかしちひろ)。そこの奴隷の先輩?腐れ縁?のようなものだ。気軽に下の方で呼んでくれて構わないよ」

「では千尋さんで。私は五十嵐琴美と言います。私のことは好きに呼んでくれて構いません」

「じゃあ琴美ちゃんで。これからも仲良くしようね」

「はい。よろしくお願いします」

「じゃあそろそろいいですかね。僕は…」

「いや、君の自己紹介はいらないだろ。もう知ってるんだし。それよりコーヒーを一杯持ってきてくれ。砂糖も忘れずにな」

「私の分もお願いするわ屑野郎。なるべく早めにね」


は?何こいつら。いくら僕が奴隷だからって何でも言っていいわけじゃないんだぞ。グスン


「わかりましたよ。少し待っててください」


僕はコーヒーを取りに席をたった


「取ってきましたよ」

「ああ、ありがとう。君たちの品もちょうど今きたとこだし早速食べなよ。私は読書して待ってるから」

「そうか。じゃあ遠慮なく

「「いただきます」」



「「ご馳走様でした」」

「思ったより早かったね。じゃあ早速話してもいいかな、琴美ちゃん」

「はい」

「まず琴美ちゃんのその心が読める力。それは極端に言えば’病‘だ」

「病…ですか?」

「そうだよ。私と奴隷君はその力を‘異能’と呼んでいる。そしてその力の源は紛れもない琴美ちゃん自身だ」

「どう言う意味ですか?」

「異能が発現するには強いストレスや願望、あるいはその人の先天的な才能が大きく影響する。琴美ちゃんが気づいてないだけで実際にその力を望んだきっかけがあるはずなんだよね」

「その点についてはひとまず納得します。何となくですが思い当たる節がありますから。ですが、肝心の治すにはどうすればいいんですか?」

「治すって言うのはちょっと違うかな。病といってもそれは琴美ちゃんの一部。消すことはできない。けど抑えることはできる」

「どうすればいいんですか?」

「超簡単。奴隷君が触れるだけでいい」

「は?ちょっとそこの能無し」

「何でございましょう」

「あなた、あの時今すぐには無理とかいっていたけれどあれは嘘だったのかしら?」


五十嵐さんがとてもじゃないが女の子らしからぬ顔をしている。


「ちょっと待ってください誤解なんです。千尋先輩も勘弁してくださいよ」

「あはは、すまない。確かに言葉足らずだったね。琴美ちゃん」

「何ですか?」

「君、本気で力を手放したくないと思ってる?」


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