第4話 不思議

「聞こえてないだろうけど喋りながらやるね?」

 真っ暗な部屋に二人の男女がいる。


 男は真っ黒なロングコートを羽織り、顔は闇魔法だろうか、黒いモヤモヤとしたものに覆われ確認することはできない。


 女は椅子に縛られている、薄い水色のロングヘアーであることから氷魔法を得意としているのだろう。

 目は黒い布で隠されており、体には縛っている縄が食い込んでいるため、かなりきつく縛られていることがわかる。


「僕はさ?こんなことがしたいわけじゃないんだ、でもこれは仕方ないこと…」

「計画を成功させるためには予行練習が大切だろう?本番で失敗しないことが重要視されているのだからね!」

「だ、か、ら!この国にはぐちゃぐちゃになってもらうよぉ〜」


 男はそう言いながら女の頭に手を置く。

「それでね?君にはこの玉を指定する場所に置いてきてほしいんだよ」


 ドプッという音とともに男の手が女の頭蓋骨を貫通し、頭の中に入り込む。

 その感触に反応するように女は身体をビクッと反応させる。


「指定する場所なんだけどね?〇〇と〇〇〇、それと〇〇〇〇〇にお願いしたいんだよね」

 そう言いながら男は脳を弄くり回す、そして手の動きに反応するように女は身体をバタバタと痙攣するように動かしている。


「これがなにか気になる?教えな〜い!!」

 目隠しは涙でにじみ、口からは涎を垂らしている。

 ポタポタという音とツンとした鼻を突くアンモニアの臭い。

 おそらく失禁をしているのだろう。


 男は申し訳無さそうに、

「いや〜ごめんね?君じゃなくても良かったんだけど、捕まえるのが楽だったから」

「ま、今回は君にこんなことしちゃったけどさ、次はないから安心してね!!」

「じゃあ、あとはよろしく…」


 男は目隠しと拘束を解き、女を自由にする。

 先程まではピクリともすることはなかったのにも関わらず、虚ろな瞳のまま動き出した。


 そして一言、

「早く帰らなきゃいけないわ」








「おめでとうございます!今回の試験は合格です」

 最初の受付の人とは打って変わって、とてもいい笑顔で合格を知らせてくれる。

「そしてギルドマスターに変わり、謝らせてください」

「もっと速い段階で止めることができず、申し訳ありませんでした」

 誠心誠意の謝罪、俺は特段気にしていたわけではないため、

「いや、自分で望んで戦ったんで、気にしないでください」

 あれは炎我がドームを破壊した段階で俺が負けを認めればそれで住んだ話、ギルドの問題ではない。


「宗くんが良いならそれでいいけど…宗くんももう無理しないでね?」


「お、おう」

 自信はなかった、おそらくまた俺は無理をするだろう。

 春もそれをわかっているのか苦笑いを浮かべている。


「そっか…次は私も一緒だからね?」

 この言葉で俺は極力気をつけよう、そう強く心に決めた。


「それではここからはお二人の冒険者ランクについて話させていただきます」

「まず春さんから、貴方は回復魔法の腕の良さからEランクからの開始となります」


 冒険者ランクはS A B C D E Fの7つある、Sが最も高くFが最も低い。

 春は下から2番目の開始だ。


「次は宗義さんですが、炎我さんとの模擬戦でその類まれなる強さを発揮したため、Cランクからの開始となります」


 Cランク、最初が高いのは喜ばしいことだ。

 俺はこれからSランクを目指すのだから。


「よし!これから頑張ろう、春」


「うん、頑張っていこうね!宗くん」


 この日から、俺達の冒険者としての生活が始まった。

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