第17話 異世界で僕はあらゆる法律を改訂しつつ妻を大事にする。

半年間の間に起きた事を大まかに話そう。


その一、異世界と現実世界の二拠点にて活動は相変わらず。

そのニ、レディー・マッスルでの功績により、異世界でムギーラ国王の相談役に任命される。

その三、マリリンの実家がレディー・マッスルに襲来。義弟と出会った。

その四、カズマは高校を卒業した。尚、進学せず海外を回ると言う事にした。

その五、異世界で猛烈イチャラブ夫婦として名を馳せている。



まず、異世界と現実世界での二拠点生活は相変わらずで、基本的には異世界にいることが多いけれど、現実世界にもたびたび帰省しては両親と会話したり、必要な物を買ったりしている。


更に、レディー・マッスルで行っている業務等がムギーラ王国に革命を起こしたとして、国王から相談役に任命され、マリリンの実の親である宰相様と会う事も多くなった。

そうなると、必然的にマリリンの実家とも会う事となり、まだ幼い弟さんは僕へ対し、ライバル宣言をしているのは生暖かく見守ろうと思う。


また、高校は卒業したけれど、進学をすることは無かった。

異世界にいることが多い為、海外を回っていると言う事にしている。


最後に、マリリンとの仲は良好だ。

ギルドの面子たちからも「夫婦仲が本当に良い」と断言される程である。



そんな二拠点生活をしながらの日々は、正直忙しい。

マリリンと共同で始めた食事処兼宿屋は大盛況。

庶民用の店もオープンさせ、定価価格で食べれるものを用意している。

一言でいうなら、お湯で温めるだけの料理最強ってことである。

湯煎料理はパスタやカレー以外にも結構豊富にある。

魚だって湯煎料理は豊富だったりするけれど、こちらは値段を高く設定している。

それでも人気の高い料理であることには変わりはないけれど、お陰様で潤った財源はムギーラ国王と話し合い、国の一部に使われる事となっている。

無論、レディー・マッスルが全額を出すわけでもなく、本当に一部ではあるが。


その結果、国民の中で、文字や数字を勉強することが義務付けられ、国としての知識的財産は一気に伸びた。

伸び悩んでいる地域、特に田舎の部分に関しては、週1必ず勉強する法律が義務付けられたこともあるが、農繁期に限ってはお休みとなっている。


また、新たな雇用も生み出した。

勉強意識が高い人物には教師として。

保育園を作り、雇用を上げることで働くママさんたちを増やした。

保育園では、既に子育てなどから引退した女性や、一部の若いママさんたちを雇用したが、働けば家の家事、主に洗濯ものが出来ないと言う声に、洗濯物は園に通う子供たちが遊び感覚で覚えてもらい、広い園庭には洗濯物がはためいている。


また、法整備も新しくした。

女性とは男性に虐げられても文句が言えない者。

と言う観点をぶち壊し、暴力などから逃げられるための国のシェルターを作り、保護と離婚に関するアレやコレを作った。

また、保護や離婚となった女性が危険な目にあわない為の法整備も進み、立場の弱い女性や子供が苦しまない様に法を整えたのはここ最近のことだ。


怒涛の日々が終わり、やっとゆっくりすることが出来る時間を確保できたカズマは、久しぶりに戻るレディー・マッスルの拠点を前にホッと息をつくことが出来た。

これで暫くは拠点でユックリと過ごしていいとのお達しが出たため、マリリンとの時間が作れると思うと少しだけ気持ちも上向きになる。




「ただいま戻りました」

「「「「「カズマ様逃げて――!!」」」」



戻ってきたばかりなのに、逃げろとはどういう事か。

隈のできたショボショボの目をこすり、前を見ると、両手に両手剣を持ったマリリンが鬼の形相で待ち構えていた。

一瞬、口から魂がでそうになるよね。仕方ないよね。



「カズマ――!!」

「ただいまマリリン!」

「いくら忙しくとも……婚約者である私を長らく放置したことは許し難い! 覚悟はできているだろうなぁ!!」



怒髪天である。

マリリンの雄叫びで、ギルドの窓が全て割れたが、そんなことは些末な事だ。

カズマはフラフラした様子でマリリンの元に歩み寄り、一瞬狼狽えた隙を逃さずマリリンを抱きしめた。



「あぁ……マリリン……やっと君に触れられる……」

「カ……カズマッ?」

「この国の虐げられていた女性と、罪のない子供達を守ることがやっとできたよ……。子供たちが一番の被害者だ……子供の泣き顔なんて見たくない……けれど、マリリンを悲しませたことは何よりの罪だ」

「――!!」

「マリリン、愛してる。僕を叱ってくれ……」



途端、カズマの顔面に大量の血が飛んできた。

マリリンが鼻血を出したのである。

慌てふためいた治癒師たちは急ぎマリリンに回復魔法を掛け始めたが、余り効果は無さそうだ。



「おお……罪なき子供たちの涙を止める為に……そのために頑張っていたのだな!! 私はなんて心の狭い婚約者なのだ!! よくよく見れば目の隈が酷い!! そこまで身体を酷使してまで……おおおおおおおお!! 我が夫よぉぉおおおおお!!!!」



今度は洪水のような涙がカズマの顔面に降り注ぎ、血は綺麗に流れた。

取り敢えず命の危機は脱したようだとカズマは安堵の息を吐いてマリリンに抱き着いた。



「今日は君を抱きしめて眠りたい……僕の我儘を聞いてくれるかい?」

「無論! 無論だとも!!」

「じゃあ一緒に行こう……二人でベッドへ入り、マリリンに包まれたまま眠りたい……」



そう言うとマリリンは米俵を担ぐようにカズマを抱え、ギルドの内部へと消えていった。

後に残ったのは静寂……。

そして、命の危険すらあったにもかかわらず、マリリンへの愛を通したカズマへの称賛の嵐が始まった。

割れたガラスを皆で片付けながら、「俺だったら殺されてたな」とか「流石カズマ様はマリリン様を愛していらっしゃる」等、皆が言いたい放題言っていることに関しては、最早放置だ。



「しかし、あの若さでムギーラ王国の相談役だろう?」

「ああ、レディー・マッスルがこの国の法律を変えているのは、カズマ様のお力だと聞いたことがある」

「マリリン様の旦那様は素晴らしい人だったんだな!」

「マリリン様! カズマ様! 万歳!!!」

「「「「万歳!!」」」」



こうして、彼らは隣にある宿屋兼食事処に行って、カズマとマリリンへ対する身内の宴を行い、お金を落としていってくれるのであった。



一方、マリリンとカズマの部屋では――……。

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