15
「お昼ですわーっ!」
雨宮こなたはリュックサックを揺らして委員長・小林の用意したビニールシートに座ると、リュックサックの中から黒いお弁当箱を取り出した。
さっき、自分の恥ずかしい言動が校庭に放送されたというのに、もう完全に立ち直っている。メンタル鋼か。
犬神ちはるもリュックサックから、コンビニのおにぎりを三個取り出した。
「ちはる? おにぎりの具はなんですの?」
「焼き肉カルビ焼き肉カルビ焼き肉カルビだ」
「全部同じじゃないですの! 三個買うならバリエーション豊かにすればいいのに」
「脳に無駄な情報を与えたくない」
「劣化してサイコロになっちゃいますわよ?」
「うるさいし、意味わかんない! おっぱいチラ見せこたな! わたしの遠藤を誘惑すんなよ!」
「なっ、それはもう終わったことじゃないですの! 今さら蒸し返す方がえっちですわ」
たった、十数分前のことなのに、雨宮の中ではもう完全に消化しきれてしまったらしい。
近くでカットフルーツを食していた女子グループが「「「はや〜」」」とこちらの会話をBGMにして、めっちゃ癒されている。
まあ、確かに変に落ち込まないところは光属性で可愛いと思う。
こなたはちゃっかり俺の隣に座って、犬神ちはるがますます不機嫌そうな顔になった。
「ハハッ、青春だなー」
小林はタッパーに入ったプロテインをごくごくと飲んで、バナナやシーチキンをむしゃむしゃ食べている。
炭水化物は少なめだ。
午後に予定されている5000mとクラス対抗リレーを意識してのことだろう。
俺もお弁当箱を広げて、いただきます、と食事を始めていく。
「遠藤〜、おにぎりむいて〜」
ちはるが甘えてきたので、コンビニのおにぎりに海苔を巻いてやる。
「えへへ、ありがとう。チューしてあげる」
俺の首に抱きついて、肩に大きな胸を押し当てて、ほっぺにちゅーとしてくる犬神ちはる。
頼めば恐らく、ちはるは唇を重ねてくれるだろう。
ちょっと興奮。
当然、雨宮はイライラしていた。すまない。
「え、遠藤くん。ハムチーズカツ、作ってきたんですの。よかったら、食べてください」
「え、いいのか?」
「はい。遠藤くん、チーズが好きって聞いたことあったから……。その、早起きして作りました。ほんと! おいしくないかもしれないけれど……。でも、食べてほしくて……。その、なんていうの、うえーっと……」
「ああ、うん。ありがとう、雨宮。どれどれ?」
ハムチーズカツは、惣菜で売られているものよりもずっと濃厚でおいしく感じた。
「おいしいよ、雨宮」
「ひゃんっ! んん……ふふっ!」
雨宮はニヤニヤデレデレしている。
ふつうに可愛いなと思ってしまった。
犬神ちはるがますますぷくーっとほっぺをふくらませる。
小林は「けっこうけっこう。少年少女の悩みは美しいな!」と林檎を丸齧りしていた。お前も一応少年だろうが。
そこで、犬神ちはるが俺のジャージをくいくいと引いてきた。
「遠藤。おトイレ」
「あー、うん。校舎までならついてくよ」
ちはるは涙目で俺の腕に抱きついて、これみよがしにおっぱいを押し当ててくる。
ふつうに柔らかくて気持ちいいし、興奮してくる。
小さく、「遠藤はわたしのものだ……」と幼馴染は呟いていた。
――――――
あとがき
次回はちはる回です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます