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「お昼ですわーっ!」


 雨宮こなたはリュックサックを揺らして委員長・小林の用意したビニールシートに座ると、リュックサックの中から黒いお弁当箱を取り出した。


 さっき、自分の恥ずかしい言動が校庭に放送されたというのに、もう完全に立ち直っている。メンタル鋼か。


 犬神ちはるもリュックサックから、コンビニのおにぎりを三個取り出した。


「ちはる? おにぎりの具はなんですの?」

「焼き肉カルビ焼き肉カルビ焼き肉カルビだ」

「全部同じじゃないですの! 三個買うならバリエーション豊かにすればいいのに」

「脳に無駄な情報を与えたくない」

「劣化してサイコロになっちゃいますわよ?」

「うるさいし、意味わかんない! おっぱいチラ見せこたな! わたしの遠藤を誘惑すんなよ!」

「なっ、それはもう終わったことじゃないですの! 今さら蒸し返す方がえっちですわ」


 たった、十数分前のことなのに、雨宮の中ではもう完全に消化しきれてしまったらしい。


 近くでカットフルーツを食していた女子グループが「「「はや〜」」」とこちらの会話をBGMにして、めっちゃ癒されている。


 まあ、確かに変に落ち込まないところは光属性で可愛いと思う。


 こなたはちゃっかり俺の隣に座って、犬神ちはるがますます不機嫌そうな顔になった。


「ハハッ、青春だなー」


 小林はタッパーに入ったプロテインをごくごくと飲んで、バナナやシーチキンをむしゃむしゃ食べている。


 炭水化物は少なめだ。


 午後に予定されている5000mとクラス対抗リレーを意識してのことだろう。


 俺もお弁当箱を広げて、いただきます、と食事を始めていく。


「遠藤〜、おにぎりむいて〜」


 ちはるが甘えてきたので、コンビニのおにぎりに海苔を巻いてやる。


「えへへ、ありがとう。チューしてあげる」


 俺の首に抱きついて、肩に大きな胸を押し当てて、ほっぺにちゅーとしてくる犬神ちはる。


 頼めば恐らく、ちはるは唇を重ねてくれるだろう。


 ちょっと興奮。


 当然、雨宮はイライラしていた。すまない。


「え、遠藤くん。ハムチーズカツ、作ってきたんですの。よかったら、食べてください」

「え、いいのか?」

「はい。遠藤くん、チーズが好きって聞いたことあったから……。その、早起きして作りました。ほんと! おいしくないかもしれないけれど……。でも、食べてほしくて……。その、なんていうの、うえーっと……」

「ああ、うん。ありがとう、雨宮。どれどれ?」


 ハムチーズカツは、惣菜で売られているものよりもずっと濃厚でおいしく感じた。


「おいしいよ、雨宮」

「ひゃんっ! んん……ふふっ!」


 雨宮はニヤニヤデレデレしている。

 ふつうに可愛いなと思ってしまった。


 犬神ちはるがますますぷくーっとほっぺをふくらませる。


 小林は「けっこうけっこう。少年少女の悩みは美しいな!」と林檎を丸齧りしていた。お前も一応少年だろうが。


 そこで、犬神ちはるが俺のジャージをくいくいと引いてきた。


「遠藤。おトイレ」

「あー、うん。校舎までならついてくよ」


 ちはるは涙目で俺の腕に抱きついて、これみよがしにおっぱいを押し当ててくる。


 ふつうに柔らかくて気持ちいいし、興奮してくる。


 小さく、「遠藤はわたしのものだ……」と幼馴染は呟いていた。


――――――

あとがき

 次回はちはる回です!

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