14
校舎裏に連れられた俺は、雨宮こなたに見つめられていた。
雨宮は今、半袖短パンのジャージ姿だ。
彼女は犬神ちはるとはちがい、どこまでも華奢でほっそりしている。
焦茶の髪の毛から覗く瞳は切長で、美しい印象のある女の子だ。
頭の中はアホだけど。
男子、女子共に人気が高く、けして屈しない心を持っていて、芯の強さもある。(アホだけど)
時々見せる、うれしそうな笑顔や、怒った時に顔に出てしまうところ、すなおな性格も女子からきゃわいいきゃわいいともてはやされている。
本人は全く気づいていないんだけど(アホである)
「遠藤くん」
雨宮は、暗い瞳でむすっと俺を見て言う。
「犬神ちはるの胸を生で見たというのは、ほ、本当ですの……?」
「大昔の話だよ。今のあいつのとはぜんぜんちがう」
「ふーーーん」
雨宮は、自分の胸をぺったりと両手で包む。
そして、ほっぺを朱に染めてこちらを見た。
「見たい……?」
「は?」
「遠藤くんが見たいなら。写真、撮ってもいいわ」
「な、なに言ってんだよ」
雨宮は、半袖の裾を短パンから出して、ペロリとめくって、白いお腹を見せてくる。
や、やばい。
とってもきれいだ。
ほっそりしている。
「わ、わたくし、遠藤くんにもっともっと、好かれたいの。わたくしのことを考えてほしいの」
「あのー、俺、雨宮に好意を抱かれるようなこと、なんかしたっけ?」
「優しくしてくれた」
「それだけ?」
「優しくしてくれた! 犬神ちはるは、お友達としてそばにおいているといいわ。それくらいなら、別にいいから。わたくしも、その、ちはるにはあなたが必要だと思うし。……その! あなたと話していると、楽しいの! 家に帰って、思い出すと、うれしくなるの! 幸せになるの! ちゅーしたいし、手も繋ぎたいし、いっぱいいろいろなところに、……ふ、触れてほしい! どこがおかしな発想ですの! 一番そばにいてくれた男の子が、優しくて、面白くて、か、かわいいなら! 恋人同士になりたいって、思っちゃうじゃない!」
雨宮は、真っ赤な顔で、白半袖をもっとペロリとして、白のスポブラを見せてくる。
「むーっ!」
「あ、雨宮。そ、その術は俺に効く……、やめてくれ……」
「やめない! わたくしのこと、もっと考えてほしい!」
「あ、あのー」
そこで、雨宮の背後の窓から、声が聞こえてきた。
雨宮がパッと半袖を元に戻して、驚いてそこを向くと、眼鏡の女子生徒が窓から顔を覗かせてこちらを見ていた。
「い、今放送テスト中ですので、そ、そろそろやめた方が……」
「「放送テスト中……?」」
俺と雨宮が首を傾げると、「はいぃ」と女子生徒は申し訳なさそうに言葉を続けてくる。
「視聴覚室から、校庭に放送しているんです。機材のトラブルで、試しにこちらのを使ってるんですよ」
「へ……?」
雨宮の顔がプシュ〜と真っ赤になっていく。
眼鏡の女子生徒は、こなたの手を取ってゆっくりと頷いた。
「あの、私は応援していますので。でも、あまり頑張りすぎないでくださいね……?」
「さっきのわたくしの声、校庭に響いちゃってたんですの……?」
「そういうことになります、はい」
「ぴえーーーんっ!」
雨宮が逃げていく。
校庭から彼女を応援する数多の声が聞こえてきた。
――――――
あとがき
いつも、応援ありがとうございます!
☆と♡がちょくちょく増えていって、日々の元気になっています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます