13

 結論から言うと、犬神ちはるの障害物競争は散々だった。


 ネットに絡まって出られなくなって、見物客に助けてもらい。


 バットを支えにぐるぐる回って、眩暈を起こして「うぷ」とお菓子を戻しそうになり。


 吊るされたアンパンを食べきれず、ぐずぐずと泣きながらゴールインした……。


 しかし、観戦していた全校生徒たちはもう大騒ぎで、きゃわいいきゃわいい、かわいそうはかわいいと沢山の写真を撮っていた。


 犬神ちはるは背が雨宮こなたの次にちっちゃいが、顔は整っていて、胸も大きい。


 その、庇護欲をそそるのだ。


 男子たちはちはるの胸の張りを見ないように目をそらしていたが、俺はバッチリ見てしまった。


 幼馴染の胸が弾むところや、ネットに絡まってお尻を上げているところ。


 女子以外、盗み見ようものなら俺が血祭りにする。


「びええ〜〜〜んんんん!!」


 障害物競争を終えた犬神ちはるが抱きついてくる。


 その速さで走ればいいのにと思ったが、よしよしと頭を撫でてあげた。


 むすっと、そこを雨宮こなたが不満気に見てくる。

 こなたは、俺とちはるがくっついていると、いつも不機嫌になるのだ。


 すると、こなたがてくてくてくと歩いてくる。

 そのまま、ギュッと俺の首に抱きついた。


「のわ! なんだ雨宮⁉︎」

「そろそろ、飽きてきた頃合いじゃない?」

「「はあ?」」


 俺と犬神ちはるは素っ頓狂な声を発する。

 雨宮こなたは、あろうことか、クニっと自分の小ぶりな胸を背中に押し付けてきた。


「女の子の胸って、柔らかさがちがうんですの。ちはるのは十分知ったでしょう。わたくしので楽しんでほしいわ」

「ちょ、雨宮⁉︎ どうしたんだよ、急に?」


 雨宮は、焦茶の前髪の隙間から涙目でこちらを見て、訊ねてくる。


「遠藤くんはどうしていつもわたくしに優しくしてくださるの? さっきもシャボン玉食べてくれたし」

「はあ?」

「面白いこと言って、笑わせてくるの? 夜に思い出して、うれしい気持ちになっちゃうの。どうしたらいいの? ねえ、ねえ!」


 雨宮こなたは涙目で詰め寄ってくる。


「ちょい雨宮⁉︎⁉︎⁉︎」

「わたくし、なんにもできないの。今回のクラスでも友達ができないと思っていたけど、遠藤くんが一番最初に話しかけてくれで。それがすごくうれしかった。あむあむ」

「肩を甘噛みするな、力が抜ける……」


 俺がへろへろになっていると、ちはるも倒れそうになった。


「おい、ちはる!」

「……ないくせに」

「なんですの?」

「こたなは、遠藤と一緒にお風呂入ったことないくせに!」


 かーっと雨宮の顔が真っ赤になる。


「わたしの胸はその時もうふくらんでたの。遠藤はえっちだから、ガン見したんだよ。わたしの勝ち」


 ちはるがあっかんべーすると――。


「遠藤くん」

「ん?」

「こっち来て」


 そのまま、雨宮に校舎裏へ連れられた。


 ――――――

 次回、こなたんがジャージを⁉︎

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