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「お題はなんですの! 答えなさい遠藤くん!」

「いや、答えるわけにはいかない! ついてこい!」

「オーボウですわ! こんなのオーーーボウですわ!」


 だって雨宮のやつ、身長の一番低い女子として連れてこられたら、絶対怒るもんな……。


「あー、こたな! 他のやつらもうゴールしてんじゃん! お前のせいで遠藤ビリになったろ!」


 犬神ちはるがお隣の友達を非難するも、雨宮こなたは意志を曲げない。

 こういうところが頑固だから困るんだよ、ほんと……。


「ジョートーですわ! 遠藤くんがお題隠すのが悪いんです!」

「あとのやつらがつかえるだろ、こたな! 大人しく遠藤についていって恥かいてこい! どうせ全校生徒の中で一番うるさいのは誰? とかだろ」

「はーーー⁉︎ だったらなおさらついていくわけには行きませんわ! 遠藤くんのバカ!」

「ぐぬぬ……」


 ちはるのやつも言いたい放題言いやがって……。ややこしくなるだけだ。

 そこで、委員長の小林が助け舟を出した。


「何も悪いお題とは限らないぞ、雨宮?」

「なんですって?」


 すぐに食いつく雨宮こなた、アホである。

 小林はにっこりと笑って告げてくる。


「クラスの中で一番元気でかわいい子を連れてこい! の可能性もあるな。わっはっは」

「ひあっ」


 あからさまに真っ赤になって、歓喜する雨宮こなた。

 ここは乗っからないわけにはいかない。


「そ、そうなんだよ雨宮。クラスの中でもとびっきり元気でかわいい子を連れてくるようお題に書いてあったんだ」

「え、そ、そうなんですね……。えっと、や〜ん、恥ずかし〜」


 じろーっと俺を睨むちはるの視線が痛い。

 しかし、雨宮宅に訪問販売に行ったら何でも買ってくれるだろうな。言いくるめやすいし。


「そ、それじゃあ遠藤くん……? 手を……」

「え、手? 繋いでいくのか……⁉︎」

「へっ? ハッ、いやあのそのえっと、ど、どうしよう………勘違いして、バカみたい……」


 しょんぼりして涙目になる雨宮。

 俺は気恥ずかしさが込み上げてきたが、彼女の手を取った。


「ちッ」


 舌打ちする犬神ちはる。すまん。

 雨宮の手を取って校庭を走ると、わーっと歓声が上がった。


「あの一年生の女の子、お姫様かしら?」「こたなちゃんかわいーっ」「じつはこな推しなんだよね? 一途っていうか……」


「あ、あの、遠藤くん……」

「ん……?」


 雨宮は小走りのまま、嬉しそうに笑った。


「幸せにしてくださいね……?」

「え〜〜〜っと」


 そのままゴールインすると、雨宮を微笑ましがる全校生徒の歓声の中、アナウンスが流れた。


『紅組、ゴーーール。お題は、「クラスの中で一番ちっちゃくてかわいい女の子を連れてくる」でした〜〜〜』


 何気、アナウンスでフォローされていた。

 背が低い女の子から、だいぶ表現がカジュアルになったナ。


「遠藤く〜〜〜ん⁉︎ ちっちゃいってなんですの〜〜〜⁉︎」


 むろん、ちっちゃいに反応して雨宮は飛び掛かってきた。

 ただただ受け止めると、また歓声が上がった。

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