9
「遠藤、いーっぱい応援するから、一位取ってね! 借り物競走!」
犬神ちはるは俺のお腹にぎゅーっと抱きついたまま、応援してきた。
俺は幼馴染の大きな胸の柔らかさや、甘ったるい香りにドキドキしながら、「あ、うん」と答える。
そこで雨宮こなたが焦茶の髪の毛を人差し指でくるくるしながら、仕方なさそうに聞いてきた。
「遠藤くん、足は速いんだから100m走に出たらよかったのに」
「100m走はうちのクラスじゃ人気種目だからな。ふつうはそうはならないんだけど。ほら、俺らのクラス変わってるから……。それにみんなが出たがらない種目に出るのって、面白いだろ?」
「ま、遠藤くんらしいわね。わたくしも応援してさしあげます」
俺のお腹に抱きついたままの犬神ちはるがぷくーっと頬を膨らませて、雨宮こなたを睥睨した。
「遠藤くんらしいわねって、こたなに遠藤の何がわかるんだよ」
「何がって、なんですの! わたくしは遠藤くんに好意を抱いているから、なんでもわかっちゃうんですー! ……好意っ?」
自分で言っておきながら、真っ赤になると、雨宮こなたは小走りになって、そばにいた小林の後ろに隠れてしまった。
雨宮はほんと……、なんだか憎めないやつである。
小林がニコニコしながら応援してきた。
「遠藤! 順位にはこだわらなくていいぞ。エンジョイするんだ。自分が楽しむことが大事だぞ!」
「100m走ぶっちぎりで一位だったやつが何言ってんだか……?」
俺は苦笑する。
そして、借り物競走が始まって、俺の番がやってきた。
「よーい――」
パンッ!
俺は走り出して、何を借りるのか箱からお題を引く。
「がんばえー、遠藤〜〜〜っ!」
「遠藤くん、ファイトですわっ! わたくしのために走ってくださいまし〜〜〜!」
「なんでお前のために走るんだよバカこたな!」
「だって、わたくし遠藤くんのことが……」
「え……?」
「わっはっは! こちらのことは気にするな、遠藤〜〜っ! エンジョイだぞ!」
何気、修羅場ってる気がするのだが、お題を見る!
『クラスで一番背が低い生徒を連れてくる』
「……って、なにやら嫌な予感が…………⁉︎」
俺は自分のクラスメイトたちがいる地点まで走っていく。
「あれ、遠藤がこっちにくるぞ⁉︎」
「遠藤くん、血迷ったんですの〜〜〜⁉︎」
「お二人さん、借り物競走だから、俺たちに用があるんだろう! わっはっは」
「「なるほど〜〜〜」」
俺は眉間に皺を寄せながら、例の少女に声をかける。
「おーい、雨宮〜?」
「なんですの?」
「俺と一緒に来てくれないか?」
「どんなお題ですの?」
「…………」
「なんで黙るんですの! 教えなさい! どんなお題ですの⁉︎」
つづく
――――――――
あとがき
皆さま、応援してくれてありがとうございます!
毎日、隙間時間にchill、楽しめるように、試行錯誤しながら書いています。
よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます