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「遠藤、いーっぱい応援するから、一位取ってね! 借り物競走!」


 犬神ちはるは俺のお腹にぎゅーっと抱きついたまま、応援してきた。

 俺は幼馴染の大きな胸の柔らかさや、甘ったるい香りにドキドキしながら、「あ、うん」と答える。


 そこで雨宮こなたが焦茶の髪の毛を人差し指でくるくるしながら、仕方なさそうに聞いてきた。


「遠藤くん、足は速いんだから100m走に出たらよかったのに」

「100m走はうちのクラスじゃ人気種目だからな。ふつうはそうはならないんだけど。ほら、俺らのクラス変わってるから……。それにみんなが出たがらない種目に出るのって、面白いだろ?」

「ま、遠藤くんらしいわね。わたくしも応援してさしあげます」


 俺のお腹に抱きついたままの犬神ちはるがぷくーっと頬を膨らませて、雨宮こなたを睥睨した。


「遠藤くんらしいわねって、こたなに遠藤の何がわかるんだよ」

「何がって、なんですの! わたくしは遠藤くんに好意を抱いているから、なんでもわかっちゃうんですー! ……好意っ?」


 自分で言っておきながら、真っ赤になると、雨宮こなたは小走りになって、そばにいた小林の後ろに隠れてしまった。

 雨宮はほんと……、なんだか憎めないやつである。


 小林がニコニコしながら応援してきた。


「遠藤! 順位にはこだわらなくていいぞ。エンジョイするんだ。自分が楽しむことが大事だぞ!」

「100m走ぶっちぎりで一位だったやつが何言ってんだか……?」


 俺は苦笑する。


 そして、借り物競走が始まって、俺の番がやってきた。


「よーい――」


 パンッ!


 俺は走り出して、何を借りるのか箱からお題を引く。


「がんばえー、遠藤〜〜〜っ!」

「遠藤くん、ファイトですわっ! わたくしのために走ってくださいまし〜〜〜!」

「なんでお前のために走るんだよバカこたな!」

「だって、わたくし遠藤くんのことが……」

「え……?」

「わっはっは! こちらのことは気にするな、遠藤〜〜っ! エンジョイだぞ!」


 何気、修羅場ってる気がするのだが、お題を見る!


『クラスで一番背が低い生徒を連れてくる』


「……って、なにやら嫌な予感が…………⁉︎」


 俺は自分のクラスメイトたちがいる地点まで走っていく。


「あれ、遠藤がこっちにくるぞ⁉︎」

「遠藤くん、血迷ったんですの〜〜〜⁉︎」

「お二人さん、借り物競走だから、俺たちに用があるんだろう! わっはっは」

「「なるほど〜〜〜」」


 俺は眉間に皺を寄せながら、例の少女に声をかける。


「おーい、雨宮〜?」

「なんですの?」

「俺と一緒に来てくれないか?」

「どんなお題ですの?」

「…………」

「なんで黙るんですの! 教えなさい! どんなお題ですの⁉︎」


  つづく


――――――――

あとがき

皆さま、応援してくれてありがとうございます!

毎日、隙間時間にchill、楽しめるように、試行錯誤しながら書いています。

よろしくお願いします。

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