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「やあ、遠藤! それから犬神と雨宮も! 今日はすばらしい運動会日和だな!」
俺が振り向くと、学級委員長の小林が立っていた。
背丈は俺たちの中で一番高くて、メガネをかけている。
ちなみに趣味は筋トレであり、ガリ勉だがひ弱なイメージはない。
「おはよう小林。朝から元気か」
「おはようございます、ですわ。委員長」
「うう、自律神経が整っている人だ……」
犬神ちはるは瞳を閉じたまま、ガクガクと震える。
ちなみに、ちはるは小林のことがそう嫌いではないらしい。
自律神経が整っているからだそうだ。
そういう人を見ると落ちつく、と言っている。わけわからん。
ちなみに今まで会った中で一番整っているのは、俺こと遠藤らしい。
ふつうに生活しているだけなのだが。
小林はニコニコしながら喋りかけてくる。
「犬神! クラス対抗リレーのことなら気にしなくていいぞ! このクラスには俺がいるからな」
「だってさ、こたな。土下座して」
犬神ちはるが俺のお腹に頭をこすりつけながら言うと、当然雨宮こなたは怒る。
「わたくしは遠藤くんにしか土下座はしませんの!」
「いや、俺にも土下座しないでくれる……?」
「遠藤くん? 試しにわたくしに、『OK 雨宮? 土下座してみて!』とお願いしてみてくださいまし」
「いやだよ! どんなスマートスピーカーだよお前は。どこからそんな勇気が湧いてくるんだよ」
「スマートスピーカーってなんですの?」
「アホこたな……」
犬神ちはるがぼやくと、俺たちのやりとりを見て、ワッハッハと小林は明るく笑う。
人生何がそんなに楽しいのだ、この委員長!
「相変わらずのトリオ漫才楽しませてもらったぞ!」
「トリオ漫才なんてしてませんわ!」
「整う……」
俺は幼馴染の頭を撫ですかしながら、彼女の耳元に小声で語りかけた。
「ちはる。うちのクラスには小林がいるから、クラス対抗リレーのことは気にしなくていいぞ」
「ふふ、くしゅぐったい……」
耳元に喋りかけたからか、犬神ちはるはかすかに身を捩りながらも嬉しそうにする。
俺は、再び委員長を見て頼んだ。
「小林。俺たちで犬神のフォローをしよう」
「もちろんだ友よ! 任せておけ! 雨宮も運動会楽しむんだぞ!」
「はいはい、とんだ筋肉メガネですわね」
何さらっとディスってんだ。
しかし、全く気にしないところは流石、小林だ。
クラスメイトたちが「遠藤と小林がいるからうちのクラスは安泰だぜ!」」「犬神ちゃんきゃわいい……、飼いたい」「うちは雨宮ちゃんも面倒見る余裕ある……」「この四人整う……、クラスメイトにになれてよかった……」と個人的な感想を好き勝手にもらしていく。
俺は半笑いして、小林はますますニコニコした。
そんな俺たちを見て、「整う……」と犬神ちはるはどこまでも癒されていく。
かわいい。
雨宮が背伸びしながら言った。
「そろそろ開会式が始まりますわ!」
――――――あとがき
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