3

 雨宮こなたは、俺こと遠藤と犬神ちはるのクラスメイトだ。

 入学式の翌日、自分の席を忘れた雨宮こなたに席を教えてあげたのがきっかけで仲良くなった。(アホである)


『どうしてわたくしの席がわかったんですの……?」

『そりゃ、お隣さんだからな』

『ふふ……、わかりやすい……』


 全く何がわかりやすいのかちっともわからなかったが、雨宮こなたは肩にかかった焦茶の髪を揺らして微笑んでいた。


 あの時、意味深な笑みを浮かべていたっけ。


 懐かしい。


 ちなみに、雨宮こなたが右隣で、左隣が犬神ちはるだ。


 犬神ちはるは、人の多い教室ではいつも寝たふりをしていた。

 しかし、時折、顔を上げては、


『遠藤、トイレいこ』

『女子が男子を誘うな! 雨宮でも連れてけ』

『ぜったい嫌ですわ!』

『うええーん、こいつ嫌い〜っ!』

『あ、雨宮! ちはるに怒鳴っちゃダメだ! 必要以上に傷つくから』

『あ、ごめんなさ……うう、うあ〜〜〜んっ』

『もらい泣きするな!』


 ろくな思い出がなかった気がする。


 そして今、雨宮こなたは、犬神ちはるの数少ない知り合いの内の一人である。


 お互いに絶対友達とは言わないところが微笑ましいと思う。


「犬神ちはる? クラス対抗リレーではせいぜい足を引っ張らないよう頑張ってくださいまし」

「うるさい、消えろっ!」

「消えろとはなんですの⁉︎ 言葉遣いに気をつけなさいといつも言っているでしょう!」

「む〜〜〜っ!」


 犬神ちはるは分かりやすく頬を膨らませると、俺の膝にコテっと頭をのせてきた。


 美容院に行くのを嫌がっているので毛量が多くて、太ももがくすぐったい。


 幼馴染は甘えた声音でお願いしてくる。


「遠藤……、心が傷ついた。頭撫でて……?」

「はいはい」


 俺がその頭を、犬を撫でるようにすくと、彼女は安心したように吐息する。


 かわいい。


 幼馴染の可愛さが分かるのは俺だけでいいと思う。


「…………」

「あの、雨宮?」

「何かしら?」

「目が恐いんだが」

「目べ、別に……、ひっ」


 雨宮はペタッと地面にお尻をつけて、号泣。


「うえぇーん……」

「おい、雨宮」

「あ、こたな……」

「こなたですわっ! ちはるのバカ〜っ!」


 ここは幼稚園のキリン組かどこかだっけ……?


 俺がどうしようか迷っていると、ポンと肩を叩かれた。


 ――――――あとがき

 次回、主人公の友達の爆速メガネ委員長が出ます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る