天使歴1300年の私、堕天を目指す

白悟那美 破捨多

第1話

人間を幸せにする事により善行を貯め、神へと昇格するため、毎日人間達を幸せにする天使達が住む天界。その天界では、どれだけ遅くても300年善行を積み続ければ、必ず天使達は神へと昇格できます。しかし、1人の天使は300年所か1300年という長い年月を毎日善行を積んだにも関わらず神への昇格が認められなかったのです。

これは、そんな1人の天使である私のお話。


「今日も人間達が幸せであれますように」

「リラさん。今日もお疲れ様です」

「そちらこそお疲れ様、リカルちゃん。今日は何人の人を幸せにできたのかしら?」

「私はリラさんに比べれば全然ですよ」

「そんな事ないわよ。貴方は1週間に1000人以上を幸せにしている。天界でも稀にしか生まれない特別神になるのが近いと言われている子じゃないですか」

「いやいや、だとしたら毎日3000人の人間を幸せにしているリラさんはどうなんですか」

「私はきっと、人間を多く幸せにしている代わりに、小さな幸せが多いのでしょう。量より質と言いますし、仕方ありませんよ」

「だとしても、普通に考えればおかしいじゃないですか!なんでリラさんの同期の方々は皆リラさんより幸せにした人間の数が少なくても神になっているのに、リラさんが神になれないなんておかしいですよ!」

「それだけ他の皆が幸せにした人間の幸せは大きいものだったのでしょう。私は300年という時では決められた幸せを集められなかったので、時間を有しているだけなのですよ」

「そうですかねぇ。でも、リラさんのような綺麗で可愛くて優しい天使をほっといたら、絶対にないですが、最近噂の堕天使になってグレちゃうんじゃないかと思いますよ」

「堕天使?」

「あれ、リラさん知らないんすか?最近人間を幸せにせずに力を使って悪戯をしていた天使が堕天してしまったんですよ。それで今、神様達が必死に堕天してすぐに何処かに消えてしまったその天使を探してるんすよ」

「へぇー、そうなんですね」

「まぁ、リラさんには縁のない話ですよね。すいません、こんな話しか出来なくて」

「いえ、気にする事はありません。リカルちゃんと話しているととても楽しいですから」

「リラさん!、、、私、神様達にリラさんが神になれるように頑張って説得しますから」

「うふふ、自分の仕事が疎かにならないようにだけ、気をつけてくださいね」

「はいっす!」

「とりあえず今日の仕事も終わりましたし、私は先に上がらせて貰いますね」

「はいっ!お疲れ様っす」

「口調、いつものに戻ってますよ」

「あ、申し訳ありません。お疲れ様です」

「お仕事中は気を抜かないようにね」

「今後気をつけます」

そう言って私はリカルちゃんとお別れをし自分の家へと帰るのでした。

「はぁ、でも本当になんで神になれないんだろう。正直、私は今までの天使の中でも1年の成績は毎年1番でしたし、争いなども起こしたことはなく、無論、寿命以外で人間を死なせてしまったこともありません。なのに、私だけが他の友達たちが神に昇格していく中でひとりぼっちでずっと天使のまま。リカルちゃんなんて、まだ天使歴118年なのに今年の神候補として既に知られている超優等生ですら、私よりも人間を幸せにする事が難しいというのに、私には何が足りないのでしょう。そもそも、私は本当に1300年も天使をしていて神に昇格させて貰えるチャンスがあるのでしょうか、本当に今の人間を幸せにするだけの生活でいいのでしょうか」

そう思う私の頭の中にはリカルちゃんの言っていた「堕天」という言葉が響いていた。

「堕天とは確か、天使に有るまじき行為を行い、天使の肩書きを汚した者の輪と羽が黒く染まり、最後には心まで黒く染まってしまうと言われていて、堕天した天使は天界から追放されて、魔界と天界の狭間で永遠の苦痛を味わされると聞いていますが、それすらも本当か分かりません。それに、私はもう期待をしたままの天使なんて嫌ですからね。決めました!私、堕天します!」


その頃一方、天界「天使管理室」

「え、ちょっと嘘でしょ!リラちゃんが堕天するですって!」

「大神官様にすぐに伝えに行きましょう!」

天界「大神官の部屋」

「大神官様、大変でございます」

「リラが、リラが!」

「落ち着きなさい。メシア、フレドリカ、一体リラに何があったのです」

「リ、リ、リラが堕天すると言い出しました!」

「そうですか、恐れていた事が遂に起きてしまうのですね。直ちに貴方達はリラの元へ」

「了解致しました!」

神になれず、堕天する事を決意したリラ、

一方それを食い止める為にリラの元へと向かうメシアとフレドリカ、一体どうなるのでしょうか。

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