サメのパワーローダー

Side 加藤 圭一

 

 以前も語ったが俺達には生活するために食べていかないといかない。


 その方法は様々だ。


 俺の場合は――パワーローダーなどの整備の仕事やら、パワーローダーでの仕事がある。


 パワーローダーは戦闘目的だけでなく、作業重機としても使えるのだ。


 マヤの場合は戦車での運搬のお仕事だ。


 お互いフロンティアの事が気がかりになので少しばかりこの軍艦街に滞在することにした。



 軍艦街でのバトリング。

 

 先日は海賊やらサメやらの襲撃でお流れになったが参戦することになった。


 今回もコロッセウムの時のようにパワーローダーを貸し出してもらった。


 下半身が戦車。


 上半身がサメの着ぐるみのようなパワーローダー。


 ネタとしかいいようがないパワーローダーだ。


 持ち主は元サメハンター(自称)らしく、「サメを倒すにはサメの力を得るしかない」などと中々にマッドな思想の持ち主だった。


 デザイン的にも思想的にも迷走してる感がある。


 だが条件が良かったので参加することにした。   

  


 Side アーミーズシティ ライトニング隊 隊長 ミハエル


「隊長? なにを見ているんですか?」


「いや、彼の戦いをな――」


 今、加藤 佳一は上半身がサメ、下半身が戦車のふざけたデザインのパワーローダーに乗って戦っているらしい。


 バトリングとはシビアな世界であり、強すぎてもダメ、弱すぎてもダメな世界と聞く。


 酷い言い方だが負けても五体満足でコインを稼げれば勝ちなのだ。


 まあそれはともかくとして――


「中々器用な戦い方をする」


 私はそう思ってしまう。

 体当たり、その場での旋回を上手く繰り返しながら相手を追い詰め、リング外への押し出しか、のし掛かり戦法で勝ったり負けたりを繰り返しているようだ。


 観客達もこの無謀なチャレンジになんだかんだで盛り上がっているようだ。


「凄い盛り上がりですね隊長」


「まあな――」


 一夜にしてコロッセウムのスター選手になり、彼方此方で活躍して軍海街でも名を知られるようになった加藤 佳一の実力や集客力とかもあるんだろうが――


「私達のパワーローダーに乗せたらどんな戦い方をするんだろうか」


「隊長?」


「私達の戦いは荒廃する以前の世界の記録などを元にした戦い方だ。ああ言う戦い方は基本しないだろう?」


「まあそうですが・・・・・・」


「それを少し見てみたくなってな」


 などと私は思ってしまった。



 Side 加藤 佳一


 あのサメのパワーローダーでの戦績は勝ちが四割、負けが六割と言ったところだ。

 正直何回か勝てただけでも奇跡に近い。


 賭博を仕切っていた連中から感謝されたり、観客や相手選手に褒められたりして報酬もそこそこもらえた。


 サメのパワーローダーの持ち主からは「まだまだだな」とか言われたが・・・・・・俺は言い返したい気持ちが疲れで湧き出ず苦笑で返した。


 そんな時にアーミーズシティのミハエルに出会った。


「お疲れのところ悪いが仕事の話がある」


「仕事? 内容によるけど――」 

 

 仕事は基本、安請け合いはしないしできない。

 それが例え親しい仲であってもだ。

 

 しかしミハエルから聞かされた仕事の内容は――


「ちょっと私達のパワーローダーに乗って戦ってみてくれないか?」


 と言う内容だった。

 近くにいたナナも俺も一瞬「?」となった。

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