フロンティアのリタ

 Side 加藤 佳一


 夜の軍艦街。


 人気の少ない場所。


 そこでフロンティア所属と名乗る謎の黒髪の褐色肌の美女。

 セレブ感が感じられる服装の女性、リタが現れた。


 背後にはロボットアニメのパイロットスーツ――主に深夜帯に出てきそうなピッチリとしたレオタードタイプのスーツを着た胸が大きい長い金髪の美少女、アマシロ・リエがいる。


「・・・・・・フロンティアね。それがどうして自分なんかに?」


「あら? 私達がフロンティアの人間だって信じるの?」


 リタと名乗る女性は少し芝居掛かった感じで驚いた。


「ワザとやってるんですか? 色んな重役視てきましたけどそこまで綺麗な身嗜み整えた人なんていませんよ。そこの後ろの子も」


 この世界ではシャワーを浴びる水があれば飲料水に回さなければならないぐらい色々と悲惨な世界だ。

 

 にも関わらずリタとアマシロ・リエの二人の身嗜みは違う世界の住民のように場違いだ。


 ファンタジー世界の剣や鎧で武装した冒険者を現代社会に放り込むぐらいに違和感がある。


 リタと言う女性はそれを自覚した上で言っているのだろう。


「大体どうして自分を呼びつけるような真似を?」


「いちおうホープタウンの代表者なんでしょ? それに実績もあるし――あとは個人的に面白そうだし興味を惹かれたから」


「はあ?」


「色々と調べたけど中々暴れ回ってるわね。ウォーバイソンの時とかもそう――フロンティアに長くいると容姿がいいだけの男には興味はなくなるのよ」


「あ~その、なんだ。ありがとう返しておくよ」と照れながら返すとリタは「可愛いのね」と微笑んだ。


 俺は照れ隠しに「本題は?」と返した。


「本題に入る前に少し説明しておくわね?」


 と、リタは言って語った。


「フロンティアも一枚岩ではなく、色々と派閥があるのよ。ウォーバイソンに協力して武力支配しようとする強行派とか、その反対派みたいにね」


「で、アナタ達がその反対派?」


「そうよ。この子もその反対派」


 と、リタは話題をアマシロ・リエにふる。 


「ねえ? 本当に協力者が必要なの?」


 アマシロ・リエは不機嫌そうに言ったがリタは「いづれ分かるわ」と軽く受け流し本題に入る。


「ウォーバイソンだけでなく、フロンティアの人間はある場所に向かってるわ。私達としても無視できないわ」


「話が急にきな臭くなったな」


 フロンティアの悪い噂はよく耳にする。

 安易に信じていい物かと迷ってしまう。


「場所は無人の軍事基地よ」


「無人の軍事基地?」


「そう。戦前から存在する軍事基地」


「で、今も稼働し続けていて手が出せないと」


「あら? 分かるの?」


 リタは微笑みながら言った。


「そうじゃなかったらとっくに漁り尽くされてるだろう」


 俺は溜息をついた。

 アマシロ・リエはと言うと「頭は回るみたいね」などと言っていた。


「だけど軍事基地は無傷じゃ済まないわ」


「ようするに火事場泥棒しろってことか――悪いが俺一人では決めかねる」


「まあ、それが普通よね。他にも色んな人に話を通しておくから――また会いましょう、ボウヤ――」


 そしてリタとアマシロ・リエは去って行く。



 軍艦街で自分達に割り当てられた居住区の部屋に戻る。


 マヤとナナに今回の話はしておいたがマヤは俺と同じく「罠の危険性が高い」と判断したようだ。


 ナナですら不信に思ったようだ。


「しかしフロンティアの連中がこの辺うろつているとは――」


 マヤがどこか忌々しげに言った。


「一枚岩どうこうとか言ってたけど味方なのかどうかも分からないしな」


 マヤの一方的に敵視する姿勢はどうかと思ったが、正直信用できないと言う点では同意だった。


 だが無視することは出来ない。


 自分達なりに情報を集めることとなった。

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