軍艦街
軍艦街へ
Side 加藤 佳一
補給地点で一夜を明かし、出発準備中のところで事態は急変した。
「ウォーバイソンの大部隊が軍艦街に向かってる!?」
俺の問いにミハエルが返す。
「はい。恐らく昨日の連中かと――現地にも我々の部隊や軍艦街の戦力がありますし、撃退は出来ると思いますが」
「上からの指示は?」
「合流ですね。私達は先にヘリで向かいます」
「分かった――死ぬなよ」
「ええ。お気をつけて」
そして俺とミハエル達は別れた。
俺達は陸路で。
ミハエルは空路で軍艦街に向かうことになった。
☆
マヤの戦車で出発してすぐ――
俺はミハエル達の事が不安だったが今はそれどころではなかった。
ウォーバイソンが案の定待ち伏せしていたのだ。
状況が状況なのでパワーローダーを身に纏えないのでハッチを開き、備え付けられた車載武器で迎撃する。
『私は運転に集中する!! ナナは佳一のサポートに回って!!』
『分かった!!』
そう言ってハッチの隙間から――俺の背中にくっつくようにヒョコッと小柄のナナの体が現れる。
現在街道――過疎化が進んだ田舎町だったと思わしき廃墟を進んでいる。
路面は雑草などで荒れ放題。
そこを戦車のパワーを活かして爆走している。
戦車は鈍重なイメージがあるが、21世紀の現代戦車は大体時速70kmは出せる。
この世界の戦車は装甲素材や動力の関係などでそれ以上は出せる仕様らしい。
それは敵も同じだろう。
後ろから世紀末仕様の外観の武装したバイクやら車両やらが次々と襲い掛かってくる。
「具体的にどうするの?」
「近くの敵を排除していく。倒すんじゃなくて乗り物を破壊して撃退していけばいい」
そう言って俺は砲塔部分のハッチに備え付けられた機銃を乱射。
バイクに着弾してそのバイクが火を噴いて空中を舞うと後部の車両に激突。
そして大爆発を起こす。
ありゃ死んだわ・・・・・・
「バイクがこっちに来る!!」
ナナにそう言われて気づく。
車体の後部左側面からバイクが近付いてくる。
「ッ!! 潜り込まれた!!」
そして機銃の死角に潜り込まれる。
『任せとけ!!』
「え、マヤさん――何を――」
急に戦車が立ち止まり、その場で百八十度急回転。
追いかけてきた車両が両側を通り過ぎる。
懐に潜り込んだバイクの搭乗員はボサッとしていたところを車体の機銃で打ち抜かれた。
それを終えると再び百八十度回転する。
マヤさん、度胸ありすぎやしませんか?
敵のバックをとった形になり、主砲や機銃の一斉射撃。
次々と敵を倒していく。
爆発で空中を舞い、地面を転がり回ったのち爆発炎上。
ハリウッド映画とかでよくみるシーンだ。
「てかまだ出てくるのかよ!?」
いったいどんだけ数がいるんだ。
変なMOD追加してない?
武装バイクや車両に今度は戦車やパワーローダーまで出てきた。
パワーローダーはホバーとかローラーダッシュ搭載型仕様の奴みたいで地面を滑るように高速移動している。
なんで自分達はマッ○マックスのクライマックス状態になっているのだろうか。
ともかく危険ではあるが戦闘中にパワーローダーの装着を決意する。
「スモーク炊いてくれ!! ありったけの奴だ!!」
『あいよ!!』
戦車に備え付けられた三連発煙筒からスモークを発生させる弾が前方に射出される。
そのままマヤは戦車をスモークが発生地点に潜り込ませて停車、辺りが"目眩ましの"煙に包まれる。
爆音、轟音、それに混じって銃声が聞こえて恐いがそのまま戦車の車体の後ろ側に。
そして黒いパワーローダー、SS-15を身に纏い、武装を手に持つ。
『装着した!!』
通信機に言うとすぐさま戦車は発進した。
『で、どうする!? このまま軍艦街に逃げ込むか!?』
マヤの相談に俺は――
『ミハエル達には悪いけど、敵の戦力が分からない以上はそれしかない!!』
と、決断した。
マヤは『わかった!! 出来るだけ数は減らしていくぞ!!』と返して運転を再開する。
アーミズシティと軍艦街、そこを襲撃しようとしているウォーバイソンの連中の戦力もどれぐらいかは分からないが自分達も生き延びるので手一杯だ。
心苦しいがこのまま軍艦街までいくことにする。
『ちっ・・・・・・』
巨大ガエルの群れの時と同じくアサルトライフル二丁持ちスタイルで次々と敵を吹き飛ばす。
車両やバイクは次々と業火と一緒に吹き飛び、パワーローダーも制御をミスってクラッシュして脱落していく。
『戦車が突っ込んできた!!』
この部隊のリーダー格と思わしき戦車がスピードをあげる。
デタラメに砲を乱射して味方の巻き添えなどお構いなしだ。
『任せろ』
そう言ってマヤは速度を落とし、戦車を寄せて敵の戦車と横に並ぶ。
『いまだ!!』
『ああ!!』
マヤに言われて俺は戦車の車体上部に取り付き、エンジンブロックや砲塔を片っ端から破壊する。
『それで十分だ!! 戻れ!!』
そう言われてマヤの戦車に飛び乗るように脱出。
少し離れてトドメに左側面に旋回させた戦車砲が発射され、敵の戦車が断末魔代わりの大爆発を起こす。
これであらかた片付いた筈だ。
どうにかなるもんだな。
『あ――弾薬費とか色々と出費が痛いけど今回ばかりは仕方ないよな・・・・・・』
などとマヤが愚痴って俺は苦笑いする。
本当にすみません。
でも命のやり取りしたあとでこんなこと言うもんだから何だかおかしくなった。
「人間同士ってどうして仲良くできないんだろうね」
『永遠の命題だな、そいつは』
本当にそうだ。
俺達は何をやっているんだろうか。
だけど答えを考えるよりも銃弾で黙らせた方が早いし、そうしないと命が危ないからな。
『見えてきたぞ。あれが・・・・・・軍艦街・・・・・・なのか?』
マヤが疑問毛に尋ねてくる。
「ああ、遠くからでも見える。本当に軍艦の町っぽいな」
遠方に軍艦の密集地帯が見える。
自分達は山道にいるせいか、ある程度全景を見渡せられる場所で眺めることができた。
たぶんもとは軍艦の整備ドックだかなんかだったんだろう。
軍艦を中心に町を形成してると考えるのが妥当だろう。
既に戦闘がはじまっているのか、町の入り口らへんでヘリの姿や爆発の黒煙などが見え、入り口周辺に群がるように車両群などが並んでいる。
『なんだあれ? コロッセウムも大概だったけど――鋼鉄の城が沢山みえるぞ?』
「アレが軍艦なの?」
戦車を操縦しているマヤもナナも圧倒されているようだ。
『ああ。海でドンパチやるための船だ』
「凄い大きいんだね~どんぐらい大きいの?」
ナナの問いに俺は『一隻一隻がホープタウンの運動場以上のサイズだしな』と答えた。
『やけに具体的な例えだな――』
マヤにそう言われ、
「相変わらず物知りだね~佳一は」
ナナは何時ものごとくそう言う、
俺はこれ以上は説明が面倒になるので『まあな・・・・・・』とだけ返して口を閉じた。
ともかく軍艦街での戦闘は既に始まってる。
一息つく間もなく、ウォーバイソンと連戦になりそうだ。
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