旅立ちその2

次なる場所へ

 Side 加藤 佳一


 コロッセウムに来てから一週間が経過した。


 ウルフェンさんは俺が教え込んだ、にわか格闘知識でも素早く吸収して自分の物にして素人目でも凄く強くなった。


「もう行くのか?」


 白髪褐色肌の青年、ウルフェンがコロッセウムを代表して見送りに来てくれた。


「ああ。やる事あるんでな――」


 俺達はこれでも旅している。

 次は海沿いの軍艦街、基地を拠点としたアーミーズシティだ。

 

 荷物を満載した緑に星のエンブレムのマヤ特性チハ戦車に乗り込み、出発する。


 名残惜しいが――まあ落ち着いたらまた来て暫くバトリングの選手とかやったりしてもいいかもしれないな。



 戦車を進ませながら車内でお話をする。

 

 目的地は軍艦街。

 

 以前出会った巨大ザリガニのモンスターが出没する可能性があるが、そんな化け物を食料にして生活しているらしいタフな人々だそうだ。


 軍艦街から来たらしいトレーダーから行き先の情報をもらい、出発した。


「ねえねえ、軍艦街ってどんな町かな?」

 

 当然の疑問をナナが口にする。


「さあ? たぶん軍艦を中心にして生活してるんだろうと思う。ヘタな廃墟で寝泊まりするよりかは住みやすいだろうしな」


「その軍艦ってなんなの?」


「あ~そっからか。海の上で戦う船のことだ」


「海って?」


「海はまあ塩の果ての無い湖とでも言えばいいんだろうか――様々な生物が沢山住んでて、とても深くて広い。まあ見れば分かると思うよ」


 ナナの質問に応えているとマヤが「おい、見てみろ」と話しかけてきた。



 一旦外に出て周囲を見渡す。


 道路から好き勝手に生えた草木に大きな獣道のような後があったりするのは何時も通りだが――


 視線の先にあったのは湖に浸かった高い建築物の数々だ。

 

 その光景は悲しさや寂しさより幻想的な美しさのような物を感じた。


「どうしてこんなところに建築物があるの?」


 と、当然の疑問をナナがする。


「ここは元々は陸地だったんだ。原因は分からないけど――海面が上昇してここまで流れ込んだか、あるいはダムとかのシステムが異常を起こしてこうなったかだな」


 俺はそう答えた。

 ナナは「佳一は本当に物知りなんだね~」と褒めてきた。


「そうか――正直水辺は危険だからな。念のためパワーローダーの準備しといてくれ。ナナは戦車の中に」


 俺はマヤの指示に「あいよ」と俺は返した。


 直後、大きなカエルが飛んでくる。


 人間の子供よりも大きなサイズの。

 大体1m50cm以上か?

 

 俺は銃で、マヤはコンパウンドボウ、ナナはレーザーガンで即座に反撃した。

 この世界の生物はとにかく大きく、攻撃的なのが多い。犬であっても平然と人に食らいついてくる。


 二体、三体と数が出てくるが射的ゲーム同然だがこの世界は基本消耗戦は死に直結する。


 マヤが「少し頼む」と言って戦車に乗り込み、俺とナナで場を持たせる。


 そしてマヤの戦車の機銃が唸り、次々とカエル達が挽肉に変わっていく。


『ナナも戦車に!! 佳一はパワーローダーを着込め!!』


 俺とナナは走った。

 ナナは戦車の中に。


 俺は戦車の車体後部に置かれたパワーローダー、SS-15を身に纏う。

 レーザーライフルを手に取って起き上がり、戦車が急発進する。

 

『追ってくるぞ!!』

 

 荷物を積んでる関係で戦車の後部は無防備になる。

 俺はレーザーライフルやパワーローダー用のアサルトライフルを撃つ。

 後方から迫り来る巨大カエルの群れ――軽くホラーだった。

 

 そしてナナが――


『ってナナ? 何を?』


 今はコンパウンドボウではなく、ボウガンを手にしている。

 先端にはロケット花火みたいな物体がついた矢があり、それを発射する。

 それはカエルの群れの先頭に着弾して爆発が起きた。


『・・・・・・前々からそうだな以前より逞しくなったな、ナナ』


「へへへ、褒めてくれてありがとう」


 笑顔でナナは返してくれた。



 近くにガソリンスタンド(?)を見つけて無人であることを確かめて一休みする。


 そこは一種の交易所になっており、人が予想以上にいた。


 すっかり日が落ちて夜になり、俺は様々な人々と話し込んでいくウチに気がつけば初老の男性と話し込んでいた。


「ああ、廃墟の湖か。あそこは最近大人しいと聞いていたが――やはり湖がある場所は気を付けないとね。まあ軍艦街への他のルートも危険だし、ウォーバイソン以外の野盗連中もどこで網を張っているか――」


「そうか・・・・・・」


 マヤのルート設定はミスとか道を間違えただけでなく、一番安全だと思ったルートを設定したのだろう。


 それに商人商売している人達の言う通り、どこに野盗がいるかわからん世の中だ。


 安全なルートがあったとしてもこの人の言う通り野盗の待ち伏せポイントになってる可能性が高い。


 どの道、戦う相手が化け物か人間かでしかないだろう。


「それにしてもどうしてあんな場所に廃墟が?」


「元は陸地だったんですよ。だけど長い年月でああなったんですよ」


「それは確かかね?――いや、なら納得がいく。海の周辺は瓦礫の荒野、山の近くには灰の大地があると言うが――」


「瓦礫の荒野は津波の被害、灰の大地は火山の噴火で出現した火山灰ですね・・・・・・・」


「ふむ、中々興味深い」


「佳一は色んなことを沢山知ってるんだよ?」


 と、ナナが話に割って入ってきた。


「そうか、君はフロンティアの?」


「いや、違う。フロンティアには言ったことすらない」


「嘘はついている感じではないな――ああ失礼、歳のせいかな――初対面の相手に根堀り葉堀り聞くのはマナー違反だな」


「いや、構わないけど――」


「この商売はなにごとも印象が大事だ。お詫びに良いことを教えてあげよう」


「なんだ?」


 ここは大人しく聞いておくことにした。


「軍艦街に近々アーミーズシティの人々が来ると言う話だ」


「それって本当ですか?」


 アーミーズシティ。

 ハカセが言うには軍事基地らしき場所に住まう人々だと聞いた事がある。

 コロッセウムでもフロンティア以外では最大の武力を持っていると言う話も耳にした。

 

「ああ。軍艦街は食べ物と住むところには困らないが、最近は海賊にウォーバイソンに大型生物に悩まされているらしくてね。その問題を解決するために軍艦街は取引をしたんだ」


「軍艦街は食料、アーミーズシティは武力をですか?」


「まあそんなところだろう。中々飲み込みがいいな」


 色々と厄介ごとに巻き込まれそうではあるが、軍艦街に向かうことには変わらない。

 上手く行けばハカセからのお使いはこれで達成できる。

 

 だが今は明日に備えて休むことが肝心である。

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