加藤 佳一の格闘講座~実戦編~
Side 加藤 佳一
敵の数はざっと十人。
パワーローダー≪トレーナー≫を身に纏い、とりあえず倉庫の外に叩き出す。
出力は落としてあると言う言葉なので――
『おら!!』
『ガハ!?』
やや低空気味で体全身でぶつかった。
後ろにいた相手も巻き込んで倒れ込む。
『ど、どけ!?』
『黙ってろ――』
などと軽く仲間割れを起こす始末。
続いてもう一人が殴りかかってくるが――
『なっ!?』
相手の動きに合わせてパンチを顔面に当てる。
出力は落としているとはいえ、パワーローダーの一撃。
それもクロスカウンターでだ。
まさかこんな綺麗に決まるとは思わなかった。
轟音が響いて相手が崩れ落ちる。
ウルフェンは雑魚を早速二人連打でKOしている。
『なにやってやがるんだ!? これで負けたら笑いもんだぞ!!』
そう言ってリーダー格の男が発破をかける。
『どうせこいつらバトリングで成果出せなかった連中の集まりだ。一人一人はそんなにたいしたことない』
などとウルフェンはいいながら的確にパワーローダーの急所を捉えて殴り倒していく。
こちらも腕をL字にしてラリアットで相手をカウンター気味に迎撃し、飛び上がって肘で相手の顔面を叩く。
『なんだこいつは!?』
『相手はたかが練習機だぞ!?』
『ただ運がいいだけだ!! やってやる!!』
狼狽する敵達を押しのけるように一人の敵が突っ込んで来たので、ヒップアタック気味に相手に背を向けて体当たりしてから相手の首を右腕を回し込むようにホールドし、そのまま飛び上がって地面に叩き付けるように自分も尻餅付く――スタナーでいいんだっけ? ター○メンさん?(キ○肉マンの登場キャラ)
相手はその場にゴロゴロと転がり込む。
たぶん首を中心に物凄い衝撃がきたのだろう。
この頃には半数以上の敵を倒していた
中には頑張って復帰している奴もいるがすぐに倒される――と言うかウルフェンさんや自分の技の実験台にされて再び倒されたりしていた。
生身のケンカならともかく、これはパワーローダー同士の戦いだ。
もしも生身同士の戦いなら俺はあっと言う間にやられていただろう。
相手の力任せのパワーローダーの動かし方は俺からすればいいカモだった。
『たった二人相手になにをやっている!! もういい!! 俺がやってやる!!』
『ようやく大将のお出ましか――』
『黙れウルフェン!! お前は目障りなんだよクソが!!』
『バトリングの因縁はバトリングでつけろと言うのがここでのルールだ。それすら守れないチンピラに何を言われようが知ったことか』
『テメェ――』
ウルフェンさんの言う通りだ。
相手のやっていることは筋違いである。
『そもそもこれはお前が吹っかけてきたケンカだろう。何時までそうして黙っているつもりだ』
『うるさい!!』
『それとも俺が恐いのか?』
そう挑発すると相手のリーダー格が突っ込んで来た。
実力はウルフェンさんが上だが相手の丸っこい突起物がない昭和の侵略ロボットみたいな外観のパワーローダーではどうしても相性が悪い。
軽量級のボクサーが総合格闘技ルールで重量級の総合格闘家を相手にするようなもんだ。
ウルフェンさんのファイトスタイルはボクシング。
パワーローダーの拳はちゃんと当たっているが僅かに相手の動作を鈍らせるだけだ。
こちらとしてはあまりウルフェンさんのガレージを壊されたくない。
相手も静観を決め込んでいるどうしたもんかと思う――
「ケイイチ? どうにか出来ないの?」
『そうだな。パワーローダーを変えるとかならともかく、打撃じゃあ・・・・・・打撃? まてよ、そうか、それだ』
自分達はさっきまで打撃技以外のトレーニングをしていたのだ。
それをウルフェンさんが出来れば――
『ウルフェンさん!! 相手の腕を掴んでください!!』
『ッ!!』
そして相手の右腕を咄嗟に掴む。
『そしてそのまま相手の背後に回り込んで右腕を背中に押し込んで捻り挙げてください!!』
言われた通り、ウルフェンは相手の背後に最短動作で回り込んで腕を背中に押し倒すように捻り挙げる。
『ギャアアアアアアアアアア!?』
物凄い絶叫が響いた。
生身のケンカではなく、これはパワーローダー同士の戦いだ。
特にウルフェンさんも自分と同じ≪トレーナー≫であり、出力は落としてはいるがパワーローダーの馬鹿力は人間のパワーを遥かに上回っている。
『離せ!!』
しかし相手もパワーローダー。
強引に振り解くがすかさずウルフェンさんは足を掴む。
『次!! そのまま引っ張り倒して!!』
そして相手のリーダー格のパワーローダーを言われた通り足を引っ張って倒し込む。パワーリーダーを身に纏っているとはいえ、ダメージはそれなりに受けるだろう。
『そのまま相手の左足に自分の右足を差し込んでも居っきり相手の左足首を締め上げてください!!』
この隙にスピニング・トゥーホールドを実行する。
『ギャアアアアアアアアアアア!?』
イヤな音が響くが相手は複数人でこちらを襲撃してきたのだ。
情けは無用である。
これで相手は右腕、右足――右半身を痛めたことになる。
マトモな戦いではない。
『い、今迄のお前とは違う――なんなんだ今のは?』
『もうこれで立てないだろう。もう二度と来るな――』
『クソ・・・・・・俺は、俺はまだ――グォ!?』
無理に立ち上がろうとするが再び倒れ込む。
パワーローダーでの関節技は素人でもかなりのダメージになるようだ。
勉強になった。
『お前らはどうする?』
他の仲間達にウルフェンは目をやる。
『ひ、に、逃げろ!!』
『敵うわけねえ!!』
そして我先にと逃げていく。
『あいつら――俺を見捨てやがって――』
と、残されたリーダーはそんな恨み言を吐く。
『ここではこう言う事は日常的みたいなもんだがルールはルールだ。殺されないだけありがたくおもいやがれ』
そう言い終えて『このバカを詰め所に放り込んでくる。手伝ってくれ』と言われた。
☆
襲撃者をコロッセウムの詰め所に運び込み終えた後、『さっきは助かった。礼を言う』と感謝された。
『いや、正直言うとあそこまで上手く行くとは思いませんでした』
俺は照れながらもそう返した。
「まあ成果はあってよかったってことにすればいいんだよ」
とマヤが話に割って入ってきた。
ナナも「さっきはケイイチもウルフェンも凄かったね~」などと呑気なことを言っていた。
俺もそう言うことにしておくかと言うことにしておいた。
この後、グレイさんが尋ねてきて「聞いたぞ!! 派手にまた面白いことやらかしたみてえじゃねえか!!」と言われてキ○肉マン式プロレス技などの指導をしなければいけない人が増えてしまったのはここだけの話である。
暇なのかなグレイさん。
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