世紀末の世界のよしあし


 Side 加藤 佳一


 マヤ達と一緒に周辺の散策。


 ジャンク漁りもあるがパトロール的な意味合いも強い。


 自分はパワーローダー、SSー15を身に纏って真昼の天気の下でパトロールだ。

 ナナは戦車の中でお留守番である。


 ウォーバイソン抜きでもこの世界は危険に満ち溢れている。


 野盗連中が血気盛んに襲い掛かってきたり、時折凶悪な生物が襲い掛かってきたりとかしたりするらしいのだ。


 廃墟や地面はひび割れたり液状化したり、草木が生い茂っていたりと佳一はこの光景を見るとこの世界は本当に滅んだんだなとか思った。

 

 それに日本は昔から災害大国だ。


 地震、台風、大雨、熱波などだ。


 核による攻撃でどれだけの年月が経ったか知らないがその後も大雨、洪水や台風に地震からの津波や火山の噴火などがあった地域などもあるだろう。


 そう言う土地はもう復興すると言うより開拓に近い。


 この世界にそれだけの余力があるのか疑問であるが――フロンティアと呼ばれる連中なら可能かもしれない。


 それはそうと世紀末の世界はよしあしがある。

 

 コンビニで休憩した時――と言ってもコンビニは商品は刈り尽くされており、今ではただで止まれる目立つ宿泊宿みたいなもんだ。


 酷い時は野盗の根城になっていたりするらしい。


 この長い年月の間に誰かが拠点にしていたのかキャンプの跡地らしき場所が駐車場に出来ていた。


 俺はSSー15を脱いで軽くコンビニの駐車場で点検していた 。


 この世界では"出来る、出来ない"などと言う甘ったれた倫理はあまり通用せず、"出来る出来ないかじゃなくて出来るようになれ"が鉄則である。


 ナナも何時の間にやら拳銃はともかく、クロスボウや小型のコンパウンドボウで武装するようになっていてそれの手入れなどをするようになっていた。


 コンパウンドボウと言うのは弓矢を科学的な原理で改良した代物であり、21世紀日本でも普通に手に入るが十分人を殺せる威力がある危険な代物であり、ヘタすれば銃よりも危ない代物である。


 ちょっと前に訪れたアナグラの人間も使用しているのがチラホラいた。


 弾薬をある程度賄えるとは言え、補給が容易(射貫いた死体から回収)であるこの武器は需要があるのだろうし、音が出にくいのが最大の利点だろう。


 それにこの世界の場合は爆薬を仕込んだ矢などが買えたりするので弓矢と言っても油断したら死ねる武器でもある。


「コンビニってどうしてこんなに多いのかな?」


 ふとナナがそんな疑問を口にする。


「確かにな。俺がいたところでも数分歩けばまた別のコンビニがあるぐらいにコンビニだらけだったしな」


「食料とか色々と置いてる場所だったんでしょ? 世界がこうなる前はそんなに物が必要だったの?」


「どちらかと言うと売り上げを少しでも稼ぐだめだったんじゃないのか?」

 

 そこまでして店舗を建てる方も建てる方だが現代人と言うのは自分含めて"めんどくさがり"だろうと思った。


「豊かな時代だったんだね~」


「ああ。豊かすぎるとも言えるかな?」


 この世界に来てから俺は何度も元の世界の日本とこの世界の日本を比べたことがある。

 

 まあ最終的には「”よしあし”がある」と言う結論に何度も落ち着くのだが。


「あ、鳥さんがいっぱいいる」


「本当だ。監視カメラの上に巣作りしてる」


 ナナがふと監視カメラの方に目を向けるとそこにはヒナ鳥が監視カメラの上で巣作りしていた。

 よく見るとそこかしこで小さな鳥たちが巣作りをしていた。

 どうやらこのコンビニは小鳥達の楽園らしい。


(本当に世界は"よしあし”があるな――)


 この世界は人類の手で滅び、世界は人類の物じゃなくなって、残酷なまでに平等になった。


 それは不幸な事だが酷く第三者視点でみれば人間だって数多くの生物を絶滅させてるし、核兵器抜きでも多くの土地を死の土地にしてきた。


 こうして日本が死の土地になっても殺し合いをしたりして、人間とは本当に度し難い種族なんだろう。

 

 まあそれでもナナやマヤ、ロザリーさん、ハカセやタカメ、ジュウヤさんにホープタウンにアナグラの住民などをみると人の素晴らしさや希望が湧いてくるのだが。


「・・・・・・あんまり、長居するところじゃないな。子育ての邪魔になる」


「そうだね~だけどまた来たいな~」


「・・・・・・ああ、そうだな」


 俺はパワーローダーを身に纏い、『マヤ、戦車の整備はどんな感じだ?』と通信機越しに尋ねると『バッチリだ。何時でもいける』と返事が返ってくる。


『そうか。じゃあ出発しよう』


 そして俺達はこの場を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る