ストームライダーズ

 Side 加藤 佳一


 パワーローダー、SSー15をマヤの戦車の車体後部に積載。

 荷物を彼方此方に載せる。

 

 砲塔が前方180度ぐらいしか回転出来ず、戦闘の時に不利になると思われるが旅先で物資不足になるのも問題なのだ。


 戦車の振動に揺られながらマヤの憧れの土地であるコロッセウムに向かう。

 

 観光目的な部分もあるが、ウォーバイソンの件で協力を申し込めないか打診するつもりだ。


 ハカセからも依頼で頼まれている。


 と言ってもウォーバイソンは彼方此方にケンカ売り回っているらしいし、どんな風に話が転んでも共闘せざるおえない形になると思うのだが・・・・・・


「マヤは何がしたい?」


「分からないけど、とにかく見て回りたい。ホープタウンの外に出る機会はあっても余所の町にいくのは滅多にないからな。」


「そうか」


 それだけ答えておいた。

 何度も語るがこの世界は常に命の危険に溢れている。

 安全と呼ばれる町でも生活するのは大変だ。


 ホープタウンでは高校生ぐらいの年齢になったら一人前、つまり自立しなければならない。(この前立ち寄ったアナグラもホープタウンと五十歩百歩だ)

 

 それでもホープタウンはマシな方で、外での暮らしの大変さはナナとの旅で身に染みついている。


 あの時はあの時で良いことはあったが、進んであの頃に戻ろうと言う気持ちには今のところなれなかった。。


「ナナはどうしたい?」


「うん? 私はよく分かんないけど、コロッセウムでも楽しく過ごせたらいいかな~って思ってる」


「何時ものナナで安心した」


 ナナらしい返事だと俺は思った。



 戦車でしばらく進んでいると何やら妙な一団に遭遇した。

 そいつらはガソリンスタンドと隣のスーパーマーケットの駐車場のような場所に陣取っていて皆ライダースーツを身に纏い、武装したバイクに乗っている。


 暴走族レベル100と言ったところか。


 ともかく俺は警戒しながらもこの一団に接触した。


 マヤも同じ感じだ。

 

 ナナはどうだか分からずニコニコして「そのバイク、ロザリーさんみたいのでカッコいいね!」などと目をキラキラさせて喋り掛けている。


 喋り掛けられた人は「お、おう」、「話分かるじゃねえか」、「見所あるなお前」などとちょっと困惑気味に返事していた。


「俺達はストームライダーズで俺がリーダのアラシだ。最近色々とピリピリしてんでな――ウォーバイソンの連中じゃないとは思うが、念のためだ」


 角刈り気味の金髪の青年の男が代表らしい。

 歳は二十代半ばと言ったところだろうか。


「私達はホープタウンからコロッセウムに向かう途中だ」

 

 代表してマヤが答えた。


「ホープタウンって言えばウォーバイソンの幹部を退けたって言うあの町か。紅のロザリーやウォーバイソンの幹部とチェーンソーデスマッチをやったって言うローダー乗りがいるって言うな」


(本当に俺のこと有名になってるんだな・・・・・・あとロザリーさんも有名人なんだな)


 ウォーバイソンの連中も知ってたし、ロザリーさんは本当に凄腕なんだろう。

 

 マヤは「これでいい?」と話を切り上げようとする。

  

 リーダーのアラシは「ああ。あのクソどもの敵は俺達の味方だ」と返して「それと」と付け加えてこう言った。


「コロッセウムなら最近ウォーバイソンとやり合ってるらしいから今は近付かない方がいいぜ」


「あいつらコロッセウムにもケンカ売ってるのか!?」


 マヤは驚いた様子だった。


「ああ。あいつらマジでイカれてる。俺もこの目で直接みた。この辺り一帯本気で支配するつもりなんじゃないのか?」


 アラシと言う男の意見に俺も同意した。


「だけどコロッセウムはバリバリの武道派で戦力も随一だろう?」


「噂だけどバックにフロンティアの連中もついているとか言われてるけど、あんがい本当の話かもな」


「バックにフロンティア? それは確かなのか?」

 

 マヤの言いたい事は分かる。

 フロンティアはあまり詳しくないが、周囲から嫌われていてとても強い力を持っているらしい。


「さあな。情報の出所も分からないが不確かな情報だが、フロンティアは自分達さえよければ何でもする連中だろう。十分ありえる話だ」


「そうだな・・・・・・そう言う連中だよな、あいつらは」


 アラシもマヤも忌々しげに語る。

 本当に嫌われてるんだなと思った。


「ともかく道中気をつけな」


「分かった――」


 そうして話は打ち切り――そこへやボブカットの背が高めの胸が大きめの女の子が現れた。

 まだ歳はマヤや俺と同じぐらいだ。

 ライダースーツをバッチリ着こなしていてホルスターには銃がある。


「マヤ、やっぱりマヤなのね!?」


 そう言ってマヤに親しげに喋り掛けてくる。


「なんだ? マヤの知り合いか?」


「あ、ああ。ミノリ――ホープタウン出身で私の友達だ・・・・・・ここにいたのか」


「うん。ホープタウン出て行ったキリだもんね。無事でよかった――」



 Side マヤ


 私の都合でちょっとだけストームライダーズに厄介になる事にした。


 ケイイチやナナも何だかんだでストームライダーズと馴染んでいる。


 ミノリはロザリーさんに憧れてバイク乗りになった口だ。

 

 私が戦車に惹かれたのは外から着た戦車の力強さに惹かれたように。


 彼女は「オトナ」になって独り立ちし、バイクに乗ってホープタウンから出てそれっきりだったがまさかここにいるとは思わなかった。ストームライダーズには他にも女性メンバーがいるらしくて女性でも居場所はちゃんとあるそうだ。


 どうやらアラシと言う男は中々の人物のようだ。


「外の世界は観て回れたか?」


「それなりにね。ホープタウンと勝手が違うし想像以上に大変だった。だけどちゃんと色んな場所を見て回ったわ」


「そうか。私とは違うんだな」


「でも夢の戦車ちゃんと作れたのね」


「うん。今は旅して回っている最中でコロッセウムに向かっている」


「そか。あの男の人――ケイイチとはどう言う関係なの?」


「そ、それは」


 それを聞かれると恥ずかしい。

 アナグラでの帰り道、悪ノリして色々と言った。

 正直結婚するならと尋ねられると今のところは彼しかいないだろうなと思う。


「そう言う顔できる人と出会えたんだ」


「そ、そう言うミノリはどうなんだよ?」

 

 私は仕返しにそう尋ねた。


「いるわ。今ケイイチ君とお話している人」


「え? うそ? あの黒髪の?」


 ふと目線をやるとケイイチと同じ黒髪のライダースーツの少年が見えた。

 歳もケイイチと同じぐらいだろう。


「うん。アレが私の大切な人」


「そ、そうか・・・・・・何か先超されたな――」

 

 何かその事がとても悔しかった。


「もういるじゃない。あなたにもステキな人」


「だけどあいつナナがいるからな」


 ふとナナの事が頭をよぎる。

 今はまだ幼い体型だがこの先どうなるか分からない。


「ロザリーさんが言ってたでしょ? 女は度胸、好きな男は」


「力で物にしろ――か・・・・・・」


 つまり強引に押し倒してセックスしろと言うのだ。

 私にそんな度胸はない。

 まだドンパチする方が楽だ。


「その様子じゃ前途多難ね」


 そのミノリの言葉に私は何も言い返せなかった。



 Side 加藤 佳一


 戦車に揺られて俺達は再びコロッセウムに向かうことになった。

 ストームライダーズの連中とは何だかんだで馬が合う。

 アナグラの人達と同じく機会があればまた会いに言っていいだろうと思った。


「久しぶりの親友の再開はどうだった?」


「うん。結婚したくなった」


「アナグラの時といい、何か急に肉食系になってませんか?」


 一体どうなってんだこの世界の恋愛事情。

 ナナは「私そんなに肉食べてないよ?」とか言うが「物の例えだ」と返しておいた。


「なあ、その。ケイイチはセックスしたいとは思わないのか?」


「今聞くかそれ?」


 しかもナナがいる前でだぞ?

 ナナは顔を真っ赤にしている。

 

「だって男でしょ? 私の体はそりゃロザリーさんやミノリと比べるとアレかもしれないけど・・・・・・」


 と、顔を真っ赤にしてブツブツとんでもない事を言うマヤ。

 本当に最近何なんだ。


「まあ確かに男だしそう言う気持ちはあるけどさ・・・・・・マヤはそれでいいのか? ってかナナがいる場面で言うか普通?」


 俺は呆れながら言った。


「うーんマヤとケイイチが結婚したら私はどうなるのかな?」

 

 ふとナナはそう言い、俺も「そこがネックなんだよな。良心が痛む」と心中を吐露する。


「うん?」


 仮にマヤと俺がくっついたらナナは出て行く流れになる可能性になるだろう。

 そうなったらまた一人になる。

 それを考えると良心が痛む。


 だからと言ってマヤの気持ちを蔑ろには出来ない。


 ハーレム系主人公の気持ちが少し理解できたような気がした。


「そうなったらいっそ一緒に住み続けて家政婦の仕事やるか?」


「まじかよ・・・・・・」


 その手があったか、ナナの家政婦ルート。

 だけどそれだと男というか人としてなんか終わっている気がする。


「ともかく考えといてくれ。だけど早めにな。そうしないと強引にいくからな?」


「あ、ああ」


 顔を赤らめて笑顔でそう言われた。

 やばい。

 アナグラの時は修学旅行でハメを外した学生みたいな雰囲気だったが今回は真剣だ。

 心にガツンと来た。

 

 俺は道中、ロザリーさんの言葉、「まあ簡単に決断してもいいことじゃないだろう。頭が壊れるぐらいに悩んで決断くだせばいいんだよ」を思い出しながら真剣に考え込んだ。 

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