あれから

Side ナナ


 最近自分がバカなのがとてもイヤになることがあるの。


 あのウォー・バイソンって言う武装集団の襲撃から数日がたった。


 あの後、ケイイチはグッタリもマヤも町の皆も辛いのに必死になって頑張ってました。


 私も泣きたいのを堪えて必死に頑張りました。


 スクラップになった戦車やパワーローダーやもう誰も使わない武器を拾い集めたりしたの。


 だけど一番辛かったのは死んだ人のこと。


 敵と味方別々の形で、ホープタウンの人や賞金稼ぎの人はちゃんと大きなお墓に埋葬してくれたの。


 しかし敵は適当に大きな穴に放り込んで燃やしてそれだけ。


 あの光景、イヤな臭いが今でも思い出せるの。


 これが正しいんだと言われて納得する自分がきらい。


 上手くどう言えばいいのか分からない自分がきらい。


 そんな私のことをどう思ったのかマヤは――ウォー・バイソンの人達が捨てられ、焼かれて、埋められた場所で、冷たい雨の中立っていた私にこう言いました。


「お前優しいんだな。ケイイチも心配してたぞ」


「・・・・・・私やっぱり変なのかな? 間違ってるのかな?」


「こいつらは今回みたいに人々を襲って生きてきた連中だ。こうなって当然の連中に一々同情してたらキリがないぞ」


 と、マヤは言うけど何故だかとても悲しそうだった。


「マヤはどうなの?」


「私は――もしも力があれば、こう言う連中を皆殺ししたいと思ったことは何度もある。今回みたいな襲撃もこの町に長く住んでいれば珍しいことじゃない」


 と、マヤは内心を明かして「まあアレだけ大規模なのは珍しいけどな」と付け足します。


「ケイイチは言ってたぞ。ナナは何だかんだで賢いって。だけど一人で抱え込んで苦しむタイプだって」


「ケイイチが?」


「あいつもお前の事を心配してた――こうも言ってたな。あいつがいるから俺はまだ人間でいられるんだって――」


「にんげん?」


 その言葉に私は首を捻りました。


「ケイイチの言う人間と、ナナがどうして欲しかったのかと言う考えと、そして私の思い描いた世の中は、たぶん根っこは同じだと思う。だから私は踏みとどまれているんだと思う」


「同じなの? ケイイチもマヤも――私の考えと?」


「ああ――そうだ。手を取り合って助け合って、笑って楽しんで・・・・・・苦楽を共に出来る人達が周りに大勢いて――それがないと人間じゃなくなっていく。だから人間は一人じゃ生きていないんだ。ケイイチも――ナナも――分かっていたんだろう?」


「うん」


 昔は一人でも大丈夫だっあt。

 でもは今は違う。

 一人なんか考えられない。

 ケイイチやマヤと離れられない。


「でも分かっていても辛い時はあるんだ――今の世の中そんな事ばかりさ。ロザリー姉さんだって厳しい物言いが多いけど、相手の事を想って現実を突きつける側も辛いんだよ」


「ごめんなさい!」


 私は想わず抱きしめた。背が足りないからお腹に抱きつく。

 マヤが泣いている。

 分かっていたのに。

 みんな辛いのに。

 堪えないといけないのに。


「なんて言えば良いのか分からないけどごめんなさい! ごめんなさい! ごめんない!」


「はは。ナナを励ましに来たのになにしてんだろうな私も――私だってあんな無茶させたの謝らなくちゃなんないのに」


 戦車に乗せて銃座を任せた時のことを言っているのだろう。

 だけどアレは必要な事だった。

 確かに怖かったけど、私は恨んでない。


「だったもうお相子だよ。この話は終わりだよ。泣いてばかりだとケイイチやマヤを悲しませるだけだもん」


「そうだな――ここに居たら風邪ひくから戻ろうか?」


「うん」 


 そして私は帰った。

 

 私やマヤ、そしてケイイチがやりたい事はまだ途中なのだ。


 だからその続きをするためにもがんばれ、わたし。

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