てきしゅう

Side ナナ


 ギルドのことがあって「今日どうしようか?」とマヤとケイイチの二人は悩んでました。


 そんな時にふと大きな音がホープタウンに響き渡ったの。


「敵襲だ!」


 マヤはいいました。

 

 敵襲。

 

 旅の時もそうだったけど、正直私は敵と戦うのが恐い。

 人を殺すのは恐い。

 でも戦わないと死ぬ。

 大切な人も死んじゃう。


 だから戦わなくちゃいけないの。


 ケイイチの言葉を借りれば「力あるものが正義」、「力のない正義は無力」なのだから。


 一先ず私とケイイチはマヤと一緒に格納庫に向かいました。


 聞き慣れた銃撃音が響きます。


『門を開いて俺達ウォーバイソンの軍門に降れ!! そうすれば多少は優しくしてやる!! ガハハハ!!』


 同時にスピーカーから大声で男の声がホープタウン全体に響き渡ります。


 ウォーバイソン。

 聞いた事がある。

 マヤが言っていたフロンティアも警戒している危険な野盗の一味だ。


 戦車を停めてある工場に辿り着くと整備員の男の人が慌ただしく呼びかけてきます。


「マヤ、お前も出てくれ!!」


「そのつもりだ! この町を好きにさせてたまるか!! ケイイチ!? お前はどうする!?」


「こんな世界で生きてきたんだ。多少の戦闘経験はある」


 それを聞いて私はケイイチの手をギュッと手を握りました。

 

「いくの?」


「悪い――本当は恐くて逃げたいけど――けど、上手く言えないけど見過ごせないんだ」


 半泣きになり手を震わせてそう言いました。

 やっぱりケイイチも恐いんだ。

 だけど言ってる事は分かるから止めることは出来ませんでした。


「兄ちゃん、パワーローダーがある。今回はタダでもいいからそれ出てくれ!!」


「生身で行くよりかはマシか・・・・・・悪いナナ、行ってくる!」


「あ・・・・・・」


 ケイイチは工場の人に連れられてパワーローダーって言うのを着て戦うつもりらしい。


「お前はどうする?」


 ふと隣に立っていたマヤは尋ねてきます。

 だから


「本当は恐いけど一緒に戦いたい! みんな死なせたくない!」


 私は正直に答えました。 

 それを聞いてマヤは「よっしゃ決まりだ!」と言って私の手を引きます。


「この戦車、最初に合った時褒めてくれたよな。あいつも――皆、態々どうしてこんなの作るんだとか馬鹿にされたけどさ――それに私は決めたんだ。今を変えるために戦うって――」


 私はマヤに連れられて戦車に乗り込みます。

 意外と中は広いです。

 小さな浮遊型サポートロボットが四体程いました。


「この戦車は私とサポートロボットで運用している。私は指揮担当。お前無線機の使い方分かるか?」


「分からない」


 私は機械に弱い。

 正直に言った。


「なら銃座だな。車内の左前方。運転席の隣だ。ちゃんと頭に通信機つけとけよ」


 そう言ってサポートロボットが付けてくれた。

 私は「ありがとう」と返した。


「相手を無理に倒す事を考えるな。近づく敵だけを倒せ。味方にはあてるなよ」


「う、うん!」


 すると一際大きな爆発音が響いた。


『ゲートが破られた!! 敵が雪崩れ込んでくるぞ!!』


「急げ!! 緊急発進!!」


 銃座から覗き込んで外の様子を伺う。

 そこは地獄だった。

 燃え盛るゲート。

 銃を乱射する野盗――ウォーバイソンの連中。

 複数の種類の戦車やパワーローダーまでいます。


 どうして人は仲良く出来ないんだろう。

 どうして人は争うのだろう。

 どうして皆で楽しく笑って暮らすことが出来ないのだろう。


 私が間違ってるのかな?

 ケイイチ?


「ボサッとするなナナ! お前が決めた道だろ! 戦え!」


「う、うん!」


 私は泣きながら引き金を引きます。

 野盗の一人が死にます。体が銃弾で撃ち抜かれたと言うより体の一部が抉り取られた感じです。


 殺すのは初めてじゃない。

 でも殺すたびに心が悲鳴をあげる。

 だから戦いはイヤなの。


「あの戦車はなんだ!?」


「構わねえ!! スクラップにして再利用してやろうぜ!」


 それがキッカケでこっちにも攻撃が、銃弾が装甲を叩く音が響きます。

 負けじとマヤは「撃て!」と反撃を命じ、相手の戦車――そこら辺に転がっている車に銃とか鉄板をくっつけたような奴が火を噴きます。


『こちら防衛戦本部! 敵の奇襲で防衛隊は戦力を再編中! 手の空いている人間はゲート周辺に集まれ! 一人とも敵を町に通すな!』


 通信木越から男の焦った声が届きます。

 よほど戦況は切迫した状況です。


「まずい! パワーローダーだ!!」


 パワーローダーが三機、こちらに向かっています。

 背後には角張った戦車がいました。


「取り付かれたら終わりだ! 火力で圧倒しろ!」


 そう言っていると側にいた味方の戦車が火を噴きました。

 パワーローダーも。

 悲鳴や断末魔。

 苦悶の声。

 

 ここは地獄です。

 

(私、やっぱりただの世間知らずな馬鹿な子だったのかな)


 私はそんな事を考えながら必死に銃を撃ちます。

 敵の戦車の重火器の攻撃に晒され、敵のパワーローダーが近づいてきて――マヤは一体に体当たりしたまではよかったけど他の二体が戦車前方に取り付いて――このままだと死んじゃう。

 マヤも私も。

 ケイイチ――。


『すまん! 遅れた!』


 ケイイチの声。

 ドガンと言う音が響き、銃声が唸る。

 戦車に取り付いていたパワーローダー二体がこぼれ落ちた。

 

「ケイイチなの?」


「来るのが遅いぞ! なにやってた!」


『パワーローダーの装着やら武装やらで手間取ってな! それと道中の敵とかで!』


 無線機からケイイチの声が聞こえた。

 それを聞くととても安心感を覚える。

 彼は『よっこいせ』と戦車の前方に降り立つ。

 

「アレはアメリカ製のSAー5か?」


 まるで蓋を閉じた便所に手足をくっつけたような緑色のパワーローダーだった。

 両肩に盾。

 右手に大きな銃を持っている。

 背中の二つの筒がついたパーツ。。

 そして頭部がないのが最大の特徴。変わりに銃器がついていた。

 マヤが言うにはSA-5と言うらしい。


『年代物の代物とか言ってて不安だったがまだまだやれるな』


「当然だ。私達が整備した代物だかんな」


 マヤは笑みを浮かべながら自慢する。


「いいかケイイチ。私達は少し後退して援護する。多少の敵の討ち漏らしはいい! パワーローダーや戦車を優先的に破壊しろ!」


『了解!』


 そしてケイイチは敵に飛び込んでいく。 

 背中から炎を吹き出し、地面を滑り、時折飛び上がって跳び蹴りをかまして銃を発射していく。奇妙な戦い方だった。


「ナナ、やれるな!」


「うん! ケイイチやマヤがいるなら――やれる!!」


 私はそう強く応えた。   

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