ホープタウン
ホープタウン
Side 加東 佳一
ホープタウンは学校を改装して町にした場所のようだ。
運動場には木製やプレハブ製などの簡素な住宅が並ぶ町が広がっている。
プールには浄水機らしき機械。
元は車の駐車場だったであろう場所には古びた昭和の香りが漂う町工場があった。
そこには摩改造された車両やら見たことない種類のパワードスーツ――もといパワーローダーなどが倉庫の内外に並べられていた。
中には武器を山積みにして販売している商人の姿や、卵に手足くっつけたようなデザインの警備ロボットらしき姿もあった。
マヤは俺達が乗っている戦車を工場の中で一旦止めた。
戦車の中からマヤがツインテールを揺らして出てくる。
さらに後から空中浮遊しているガシャポン玉に手足くっつけたロボットが出てきた。おそらくマヤが手が回らない箇所のサポートをしているのだろう。
「私はこの町で産まれ育ったんだ。外出許可証とかも持っている。今から戦利品の整理とか売り捌いたりするから手伝え」
と言った。
名無しの少女は「わかった~♪」と快く承諾した。
俺もとくにやる事はないので手伝うことにした。
周囲からガヤガヤと大人達が集まってくる。
こう言う人混みは久しぶりだ。
「パワーローダーか。修理すれば使えそうだな。後清掃も――」
「大量の銃器があるなおい」
「弾薬が必要になるな」
などと自然体で周りも手伝ってくれる。
マヤは何も言わないのでこれが普段の光景だと思い、俺は何も言わなかった。
そうこうしているうちに戦利品の整理、精算が終わると夜になっていた。
周囲は夜になっても賑やかで小さいながらも工場と言う場所だけあって多少暑苦しい。
ここまで乗ってきた戦車に座りながらマヤから水と野菜スープをご馳走になった。
マヤ曰く「贅沢な部類の食事」らしい。
それを奢ってくれた気前の良さに少々不審に思ったがそれでも食欲の欲求に負けて深く考えずに食べることにした。
水はともかく野菜は学校のあちこちで栽培しているそうだ。
こんな世界で自給自足出来ている辺り凄い事だと思った。
「へえ、こんな大きな建物が学校だったのか?」
マヤはここが元は学校だと言うことを知らない様子らしく、それを知って名無しの少女ともども驚いた。
「この人はね~変なところで物知りなんだよ~」
名無しの少女が褒めてるのかどうなのか分からない評価をしてくれる。
彼女基準で言えば褒めてるのだろうが。
「まあな。この世界がどうしてこうなったかは知らないけど、こうなる前は彼方此方にこの場所ぐらいの規模の学校があってそこに俺ぐらいの年齢の人が勉強するために通っていたんだ」
「まるで見てきたかのような口ぶりだな。まあいいや。それよりこれからお前達どうするんだ? 仕事はあるけど危険なのばっかりだぞ」
「やっぱり命懸けの仕事ばかりか」
「そうだぞ。特にここらは最近きな臭くなってるし、海側の方の軍艦の町との物流も最近危険度が増してる。そこにフロンティアやシェルターの人間やらで正直私も全体像が把握できてない」
「ああ、俺も一気に説明されても分からない」
「うーん私も、何が何だか分からないよ~」
名無しの少女の言う通り一気に説明されても分からん。
まあこんな世界だ。
ただで安全を得られるような上手い話はないのだろう。
でなければこの工場にあるように銃や装甲版くっつけて魔改造された自動車とか戦闘態勢仕様のパワーローダーとか所持してないだろう。
「そうだな。野盗のグループも幾つかあるけど、一番好戦的なのがウォーバイソンの連中だな。あいつら何処かに戦争でも仕掛けるのかってぐらい軍備増強してる。フロンティアも警戒してる」
「そうか」
「話戻すけど――どうするんだ?」
「正直言うと元の場所に帰りたいけど、帰り方が検討もつかんし、暫くこの町でとどまるよ」
「そうか――」
それを聞いて何故かマヤは嬉しそうでもあり、同時に悲しそうでもあった。
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