こんびに

 Side 名無しの少女


 夕暮れ。


 私達は高速道路を降りて元は「こんびに」と呼ばれていた場所で宿をとる。


 あの人によると元々はたくさんの商品が並べられていたそうだがここにあるのはもう生活に役にたたないガラクタばかりだそうだ。


 あの人は何時も日記をつけている。


 特に今回みたいに交渉した後に物のソウバとかを書き込んでいるらしいの。


 ソウバと言うのは物の価値のその場所に応じた価格だとかどうとか難しい事ばかり言ってた。

 

 日記を書き終えたのか私の元に近寄って来る。

 

「この店で寝るの?」


「ああ。それと、DVDは電気が無いと見れないからな。てか埃くさいな・・・・・・」


「でぃーぶいでぃー?」


 綺麗な絵が描かれた箱を指を指して私は質問をした。


「この世界がこうなる前の娯楽だ。てか知ってるタイトルがDVD化してるって事は――本当に何があったんだか」


「出会った時から思ってたんだけど、この世界がこうなる前になるのを知ってたの?」


「YESであり、NOかな」


 そう言って黒く平べったい箱についた埃を祓いながらあの人はじっと眺めます。

 それよりも言葉の意味が分からないの。


「どう言う意味?」


「あ~俺が元居た時間軸なのか、それともこうなった別の時間軸に移動したのか――考えてもわかんねーや。そもそもどうやってこの世界に来たのかも曖昧なんだし」


「そうなの?」

 

 彼は「まあな」と不安そうに呟き、話題を変えるように「今日の野宿どうするか」と相談した。

 

「コンビニのスタッフルームとかで休む事も考えたがイザって時を考えるとな」


「そう言えば最近は襲撃受けてないね」


「付け加えて言うならここらのそう言う奴はあのオジさんが片付けてたんだろうな」


 だよね。

 あのオジさん強いよね。

 道中に死体が転がってたし。

 丁寧に持ち物も回収されてたし。

  

「まあそれでも用心しておきたい」


「はーい」


☆ 

 

 そして夜になって――


「で、結局俺達はコンビニの外で寝るわけだ」


「車の中で寝た方がいいしね」


 私達は色々と考えてこんびにの駐車場に置かれた車で寝る事にしました。

 何時もの事だね。

 イザって時に逃げやすいしね。 

 私は荷物を降ろして車にもたれているあの人の傍に歩み寄りました。


「明かりが少ないからこんな町中でも星空が綺麗に見えるな」


「何時も言ってるね」


「そうだな。この世界に来てから一気に老け込んだ気がする」


「そうなの?」


「元居た世界では少なくとも水だとか食料だとかの心配はしなくて良かったしな。せいぜい、どうやって親の機嫌を取るかとか学校のテストの心配とか、学校の授業の退屈をどう紛らわすとか、小遣いをどうやり繰りするかとか――まあそんぐらいだな。贅沢な悩みだったよ」


「話分かんないけど裕福な暮らししてたんだね」


「・・・・・・今迄の話を統合する限りじゃ核兵器の汚染もまだまだあるみたいだし――放射能で変異した化け物とかもそのうち現れそうで恐いな」


「時々変なこと言うね」


「まあな・・・・・・いるのか? そう言う化け物?」


「うーん。私好きな事ばっかりしてたから分からない」


「それでよく今迄生き残れたな」


「へへへありがとう」


「・・・・・・はあ」


 褒められた。

 けどなんか顔を覆ってため息を吐いていた。 

 色々と悩みが多くて苦労してるんだね。

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