ショッピング
Side 加藤 佳一
この世界に法律はない。
強いて言えば力こそが法律。
自分の身は自分で守れと言う事だ。
ショッピングカートに大量の銃器や売れそうな物。
背中のカバンには食料や治療などに役立ちそうな物。
体に各種銃器をぶら下げている。
正直とても重たいが自分たちの生命線みたいなもんだ。
例えばこんな感じで――
「しかし大量の銃器運んで着たね。大変だったろう兄ちゃん」
真っ昼間の高速道路の道中、ヒゲを蓄えた体格がしっかりしたガテン系のオジさんと遭遇した。
灰色のツナギ、黄色いヘルメットを被り、革製のアーマーを身に付け、手には銃器を持っている。
後ろでは全高2mぐらい、人型のシルエットの黄色い建築作業用のロボットらしい・・・・・・に、銃器や食料に水などの商品を満載させた大きな荷台を引かせて旅をしているらしい。
荷台その物も車のパーツを組み合わせた特注のカスタマイズ品らしい。
商品を狙いの悪党達が襲い掛かって来るのだが全員返り討ちにしてやっただとかオジさんは豪快に笑う。
俺は「この人は敵に回さないでおこう」と思いつつ商談する。
拾い集めた銃器を元手に武器の弾薬や生活必需品、食料。
それと情報とか。
仕入れなきゃいけない物は沢山あるが・・・・・・
「しかし物資豊富だな」
ふとその事が気になった。
何と言うか逆に物資が豊富すぎると不気味に感じてしまう。
その呟きを聞いてオジさんは「マヌケどもが体張って商品仕入れてくれたからな」と笑って返事してくれた。
それ以上は俺は何も聞こうとしなかった。
「うわ~色々とあるね~」
名無しの少女は会話が耳に入ってないのか目をキラキラさせながら荷台の商品を眺めていた。
視線の先のラインナップも小さな玩具屋と言って良いぐらいだし、こいつの性格を考えるとこの反応は無理からぬ事だ。
「この道を進んだら街がある。まあ特別危険な事はないだろうし、二人でここまで来たんだ。俺が特に心配する事はないな。この先はどうだった?」
「食料や武器もあるだけ回収して来たからな――治安もよかった。パーキングエリアに行けば水は残っているかもしれない。夜盗の類いはいなかった。白骨死体しか転がってなかった」
「本当か? まあ治安が良いに超した事はねえか」
「食料とかはどうするんですか?」
「寄り道して狩りでもすりゃいいさ」
「そ、そうですね」
この人の心配はしなくてもいいなと思いつつ商談を進める。
「正直兄ちゃんには悪いが銃器は必要だが弾もそんなに持ってるワケじゃないからな。コインはないのか?」
「コイン? ああ、あるが――」
コインとは――少なくとも自分が知る限りの範囲ではあるが、この世界の通貨らしい。
嘗て日本で使用されていた十円玉や一円玉などの硬化が使用されている。
ただし物の物価は最終戦争後で大分変動しているのでその辺を気を付けないと注意が必要だ。
(正直コインの使用は止めときたいんだけどな)
自分達は世間知らずだ。
取引先を間違えるとぼったくられるのは目に見えている。
慎重になりながらも頭の中であれこれ計算して商品を購入し、ふと名無しの少女に目をやる。
「あれも一つ」
と、名無しの少女が手に取った箱詰めのアクションフィギュアも購入した。(ライダーのヒーローが入ってる奴)
それにオジさんが少し驚いた顔をした後、すぐにまた笑い出す。
「お前も男の子なんだな? そう言うのはよく子供が買うんだがタマに物好きな大人が集めたりしているのさ。それともこのお嬢ちゃんとはそう言う仲なのかい?」
ガハハとオジさんが笑う中、名無しの少女は「ねえねえ? そう言う仲ってなんなの?」と尋ねてくるが俺は「さあ」と知らない素振りをしておいた。
「こいつはオマケだ」
「それは――」
「良いんだよ。こう言う時代だからたまにこう言う事もしたくなるのさ」
と、またガハハと笑う。
そうしてある程度購入を終え、オジさんは「じゃあな坊主」と作業用ロボットと一緒に俺達が辿った道へと消えていった。
「その・・・・・・ありがとう。買ってくれた」
と、顔を真っ赤にし、口元を箱詰めのライダーヒーロー系可動式フィギュアで隠しながらお礼を言ってくる。俺まで照れくさくなって来たので俺は「別にいいんだよ。お前には世話になってるからな」と返しておいた。
「これからどうするの?」
「この先に街があるらしいからそこに行こうか」
「街か。どんな街なんだろうね。」
「まあ、あのオジさんの様子を見る限り治安は良さそうではあるがな――道中死体転がってるんだろうけど」
「や、やだなぁ・・・・・・」
嫌そうな顔をする。
この名無しの少女は血生臭いのは苦手な傾向がある。
かく言う俺もまだ逃避観があるがここでボサッと突っ立っているはいかない。
リュックサックに購入した商品を入れて荷物の整理を行い、背中に背負って売れ残った銃器を乗せたショッピングカートを引いて「行くぞ」と足を進める。
名無しの少女も「う、うん」と珍しい事にオドオドした様子で後をついてくる。
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