4月22日(金)12:40
朝、自分から挨拶をしてみれば、四月一日くんは嬉しそうに返事をしてくれた。そして昼休み、自分から弁当を持って四月一日くんの机に椅子を寄せれば、四月一日くんはそれはそれは幸せそうな顔をした。正直ちょっと、いやかなり、四月一日くんの感情が理解できない。私たち、同じクラスになってまだ二週間くらいしか経ってないよね。四月一日くんにとって私ってどういう立ち位置なわけ。
「いや、四月一日は1年の頃からお前さんのこと意識してたぜ?」
「……は?」
「俺、1年の時に四月一日と同じクラスでさ。変な奴だと思いつつ何となくほっとけなくて、わりと最初の方からつるんでたんだけど、その頃からずーっと話しかけたい話しかけたい言ってた」
「え。ずーっとって言葉に、私の想像以上の重みがあった……」
「ちなみに2年ではクラスが離れて、3年でまた一緒のクラスになったわけだが、お前さんまで一緒のクラスと知ったときには大層驚いた。しかも四月一日と隣の席になるし、これならさすがの四月一日もいよいよ話しかけるだろって思ったのに、いつまで経っても話しかけやがらないから」
「なるほど。思わずぶっ叩いてた気持ちがようやくわかった気がする」
どうやら四月一日くんと彼との付き合いは、私が思っていたよりもずっと長いようだ。だからこそこの気安さというわけか。しかし私が四月一日くんを認知したのは同じクラスになってからだというのに、四月一日くんは何で1年の頃から私のことを知ってるんだろう。
「今こうして三人で昼飯食ってるの、本当に奇跡だわ」
「全てはお前のおかげだ。感謝してる。ありがとう、アルフィー」
「おうおう。存分に褒め称えろ」
そっか。奇跡とまで言っちゃうか。それほどまでに四月一日くんは、私に話しかけたいけど話しかけられないという感情を彼に見せ続けてたんだね。何ていうか、うん。重いね。
で、アルフィーって何。名前?
「……えっと。面倒見いいんだね……アルフィー?」
「おう……あ」
よくわからないけどとりあえず呼んでみたら、彼は一瞬普通に返事をした後ではっとして頭を抱えた。
「しまった。四月一日の言葉の九割はスルーしてるから今まで気にしてなかったけど、女の子にそれ呼ばれると超恥ずかしい」
「九割スルーしてるんだ」
それ、ほぼ全部スルーじゃん。つまり、四月一日くんとまともに付き合っていくには、そのくらいスルーしないとやっていけないってことか。
「頼む。四月一日のことはもう諦めてるけど、八木沼さんは普通に五十嵐と呼んでくれ」
「あ、うん」
そうそう。五十嵐くんね、五十嵐くん。
……え? いや、ちゃんと覚えてましたけど?
隣の席の四月一日くんはどうやら1年生の頃から私に話しかけようとしていたらしい。
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